2日目
どんなに眠くても、朝は来るもので。
朝になってようやく眠くなってきたのに、時計を見ると、いつもならもう起きなければいけないという時間だった。
はあ、準備をするか。
僕が留守の間たくさん寝るのであろう、どこか眠そうに毛繕いをしているハムスターのぶんたを最後に撫でた。
パンをトースターにセットし、毎朝飲んでいるスムージーの準備をしながらも、頭の中で考えてしまうのは、三咲のことばかりだ。
まさかの、三咲とは大学まで同じである。
離れたくないからとか、そんな理由があって同じ大学にしたカップルを見たりするが、僕達は、ほんとうに偶然に行きたいところが同じだった。
さすがに学部は違うけれど、ずっと会わないように避けることは難しいだろう。
…今日もし会ったら、三咲はどんな顔をするのだろうか。
考えただけで憂鬱だ。
それに、どうせ友人達かから三咲と別れたことを質問攻めにされるだろう。
4年も付き合うと、応援してくれる子達が増えてくる。
特に、三咲はTwitterというアプリに僕達のラブラブっぷりをよく投稿していて、応援しているよという子が何人もいるらしい。
画像つきのものを投稿すると、何十人もがお気に入りというものを押してくれたり、コメントをくれるそうだ。
僕はそのアプリを使っていないからよく分からないのだけれど。
それに、三咲は明るく社交的で、友達も多かった。
しかも僕の友人達にも積極的に仲良くなっていってくれて、好かれていた。
たくさんの人達から別れた理由を聞かれるのは目に見えていた。
…理由か。
確かに僕はダメ男だと思う。
でも、飲酒やパチンコをすることは許してくれていたし、浮気だって…結構前のことだし一度だけのことで、バレていないと思う。
つい最近まで僕とのラブラブっぷりやのろけをたくさんアプリに投稿していてくれたらしい三咲が、どうして急に別れたくなったのだろうか。
表面ではそうしていても、心の中では、ダメダメな僕に、だんだんと冷めていく気持ちがあったのだろうか。
こんなに三咲のことを考えてしまうなら、昨日、もっとちゃんと引き留めればよかったのに。
せめて、少しずつでもいいから前のように友達として仲良くしていきたいとでも言えばよかったのに。
スムージーの最後の一口を飲んで、着替えるためにクローゼットを開ける。
着替えや髪のセットを終わらせ、しばらく使っていなかった、三咲とおそろいではないリュックに必要なものを詰めると、もう出掛けなければいけない時間になっていた。
いつも途中の道で三咲に会ってしまうから、今日は早足で行こう。
そう思って急いで履いた靴を見て、僕はまたため息をついた。
この靴も、三咲とおそろいだ。
もう、今日は大学休もうか…。
「え、三咲今日休んでるんだ。」
そうだよーと、少しすねたような顔で桃花ちゃんが言う。
いつも三咲と一緒にいる桃花を見つけたので、三咲と一緒にいるんじゃないかと少し隠れたのだが、今日は違う友達といるのだ。
気になって見ていると、桃花ちゃんから「三咲休んでるけどどうしたの?」と話しかけられた。
「昨日からね連絡とれなくて心配だったの。なんか昨日様子おかしかったし。だから彼氏さんだったらなんか知ってるかなーって思ったんだけど、知らないの?」
え、桃花ちゃんは、僕達が別れたことを知らないのだろうか。 僕はてっきり、Twitterに別れたことの報告を投稿したり、友達に言っているものだと思っていた。
「えーと、実は昨日別れて、もう彼氏さんではないんだ…。」
「え、ほんと⁉たつ君がふったの⁉」
本当に知らないらしい。
首を振ってから僕がふられたんだと告げると、桃花ちゃんはもっと驚いて、手をブンブンさせた。
「うそだ!だってあの三咲だよ!?一昨日までたつ君ののろけ聞かされてたもん!」
「え、そうなんだ。」
「そうだよ!どうして急に…。あたしに相談くらいしてくれたらよかったのに。」
驚いた顔から悲しい表情になった桃花ちゃんは、あ、っと思い出したように言った。
「そういえば最近ずっと食欲なくて、なんかイライラっていうか、落ち着きがない感じあったなー。」
ずっと悩んでいたのかなーと呟いた桃花ちゃんは、一緒にいたはずの友達がどこかに行ってしまっていることに気づいて走っていってしまった。
三咲は、それから2日間大学を休んだらしい。
健助が、心配したような表情で報告をしてきた。




