友達として。
夜、寝ていた僕は、スマホの電話着信の音で目覚めた。
見てみると、健助と表示されている。
健助は三咲と僕の共通の友達だった。
よく相談に乗ってもらったり、タブルデートなんかもした。
やっぱり掛かってくるよなあ。
ため息をついてから、泣きはらして腫れた目をこすった。
「もしもし。」
「お前、なんで三咲ちゃんと別れたんだよ!」
お前実は喜んでるんじゃないかと思うような興奮した声。
「ふられた。」
そう言うと、健助は大声で笑い出した。
おいおい、笑うか?普通。
「まあいーじゃん。お前には佑子ちゃんがいるじゃん。」
「いや、あれは1回だけの間違いだ。もうあんなことはしないよ。」
佑子は、僕が浮気した相手だった。
今はこんなにも笑っている健助だが、俺の浮気を知った時は、見たことないぐらい怒って殴ってきた。
それからは、佑子と会うどころか連絡さえとっていない。
「でもいいじゃん。もう浮気じゃなくなるんだから。寂しかったら慰めてもらったらー。」
健助は軽い感じで言うと、また笑った。
ああそうか、これからは、どんな女の子と喋ったり遊んだりしてもいいんだ。
街で見かけた人に一目惚れしても、可愛い女の子に声を掛けてもいいのだ。
好きな子ができたら、告白したって全体いい。
きっと、三咲とは最近感じていなかったドキドキやときめきがたくさんだ。
「そうだな。また誰か紹介でもしてよ。」
もちろん、本気では言っていない。
軽い感じで言うと、健助は急に真剣な声になって、
「ヤケにはなるなよ。」と言った。
「なんでも話聞くからさ。」
ありがとう、と言うと、健助は満足したような声で、じゃあおやすみと笑って電話を切った。
健助と電話をすると、いつも短い。
暇だから電話をしようと言うと、5分や10分で切り上げられてしまう。
そんな健助との電話で、どちらがより短く健助に切られるかを、三咲と勝負したことがある。
…今日の電話は、格別に短かったな。
画面を見てみると、なんと通話時間が1分と表示されている。
これは、新記録だ!
三咲が聞いたら驚くぞ!
はっとして、早速三咲に報告しようと開いたLINEのアプリを、そっと閉じた。
三咲とは、中学生の時に出会った。
3年間クラスが一緒だっただけでもすごいのに、まさか高校まで同じだとは思わなかった。
男子や女子だなんて関係なく友達として仲良くしていた僕達の、関係を変えたのはどっちだっただろうか。
高校に入って2年生になって、周りの友人に茶化されるようになり、急に意識をし始めるようになったのは、たぶん僕の方が先だ。
それから人生で初めての告白をして、付き合うようになって、4年も付き合った。
でも、友達でいた期間も4年なのだ。
もう、これっきりなのだろうか。
別れたからといって、連絡をすることも話をすることもダメになってしまうのだろうか。
昔は友達という関係だったのに、付き合って別れると、友達に戻ることもできないのだろうか。
…さっきの健助からの電話の短さを自慢することも、もう一生…。
ボーとスマホを眺めている僕の耳に、どこかから、ガサガサっっという音が聞こえた。
ああ、そういえば、ハムスターの水を新鮮なものに変えていない。
嫌なことは考えず、ハムスターに癒されよう。
スマホを布団の上に起き、ハムスターのゲージへと向かう。
それから朝まで、僕がスマホを触ることも、布団に入ることもなかった。




