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第28話 犯人

「どうされましたか」

「その石と砂はどちらから」

「どうでしたか。業者さんは見たことがなかったように」

「八鹿のお兄ちゃん何か」

「ここの旧地名は」

「昔から亀岡だろう」

 勇作さんは俺の勢いに押されて声を出したようだ。

「もっと昔です。鎌倉や江戸の」

「聞けば亀山だったと」

 宋雀が石を与えた町に亀山とあった。

「それでここからどうやって出るかだね」

 勇作さんは床に座って足を投げ出した。いやどうやって手に入れたのか、誰が実行者なのかの方が重大だ。本当に弥右衛門が実行者なのか。南山がここに移った頃からここにいた人間で庭を触っても不審に思えない人物。目が慣れていくと鉄格子で囲まれている。鍵は大きく堅牢だ。上を見ても明かりは見えない。

「そのうち助けが来ます。ナンヴァの楠はそういう呪物です」

 考えながら頭は推理でいっぱいだ。家族の人、居を構えた時にいた人。

 上からギーと音がして、複数の足音がした。

「総悟さん」

 千の声がして、続いて周作の声もした。

「参ったよ。まさか殴られて閉じ込められるとは、状況が動いたのかい」

「沙織さんが姿を消しました。大騒ぎです」

 周作は申し訳なさそうに頭を下げていたが、勇作が怒っていた。勇作をなだめて、今はそれどころかではないと話をした。勇作は周作にまた後でと言い含めた。

 宋雀の砂も終盤だ。これまでに怪しい噂はなかった。これは内藤の存在も大きい。

 枯山水の石と砂はずっと続いていた。ずっと砂を少しずつ使えばすぐに不運は訪れない。誰も健康を害さなかった。でも突然終わりはやってくる。

「弥右衛門さんはどこにいる」

「そうです。弥右衛門さんもいなくて」

 千はほとんど泣いているし、周作の顔は白い。鍵は中々開かなかったが、内藤さんが心当たりのある鍵の番号を伝えると扉は開いた。

「三十五の頃から仕えています」

 そう歳には見えなかった。

 上がると騒ぎは大きなものだった。更新される行方不明者、沙織と弥右衛門さんがいない。栄太郎さんもハツさんもいない、惣一郎さんもいない。残ったのは勇作さん、佳也子さん、周作と俺、内藤さん、高谷、千だった。

「一体誰が」

 首をくくる持ち主がいない。弥右衛門さんが首をくくっているかもしれない。周作と庭を見たが、そんなことはなかった。大広間の方へ向かったが、何分中の構造が分からないので、犯人がいるだろう大広間へ向かっている。相変わらず廊下はきしんでいて、外は小雨だった。今度こそある意味では密室か。雨にはよくやられてしまう。

「おかしいです。ということは」

 弥右衛門さんは主ではなかった。弥右衛門さんは元々死んでいた。

「謎解きをするのに時間がない」

「首をくくるからですか」

 周作はソワソワしている。

「誰が犯人か分かった」

「犯人って、でも南山家の方はいなくなって」

「閉じ込められた内藤さんと勇作さん、俺は容疑者から外してもいいはずです。弥右衛門さんは凶の鏡を想定していた。凶の鏡に間違いがないと思いこんでいる」

「ならば勇作さんを隠したのは何の為ですか。それに総悟さんも」

「アドバイスがあったんだ」

「アドバイスって、誰かが思いこませたってことか」

 高谷の頭は疑問でいっぱいだろう。知っていたのだ。弥右衛門さんはそんなホラ話があったことを冗談交じりに聞かせた者がいる。それは、今回の犯人だ。そしてそんな話をした後に弥右衛門さんの命の灯は消えた。

「そのとおりだ。犯人は弥右衛門さんとやり取りがあり、この屋敷が南山家の持ち物になった時からいる人間だ」

 大広間に着いた。ふすまを開けようと手をかけた。

「それって内藤さんか? 内藤さんはわざと自分を閉じ込めたのか」

 高谷はふすまを開けるのに息を吐いた時に俺に尋ねた。

「いるだろう。弥右衛門さんと同年代でずっと仕えた人物が。そうですよね。ツマさん」

 ふすまを開けて向こうにいるだろう犯人の顔を見た。ツマの顔色は変わらず、怪訝な顔をしている。ツマが最も年かさだった。

「おいおい」

 高谷は言ったもののそうかもしれないと思わせる力があった。ツマは無言だった。話すのが億劫だ。早く話せと言われている気がした。

「砂はどこで見つけて来たかはこの際もうどうでもいいとしましょう」

「おいおい、巡査としてはそんな話は信用できない」

「まぁ、そうだろう。推測の域は出ないんだ。俺は思うんだ。使用人も含めてここにいた人間はほとんど死人だったのではないかと。試しにみんな思い出してくれ、南山弥右衛門はどんな格好の人間だったか」

 皆、口々に背の高い人物だった。いつも寝間着だった。背は低くはげていた。それぞれは矛盾し、挙句の果てには最近会った気がしないと周作は述べた。

「記憶は修正されて、実行者だけ記憶が残ります。ツマさんは覚えていますね。弥右衛門さんはどんな人間でしたか」

 ツマは首を下ろして、面倒臭そうに話を始めた。

「お前は邪魔だ。お前が来なければ弥右さんたちはずっと生きていてくれた。迷惑をかけていないではないか。弥右さんは最後まで家族と過ごしたいと言っておった。わしはその願いをかなえたのだ。後は勇作と佳也子と周作が帰ったらみんなずっと一緒だった」

 これが今回のあらましだ。弥右衛門が生きていることに矛盾を出さない為に家族をみんな死なせなかった。その代表格が沙織だ。

「宋雀の砂の効果は知っていましたね。知って今も何も言わない。最後何が起こるか知っているはずだ」

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