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第24話 凶の集い

「その凶の集いとは」

 何もせずに高谷を放置しておいたのはこういう情報を与えてくれるのを待っていた。凶の鏡が何物であるかは知っているが本当に凶の鏡があるのか、凶の集いが何なのかが分からない。今のところ音はするが凶の鏡か判別が出来ない。厳重に保管されていると余計に分からない。

「凶の集いは凶の鏡が発動した時に行う集まりだ。凶の鏡は習わしによって巫女がその乱暴を止めるのだ。その巫女を決めるのが凶の集いだ」

「今回がそういう会だと」

 高谷がえらく難しそうな顔つきで言った。俺もそうだが、高谷もあまり分かっていない。

「あぁそうだ。それを凶の鏡が決める」

 覚えは凶の鏡は人を殺す鏡だ。ここの理解では凶の鏡は既に藤一郎とシチを殺しているが、おそらくこの巫女は生贄になる。調査の気持ちで南山邸まで出て来たが殺され候補になるなんてぬかった。

「おい、総悟。本当に凶の鏡はあるのか」

 声を潜めた高谷の言葉に俺は明言できない。

「本当に南山沙織は死んでいるのか」

 俺は千に尋ねた。悩ましそうに千は首をかしげて。

「背格好そのままです。でも双子と言われたら分からないです」

 黒に近いということか。

「ということでしばらくこの屋敷にいてもらうことになる」

「その凶の鏡ってやつはなんですか?」

「さっき説明したかと」

「じゃなくてどんな形かと」

「そないなもん、あんたさんに関係あるか」

 惣一郎は威圧感を覚えるほどに低い声をあげた。

「すみません」

 高谷は下がった。当事者の中に入れられたので、全くの無関係ではないんだが、ここは引き下がるのが吉だ。

「部屋は余っているが、八鹿さんと高谷さん、それに」

 まぁ、あんなことを発言されたらそうなるか。

「私は総悟さんと一緒にいたいです」

 俺のことを話すな、言うほどだぞ。

「その趣味はどうにかした方がいい。知り合いにいい医者がいるから紹介してやる」

 もうここまでになると高谷もよく分かっている。

 おおじい様はごほんと咳をした。

「千から聞きたい話も多くある。八鹿さんと高谷さんには遠慮してもらいたい。ツマに案内をさせよう」

 ツマらしき女中は一番年かさでおおじい様と比べて背の低い静かな女性だった。こちらへと言われて先導され後ろについた。あまり話さないというか、どちらかと言えば話したくないのではないかと思った。それならあえて話すことではない。

 いくつか廊下を歩いて、一つのふすまの前にツマはひざを置いた。ふすまを開けて、様子でここが部屋であることが察せられた。二人で一室か、大きな屋敷なのにとは思った。でもいきなり来て部屋を二つ用意しろというのも横暴な話だ。

「ひやぁ、子ども好きと同室か。怖いな、変態が移りそうだ」

 俺は軽く高谷の頭を叩いた。

「変な家だな」

「そうか、お金持ちって感じだろう」

 高谷はそれでよく試験に通ったなと感心した。最も鈍感なフリをしている可能性がある分、この高谷という男は分からない。あまり古い建物ではないはずなのに必要以上にする家鳴り、使用人がいるのに汚れたふすま、まるで最近まで誰も住んでいないかのようだ。

 見張りがいない中で動きたかった。女中がいないとすぐに迷ってしまうだろう。この屋敷は少し冷たい。あんなに人がいるはずなのに人の音がしないのが不気味だ。

「それで総悟。気配はするのか」

 何かはある。それが凶の鏡なのかは断言できない。何が大井と言う資産家と南山沙織を殺したのか。または人為的なことなのか。

「誰が殺したのか」

「巡査としては凶の鏡という物の存在は理解できない」

「でも」

「友人としてはオカルトでも支持出来る」

 夕食まで俺は帳簿を見直し、高谷は隣で眠った。

 帳簿には凶の鏡は南山にと今から三十年前に記載がある。動いていなければここにあるということだ。

 夕食は煮魚がメインだった。特にこれと言って美味ではなかった。

「使用人の内藤さんは何処に」

 空気がぴしりと音を立てた気がした。

「内藤は里に帰りました。魚は美味でしょうか」

 弥右衛門さんは面のように目の笑わない顔で口角を上げて答えた。何かが隠されているように感じた。

 内藤という使用人はいない。千はいると言っていた。だが、千が不在な間に内藤は暇を出されてしまったとも考えられる。ありえる話だ。ならばあの空気はなんだ。俺の気のせいか。

 魚のことに関しては笑みを浮かべて美味だと言った。

「あの千は」

「床に臥せております。疲れが出たのでしょう」

 おおじい様は心配そうに話した。

「凶の鏡はいつこの家に」

「それは先代が買い取ったので」

 先代は亡くなっている。はっきり言えないのは知らないからか、どうなのか。

「どこに安置されていますか」

「奥の神棚に」

「死者を生き返らせることが出来る」

 おおじい様はただ微笑んでいる。

「そんな効能があれば、妻を生き返らせますね」

 安易で子どもだましのような網にはかからないか。

 南山沙織は死んでいる。千は嘘をつくメリットはない。だから死んでいるのは本当だ。凶の鏡によみがえる能力はない。独特の音が聞こえるはずだ。考えられるのは凶の鏡を既に人に渡して、よみがえる効能を持つ他の呪物を所持しているか。そういう呪物は存在していて、人から貰ったなら追跡を出来るわけではないので、ここでこの効能は何々だとは言えない。

 夫婦はかんざしで死んだ。この会は凶の鏡を扱う会だ。凶の鏡であればここで四人は消えることになる。何度も頭によぎるが、ここにあれば、だ。

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