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幹事スキルで、修羅場も段取りできますか?  作者: tomato.nit


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第八話 カメラが回る


 通路の奥から、カリンたちが入ってくる。


 いつも配信で眺めているだけの姿が、目の前に居る。 やはりそれを見てしまうと、胸に来るものがある。


 カリンが一瞬だけこっちを見る。


 目が合う。


 とりあえず頷いてみる。


 向こうがどう受け取ったかは分からないが、……今の、なんか通じたっぽくないか、と思ってしまう。


 いや、たぶん気のせいだろうけど。


 でも、悪くない。


 少しだけ気分が軽くなる。


 そのまま、なんとなく浮ついたまま立っていると。


「それじゃ、本番入りまーす」


 ディレクターの声が飛ぶ。


 さっきと変わらない。声の調子。


 カウントが始まって、そのまま流れるように現場が動き出す。


 さっきのことなんて、最初からなかったみたいだ。


 カメラが前に出る。


 そのまま通路に入ってきて、ミアたちの少し前に居座る形になる。


 ……あれ。


 さっきより、ちょっと狭い気がする。


 ライトも近いし、スタッフも変な位置に立ってるせいか、通路がなんとなく詰まって見える。


 別に通れないわけじゃない。


 でも、動きづらそうではある。


 ミアが前に出るが、さっきより少し動きが固い。


 モンスターが出る。


 同じやつ。


 踏み込んで振るが、当たるには当たる。


 避ける動きも、少し遅れているような。


「いいね、そのまま前!」


 ディレクターの声。


 そのまま距離を詰めさせる。


 ミアが一歩出るが、距離が近い。


 カメラが横に動く。


 それが一瞬、視界に入る。


 それでミアの踏み込みがわずかに止まる。


 ほんの一瞬だが、それでまたズレる。


 ……なんか、やりにくそうだな。


 ミアの一撃が少し外れる。


 その時、目に入る。


 カメラの位置。


 その隣のマイク。 これか。


「すいません、そこちょっとだけ下がれます?ミアさん、動きづらそうなんで」


 なんとなく声をかける。


 カメラマンがこっちを見て、一瞬だけ迷ってから半歩下がる。


 それだけ。


 それだけなのに、視界が少し開ける。


 ミアの踏み込みが通る。


 当たる。


 避ける。


 さっきまでの動きとほんの少しだけ違うが、ミアのテンポだ。


 流れがそのまま繋がって、モンスターが崩れる。


 さっきと同じ終わり方だが、最後はさっきよりスムーズだった気がする。


「いい感じじゃん、今の」


 ディレクターが笑う。


 周りも普通に流れている。


 カメラもそのまま。


 配信としては問題ないらしい。


「カリンさん!回復薬どうぞ!」 


 台本通りに、ミアが合流したカリンに回復薬を手渡す。 


 可愛い女の子が二人映ってるというのはやはりいい画だと思う。


 ちらっと確認用のモニターが見える。


 コメントが流れてる。


 なんか普通に盛り上がってる。


 ……まあ、そう見えるか。


 俺は少しだけ視線を外す。


 さっきの位置と今の位置を見比べるが、違いはよく分からない。


 そんなに大事な一歩だったのか? まあ、結果オーライということで。


「じゃ、次いこうか」


 ディレクターの声。


 また同じ調子。


 でも、その声に何か嫌な響きを感じてしまった。



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