9話 分裂
◇ 分裂 ◇
宮田の死から二日後、藤堂龍一が告げた。
夜の焚き火の前だった。三十九人が集まっていた。藤堂が立ち上がり、「俺は別の道を行く」と言った。
「どういう意味だ」と先生が言った。
「このまま全員で動いていても、速度が遅い。負傷者がいる、体力がない者がいる。俺は速く動ける人間と、別の道筋を探す。東に向かう代わりに、南の山際に人の集落があるという情報を行商人から聞いた」
「そんな話は聞いていない」と先生が言った。「いつ聞いた」
「先生に報告する義務はないだろう」と藤堂が言った。穏やかな声だったが、中身は違った。
先生の顔が変わった。誠もそれを見た。
「別々に動いて、何かあったときに——」
「先生、俺は先生の判断でもう二人怪我人を出したと思っている。今も俺たちは食料不足だ。このままでは全員共倒れになる。俺はそれを避けたい」
沈黙が長かった。焚き火が爆ぜた。
「……ついてく人間だけ連れて行け」と先生が最終的に言った。それしか言えなかった。
翌朝、藤堂について行く者を挙手で確認した。二十二人が手を上げた。半数以上だった。
中には、誠が意外だと思った顔もあった。渡辺雪菜もいた。足首を痛めた渡辺が、藤堂のグループに入るとは思っていなかった。
「渡辺、藤堂についていって大丈夫か」と誠が聞いた。
「田中くんに言われなくても」と渡辺が言った。「私のことは私が決める」
それ以上、誠は何も言えなかった。
出発のとき、藤堂が誠の前に来た。
「お前もこっちに来ないか」と藤堂が言った。「使える人間が欲しい」
「断る」
「なんで」
「俺は先生の判断が正しいから残るわけじゃない」と誠が言った。「ただ、こっちに残る人間がいる。それだけだ」
藤堂は少し考えて、頷いた。「まあ、いい」
二つのグループが別れた。藤堂グループの二十二人が南に向かい、田中と先生側の十七人が東を向いた。
十七人の中には、誠、木村、橘彩、松本先生、加藤(腕の傷はまだ黒ずんでいた)が含まれていた。
その日は誰もあまり話さなかった。
歩きながら、誠は何度も人数を数えた。十七。宮田を入れれば十八。転移時は四十一人。一ヶ月経たないうちに半分以下になった。
木村が隣に並んだ。「正解だったかな、残る選択は」
「わからない」と誠が言った。「どっちが正解かは、まだわからない」
「どっちが先に死ぬと思う」
誠は答えなかった。
草原に風が吹いた。南の方角に、藤堂グループの後ろ姿が見えた。少しずつ小さくなっていった。




