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39話 神殿の門

◇ 神殿の門 ◇


翌朝、老人が話を始めた。


食事の後で全員が集まった。老人の名前はグラームと言った。守護者の長だった。守護者というのは組織名で、宗教とは関係なかった。「この場所と、この場所にある儀式を守る者たち」というのが彼らの自己定義だった。


「転移者の帰還について話す」とグラームが言った。


誠は隣の橘を見た。橘が小さく頷いた。


「この神殿には帰還の儀式がある。百年以上前から続いている。儀式は実際に機能する。転移者を元の世界に戻すことができる」


誰かが息を飲む音がした。


「ただし制限がある」とグラームが続けた。「一度の儀式で戻れる人数は十人だ」


沈黙があった。


「十人」と誠が繰り返した。


「そうだ。ここにいるのは二十二人だ——西村を含めれば。十人しか帰れない」


「一度の儀式、ということは複数回できるか」と橘が聞いた。


「できる。ただし次の儀式まで半年かかる。今から行えば、残りの者は半年ここに留まることになる」


「半年間の生活は」


「神殿が提供する。それは問題ない」


誠は頭の中で計算した。二十二人。半年待てば全員が帰れる。


「二回に分ければ全員帰れる」と誠が言った。


「そうだ」とグラームが言った。「だが」


「だが」


「帰る順番を決める必要がある。そしてもう一つ——帰りたくない者、あるいはここに残る者についても、我々は関与しない。それは個人の決断だ」


全員が静かになった。


グラームが誠を見た。「誰が先に帰るかを決めるのはあなた方だ。我々は手順を提供するだけだ」


部屋の中に、誰かが「帰れる」と小声で言った。泣いているのか笑っているのかわからない声だった。


誠はその声を聞いた。


帰れる。そう言われても、誠の頭の中は計算を続けていた。誰が先に帰るべきか。誰が残るべきか。二十二人の顔を順番に思い浮かべた。


橘が隣で静かにしていた。


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