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38話 山道

◇ 山道 ◇


神殿に近づくと、人が出てきた。


老人だった。白い衣を着ていた。手に杖を持っていた。顔に表情がなかった——無関心というより、見慣れているという顔だった。


「転移者か」と老人が言った。現地語だった。


「そうだ」と誠が答えた。


「何人来た」


「二十一人」


老人が二十一人を順に見た。数えていた。「入れ」と言った。


神殿の中は想像と違った。廃墟の外見から内部の荒廃を想像していたが、中は整えられていた。天井が高く、石の床が磨かれていた。燭台が並んでいた。人が何人かいた。全員が白い衣を着ていた。


奥の部屋に通された。


そこに、西村がいた。


誠は止まった。橘も止まった。


西村朱音が、壁際の椅子に座っていた。顔を上げて誠たちを見た。顔が変わった。口が動いた。声が出なかった。


橘が先に動いた。橘が西村の前に行った。西村が立ち上がって、橘に掴みかかるように抱きついた。橘が西村を受け止めた。


誠はそれを見た。


西村が「ごめんなさい」と言った。


橘が「謝らなくていい」と言った。


「でも、私が転んだから——」


「転んだのはあなたのせいじゃない」と橘が言った。「捕まえたのは向こうだ」


西村が泣いていた。声を立てずに泣いていた。橘は何も言わなかった。ただ背中に手を当てていた。


誠は少し離れた場所から、二人を見ていた。


老人が誠の隣に来た。「よく来た」と言った。


「あの子は」と誠が聞いた。西村のことだった。


「二ヶ月前に連れてこられた。売り買いの品として。我々が商人から引き取った」


「引き取った、とはどういう意味か」


「ここに来た転移者は全員、我々が対応する」と老人が言った。「ただし全員を帰せるわけではない。それについては、後で話す」


後で、という言葉が引っかかった。


「条件があると聞いた」と誠が言った。


「ある」と老人が言った。「明日、休んだ後で話そう。今日は食べて休め」


老人が去った。


誠は部屋の中を見回した。


西村がいた。橘がいた。木村がいた。藤堂がいた。松本先生がいた。加藤がいた。韓国グループの四人がいた。全員が疲れていた。


それでも、全員がここにいた。


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