表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/40

37話 北へ

◇ 北へ ◇


山道は最初から険しかった。


平地で見ていたときの稜線の穏やかさは嘘だった。道は細く、岩が多く、落ち葉で滑りやすかった。傾斜は上がり続けた。


一時間歩くと汗をかき、その後に冷えた。高度のせいで気温が下がっていた。


藤堂が山道では先頭に立った。誰も言わないが自然にそうなった。体力と判断力が必要な場面で、藤堂が動いた。誠はそれを後ろで見て、止める必要がなければ口を出さなかった。


二日目に松本先生が転んだ。


大きな怪我ではなかった。膝を打ったが、骨ではなかった。ただ立つのに手を借りた。先生が「すまない」と言った。


「謝らなくていい」と誠が言った。「歩けるか」


「歩ける」と先生が言った。


加藤が先生の荷物を引き受けた。誰も何も言わなかった。分担した。それだけだった。


三日目に雲が出た。


「天候が変わるかもしれない」と橘が言った。空の色が昨日と違った。「急ぐか、どこかで止まるか」


「急ぐ」と誠が言った。「止まれる場所がない。道を外れるな、という言葉も引っかかる」


「理解した」と橘が言った。


その日は長く歩いた。昼飯を止まらずに歩きながら取った。日が落ちかけたとき、岩の窪みに全員を押し込んで野営した。


夜中に雨が来た。ただの雨ではなく、横から叩きつける雨だった。火が起こせなかった。全員が体を寄せ合って朝まで耐えた。


韓国グループのユンが、何か言いながら自分の上着を先生に渡した。先生が受け取った。橘が礼を言う代わりにユンの腕の傷に巻いていた布を取り替えた。言葉はなかったが、何かが伝わっていた。


四日目の朝、雨が止んでいた。空気が鋭く冷えていた。


霧が出ていた。道が見えにくかった。


藤堂が先頭で足元を確かめながら歩いた。誠が後ろで全員の状態を確認しながら続いた。


午後、霧が晴れた。


前方に、建物の輪郭が見えた。


大きな石造りだった。廃墟のように見えたが、窓に光があった。


全員が立ち止まった。


「神殿だ」と誰かが言った。


誰も走らなかった。


ゆっくりと、全員で近づいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ