36話 合流
◇ 合流 ◇
集落で二泊した。食料を補給した。
集落の人間は転移者に対して「来ては去る人間たち」という扱いをしていた。宿代と食料代を払えば何も言わなかった。北の神殿に向かうらしいとわかったとき、宿の主人が「気をつけろ」と言った。
「気をつけることがあるか」と誠が聞いた。
「山の中の道は一本しかない。それを外れるな。道を外れた者は戻らない」
「道を外れたら何がある」
「わからない。でも戻らない」
主人はそれ以上言わなかった。
二日目の夜、木村が誠の隣に来た。
「藤堂と話したか」と木村が聞いた。
「少し」と誠が言った。
「俺も話した」と木村が言った。「昨日の夜、短く」
「何を話した」
「ガレンで俺たちが分かれたとき、藤堂には止める気はあったかと聞いた」と木村が言った。
「どうだった」
「「なかった」と言ってた。「当時の俺には、お前らを引き留める理由が見つからなかった。俺の判断で行くのは正しいと思ってた」って」
誠は黙って聞いた。
「だから怒りも憎しみもないな、俺は」と木村が続けた。「藤堂は俺たちを利用したわけじゃない。ただ別の道を行った。結果は最悪だったけど、それはその後の話だ」
「お前が割り切れるのは意外だった」と誠が言った。
「俺もガレンで最悪な選択をしたから」と木村が言った。「自分のことを棚に上げて藤堂を責める気分にはなれない」
誠は木村を見た。
この数ヶ月で木村が変わったのか、もともとこういう人間だったのかが、誠にはわからなかった。おそらく両方だった。
「北の神殿に着いたとして」と誠が言った。「帰れると決まったとき、お前はどうする」
木村が少し間を置いた。「帰る」と言った。即答だった。
「母親がいるか」
「一人でいる。俺が消えてどのくらい経ったか、計算できない。でも帰りたい」
「そうか」と誠が言った。
木村が「田中は」と聞いた。
誠は答えなかった。まだ答えが出ていなかった。
翌朝、二十一人で出発した。空が晴れていた。山が大きく見えた。




