35話 牢の中
◇ 牢の中 ◇
夜、藤堂が誠に話しかけてきた。
焚き火が落ちた後、多くの人間が寝ていた。藤堂は眠れないようだった。誠も眠れなかった。二人で火の残り火のそばにいた。
「牢について聞いてもいいか」と誠が言った。
藤堂が少し間を置いた。「聞いていい」と言った。
「どのくらいいた」
「三ヶ月半」
「何を考えていた」
「最初は脱け出すことだけ考えていた」と藤堂が言った。「脱出の計画を立てることで頭を埋めてた。計画を作れば、他のことを考えずに済む」
「他のこと、というのは」
「死んだ三人のこと。村の人間のこと。それから——お前たちのことも」
誠は黙って聞いた。
「グループを分けた判断が正しかったか、何度も考えた」と藤堂が続けた。「答えは出なかった。俺が間違えたのは分離の判断ではなく、その後だと今は思ってる。村の住民を傷つけた。あれは俺の指示だった」
「全員が賛成したわけじゃないだろう」
「賛成しなかった人間もいた。でも俺が押し切った。それが俺の判断だった」
誠は何も言わなかった。
「お前は、俺のことをどう思ってる」と藤堂が聞いた。
珍しい問い方だった。藤堂が他人の評価を聞くのは、誠の記憶では初めてだった。
「お前のことを嫌いかと聞かれれば、嫌いじゃない」と誠が答えた。「合わなかった。判断に賛成できなかった。でもお前が動いていなければ、最初の転移直後に全員がパニックになっていたかもしれない。藤堂が仕切っていた期間があったから、最初の一週間は秩序があった」
藤堂が少し黙った。「そう言ってもらえると思っていなかった」と言った。
「俺が思ったことを言っただけだ」と誠が言った。
「俺は強さしかなかった」と藤堂が言った。「カリスマと力。それで全部やってきた。でもここでは、それだけでは何もできなかった」
「強さは使い方次第だ」と誠が言った。「山越えで必要になる」
藤堂が少し黙って、頷いた。
残り火が赤く光っていた。
どちらも眠くなるまで何も言わなかった。それで十分だった。




