34話 藤堂
◇ 藤堂 ◇
山の入口の集落で、藤堂龍一を見た。
集落の宿屋——藁と木材で作られた粗末な建物——に一人でいた。食事をしていた。誠が入口で止まった。藤堂も気づいて顔を上げた。
二人の間に、三秒ほどの沈黙があった。
「生きてたか」と藤堂が言った。ガレンを出てから何ヶ月も経ったような声だった。
「お前こそ」と誠が言った。「投獄されたと聞いた」
「脱獄した」
「一人で」
「一人でやれないことはない」と藤堂が言った。だが声に勢いがなかった。前の藤堂なら同じ言葉をもっと大きく言ったはずだった。
誠は藤堂の前に座った。自然にそうした。藤堂は逃げなかった。
「どうして北に」と誠が聞いた。
「帰る方法があると聞いた。それだけだ」と藤堂が言った。「俺は一人で北の神殿を目指していた」
「こっちも同じだ」
藤堂が外を見た。二十人の集団が集落の広場に荷物を降ろしているのが見えた。
「あれが今のお前のグループか」と藤堂が言った。
「そうだ」
「木村もいるな」
「いる」
藤堂が少し黙った。「俺もそこに入れてもらえるか」と藤堂が言った。
誠は驚かなかった。驚かなかった自分にも、驚かなかった。
「なぜ頼もうと思った」と誠が聞いた。
「一人で山を越える自信がなくなってきた。お前たちはグループで動いている。どちらが生存率が高いかは、計算するまでもない」
「感情の話は」
藤堂が少し間を置いた。「牢の中で、いろいろ考えた」と言った。「力があれば何でもできると思ってた。違った。俺が動かせたのは恐怖でついてきた人間だけだった。俺の判断で三人が死んだ」
「それをどう考えているか」と誠が聞いた。
「消えない」と藤堂が言った。「牢の中でずっとそれだけ考えていた。消そうとしたが消えなかった。消えない、というのが今の俺の答えだ」
誠はその言葉を聞いた。
「グループの全員の了解が必要だ」と誠が言った。「俺だけでは決められない。ただ、俺は反対しない」
藤堂が少し頷いた。
夜、全員に藤堂の合流を諮った。反対は二人いた。誠はその二人の意見も聞いた。全員が聞いた後で、藤堂自身がその二人に向かって何か言った。言葉少なだったが、謝罪に近いものだった。
翌朝、藤堂を含めて二十一人になった。




