28話 再会
◇ 再会 ◇
約束の時間に、木村は一人で来た。
区画の入口近くの路地だった。夕方で、人通りが少し落ちていた。木村が来たとき、誠も一人だった。橘に「少し時間をくれ」と言ってあった。橘は何も言わずに頷いた。
「あの四人は」と誠が聞いた。
「韓国から来たグループだ。言葉が半分通じる」と木村が言った。「ガレンを出てから、拾った流れだ」
「面倒見てるのか」
「いや。対等な関係だ」と木村が言った。「向こうもそれを望んでいた。俺が面倒を見る側になるのは……もう疲れた」
誠は黙って聞いた。
「ガレンのことを話してもいいか」と木村が言った。
「聞く」
木村が石壁に背をつけた。しばらく路地の先を見ていた。
「博打場の男に言われたのは「田中誠の動向を三日間報告しろ、そうすれば借金を帳消しにする」だった」と木村が言った。「俺は三日間、報告した。四日目に田中たちが夜中に動いたと聞いて、失敗したとわかった。朝、通りに出たら田中の姿が見えて——でも声をかけなかった」
「知ってる」と誠が言った。
「知ってたのか」
「見えた」
木村の手が、少し動いた。「……あのとき、俺には声をかける資格がないと思ってた。でも声をかけたかった」
誠は何も言わなかった。
「後悔してる」と木村が言った。「結果としてそうなった、ということより——田中に正直に言えなかったことを。借金が増えていたとき、言えばよかった。「助けてくれ」と言えばよかった。言わないで、自分で何とかしようとして、最悪の形になった」
誠はそれを聞いていた。
「お前だって同じことをしたかもしれない、とガレンで俺は言った」と木村が続けた。「あれは本当にそう思って言ったんだ。嘘じゃなかった。でも——今から考えると、言い訳でもあったと思う」
「うん」と誠が言った。
「怒ってるか」と木村が聞いた。
誠は少し考えた。「怒ってた」と言った。「今はどうかわからない。怒りとは別のものが混ざってる」
「別のもの」
「お前のことを信用したかった、という気持ち。それが裏切られたとき、何が一番しんどかったかと言えば——信用してた俺が馬鹿だったのか、という気持ちだった。でも今はそれも違う気がしている」
木村がまた黙った。
「北の神殿の話、続報があったら教える」と誠が言った。「それは約束する」
「ありがとう」と木村が言った。
二人は路地から出た。別々の方向に歩いた。さよならは言わなかった。でもガレンのときとは、重さが違った。




