27話 木村
◇ 木村 ◇
北に向かった二人の消息を追って三日経ったとき、木村健を見た。
市場の端だった。木村は誠の方を向いていなかった。別の転移者グループと思しき四人と何か話していた。笑っていた。ガレンで別れたときと同じ顔だった。
誠は立ち止まった。
声をかけるべきか、かけないべきか。一瞬考えた。
「田中くん」と木村の方から声が来た。
木村がこちらを見ていた。笑顔は消えていなかったが、目は笑っていなかった。
「生きてたか」と木村が言った。
「生きてた」と誠が言った。
短い沈黙があった。木村が一緒にいた四人に何か言って、こちらに歩いてきた。
「ここにいたのか」と誠が聞いた。
「三週間前に来た。ガレンを出てからしばらく南に行ったんだけど、いろいろあって北上してきた」
「一人で」
「今は四人いる」と木村が言った。仲間と思しき方角を軽く見た。「田中のグループは」
「十四人」
木村が少し間を置いた。「多いな」と言った。
「当たり前だ」と誠が言った。
また沈黙があった。ガレンの夜明け前の路地で起きたことが、二人の間にあった。消えていなかった。ただ、今この瞬間、それをどう扱うべきか誠にはわからなかった。
「何を探してた」と木村が聞いた。
「北に神殿があるらしい。帰還の手段があるかもしれない。そこに向かった転移者の消息を追っていた」
木村の目が変わった。「帰れるのか」
「わからない。まだ情報を集めている段階だ」
木村が考えるような顔をした。ガレンにいたときと同じだった。頭の中で何かを計算する顔。
「俺に教えてくれるか、続報を」と木村が言った。
誠は少し黙った。「教える」と言った。
木村が少し驚いた顔をした。驚くと思っていなかったらしかった。
「……ありがとう」と木村が言った。
「でも」と誠が続けた。「俺たちと一緒に行動するかどうかは、別の話だ。今はまだ、そこまで決められない」
木村はその言葉を聞いて、少しだけ何かが緩んだ顔になった。安堵ではなく——あの夜のことを誠が覚えていて、それでも話しかけてくれたことへの、何かだった。
「わかった」と木村が言った。
連絡先の代わりに、区画で会う時間を決めた。ヴァルナには携帯がなかった。
木村が四人の元に戻っていった。誠はその背中を見た。
ガレンで別れたとき思っていたより、木村は普通に見えた。それが何を意味するのか、誠にはまだわからなかった。




