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26話 情報屋

◇ 情報屋 ◇


大市の日、北から来る行商人を探した。


北方向から来る商人のテントは市場の西端に集まっていた。言葉の訛りが違うと浜田が教えてくれた。浜田も一緒に来てくれた。翻訳の仕事をしているだけあって、訛りの判別ができた。


三人の商人に声をかけた。最初の二人は「知らない」と言った。三人目が違った。


年配の女性商人だった。北の山岳地帯から毛皮と乾燥薬草を運んで来ているらしかった。誠が「北の古神殿について知っているか」と聞くと、女商人が目を細めた。


「知っている」と言った。浜田が翻訳してくれた。「ただで話す気はない」


誠が持っていた金を出した。女商人が金を確認して、口を開いた。


「北の山越えをした先に、廃墟化した神殿がある。廃墟に見えるが、人が住んでいる。神官ではなく、守護者と呼ばれる集団だ。三十年ほど前から転移者を受け入れているという話がある」


「転移者を受け入れるとはどういう意味か」


「帰還の儀式ができる。ただし条件がある」


「条件は」


女商人が少し黙った。「私が知っているのはここまでだ」と言った。「条件の内容は、行って聞くしかない」


「信頼できる情報か」


「私の客に、転移者を帰還させた守護者が一人いる。その者から直接聞いた。信憑性はある」


誠は女商人を見た。嘘をついている気配ではなかった。商売人として正直な情報を売っている顔だった。


「北の山までの道は」


「山の入口まで馬で五日、徒歩で十日ほど。山越えは別途三日から五日かかる。この時期は天候が安定している。二ヶ月後になると雪が降り始める」


「二ヶ月」と誠が繰り返した。


「行くなら早い方がいい」と女商人が言った。


市場を出てから、浜田が「本当に行くんですか」と聞いた。


「まだ決めていない」と誠が言った。


「私は……行かないと思います」と浜田が言った。「帰れるかもしれないのに、帰れないかもしれない場所に向かう理由が、私には出てこない」


誠は浜田を見た。浜田の判断は正しかった。リスクの取り方として、それは合理的だった。


「わかった」と誠が言った。


区画に戻って全員に話した。情報の内容。二ヶ月以内という時間制約。行けばどうなるかはわからないこと。


誰も笑わなかった。


橘が「決める前に確認したいことがある」と言った。「北に行った転移者が二人いるという話だったよね。その二人が帰れたか、消えたか、それだけでも調べられないか」


「調べる」と誠が言った。



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