21話 東の道
◇ 東の道 ◇
ガレンを出て三日目の夕方、道端に男が倒れていた。
近づくと、転移者だった。顔の造りが地元の人間と違った。日本人ではなかったが、同じ「こちら側」の人間だということはわかった。
「大丈夫か」と誠が声をかけた。男は目を開けたが、言葉が通じなかった。英語でもなかった。何語かもわからなかった。
橘が水を渡した。男は受け取って飲んだ。
それだけだった。男は何も言えず、こちらも何も言えず、しばらく顔を見合わせた。
男が立ち上がれると判断して、誠たちは先に進んだ。振り返ると、男がその場に座ったまま、こちらを見ていた。助けを求めるような目でもなかった。ただ、見ていた。
「置いていってよかったのかな」と佐々木が言った。
「言葉が通じない」と誠が言った。
「でも——」
「連れて行っても、方向が違うかもしれない。食料を分けるだけじゃ解決しない」
佐々木は何も言わなかった。誠も、その答えが正しいかどうかわからなかった。ただ進むしかなかった。
東への道は、ガレンまでの草原と少し違った。農地が増えた。村が点在していた。村に近づくと、農作業をしていた人間が手を止めてこちらを見た。「転移者か」という視線は、どこでも同じだった。ガレンで慣れたつもりが、慣れていなかった。
七日目の朝、地平線に壁が見えた。
ガレンの壁より高かった。
「ルヴェニアだ」と加藤が言った。旅の商人から聞いた名前だった。
壁の手前まで来ると、人の流れがあった。商人、農民、傭兵、旅人——いろんな人間が城門に向かって動いていた。その流れの中に、制服姿は自分たちだけだった。
城門の警備はガレンより多かった。衛兵が五人いた。並んで待っている間、誠は前後の人間を観察した。転移者の扱いがどう違うか、ここでもまだわからなかった。
隣に並んでいた商人が誠を見て、流暢な言葉で言った。「転移者は北の門を使え。こっちじゃない」
「知らなかった」と誠が言った。
商人は顎で方角を示して、前を向いた。
北の門に回った。北門は小さかった。衛兵が一人いて、面倒くさそうに「登録票があるか」と言った。ガレンで発行されたものを見せると、通してもらえた。
ルヴェニアに入った。
道が広かった。ガレンの三倍はある大通りを、馬車と人が行き交っていた。建物の高さも違った。石造りの二階、三階建てが続いていた。
「でかい」と加藤が言った。
その一言が全員の感想だった。
ただ、ここにも転移者区画があった。大通りから外れた裏側の、窓の少ない区画。こちらに向かって歩いていると、途中で看板があった。現地語で何か書いてあった。橘が少し考えて「転移者はここより先に住居を持つことができない」という意味らしいと言った。
「ガレンより整備されてる」と誠が言った。
「整備されてる、か」と橘が言った。
「区画が決まってるということは、追い出されにくい。ガレンみたいに「居場所がない」ではない」
「差別が制度化されてる、ということでもある」
誠は少し考えた。「そうだな」と言った。
区画の中に入ると、先住の転移者たちがいた。




