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リリア・テレシア~亜空間魔法の使い手~  作者: シャチ
第4章 王家の影編

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38.タウンゼント家での茶会

 その日は冬の晴れ間が広がり、一段と寒かった。

 テレシア家の馬車がタウンゼント伯爵家に到着する。

 私を出迎えてくれたのはアンジェリカ・タウンゼント伯爵令嬢とそのおつきのメイドだけだった。


「ようこそおいでくださいましたリリア・テレシア子爵」

「ご招待に預かり参りましたリリア・テレシアです。お会いできるのを楽しみにしておりました」


 アンジェリカ嬢はシンプルなデイドレスに身を包み私を茶会の部屋まで案内してくれた。

 メイドではなく本人が案内するのはそれだけ私のことを尊重してくれているのと、仮にも子爵相手であるからだろう。


 しかし、何故呼ばれたのかよくわからない。

 あのパーティー会場で一瞬目線があったとはいえ、接点があるわけでもない。


「改めまして、私アンジェリカ・タウンゼントと申します」

「リリア・テレシアです。お話したいことがあるとのことでしたが、わざわざ宮廷魔導士の私に個別に何かご依頼ですか?」

「いえ、そうではありません……というか宮廷魔導士だったのですか?」

「えーと、私のことをあまりお調べになっておられないので?」

「申し訳ございません。あまりにお若く見えるので既婚者であることすら疑ってしまっております」

「まぁうれしい事を言ってくださいますね」


 まさか子供世代から見ても私は学生に見えるらしい。

 私が子爵であることは手紙を出すうえで必ず知っているだろうが、宮廷魔導士であることまでは調べられなかったらしい。

 出来たばかりで領地を持たない伯爵家では伝い手も少ないだろうからやむなしかもしれないけれど。

 領地持ちの貴族で私のことを知らない領主はまずいないだろうからね。

 しかし、私に何を聞きたいというのだろうか、自己紹介が終わった後からアンジェリカ嬢は黙ったままだ。

 私は用意された茶で口を潤す。

 さすが領派閥の次男次女が結婚しただけあって派閥そのものは小さくともよい生活をしていることが分かる。


「テレシア子爵様。思いもよらぬことを聞くかもしれませんがご了承ください」

「えぇ、かまいませんよ」


 彼女は神妙な顔をしたまま私の顔を見直し、大きく息を吐いて呼吸を整えた。


「私には、前世の記憶があります。テレシア子爵も前世の記憶をお持ちなのではないですか?」


 前世の記憶?

 前世とはなんだろうか?

 私は、リリア・テレシアでありそれ以外でもそれ以上でもない。

 彼女の言い分が私にはよくわからなかった。


「前世、とはどういう意味合いなのでしょうか? 前の世、えーと?」


 私の発言でアンジェリカ嬢はしばらく固まっていた。

 意味が通じなかったことに衝撃を受けたようにも見える。

 しばらく無言の時間が過ぎたが、そういえば一緒についてきた彼女のメイドに驚いた様子が見られない。

 たぶん彼女はアンジェリカ嬢のいう前世という言葉の意味を知っているのだろう。


「……申し訳ありません。 前世というのは前の生、つまり生まれるより前の記憶を持っていることを言います」

「生まれるより前……そういえば東洋の国では死ぬと生まれ変わるという教えがあるそうですわね」

「はい、その考え方です。私にはアンジェリカ・タウンゼントとして生を受ける前の記憶があるのです。しかも、それはこの世界の記憶ではありません。別の世界の記憶なのです」


 彼女の発言でいくつかの謎が解けた気がした。

 彼女が幼少期より聡明で数々の発明と開発をして生活を一気に変革していったのは、そういった前世の知識というものがあったからだろう。

 そして、この情報はたぶん王家もつかんでいない。

 そこにいるメイドと二人だけの秘密にでもなっているのではないだろう。


「タウンゼント嬢の話はわかりましたが、なぜ私にも前世の記憶とやらがあると思ったのです?」

「お話させていただきます」


 彼女曰く、彼女の前世の記憶の世界にはこの世界を舞台にした物語があったそうだ。

 そこで私は例の男爵令嬢とも同級生であったという。

 さらには元第一王子は婚約しておらず、男爵令嬢と良い感じになる中で、彼女のサポートを私がするというのが流れだったようだ。

 だが、私は学園に居ない。

 実際にはいたが、私は監視をしていただけ、ましてや第一王子世代でもない。

 そこで、アンジェリカ嬢は私が事前に例の男爵令嬢の人となりを知っていて手を引いたのだと思っていたらしい。

 事前に男爵令嬢の情報を集められる点、さらには本来婚約していない元第一王子が婚約していることから、私は舞台から逃げたとアンジェリカ嬢は思ったらしい。

 そして、卒業式には私がいたからその疑惑がより深まり、前世の記憶を持っていると考えたという。


「なるほど、タウンゼント嬢の言うことはわかりました……が、おひとつ聞いてもいいかしら?」

「はい、なんなりと」

「タウンゼント嬢の言う物語が仮に未来を見ていたとして、すでに貴女というイレギュラーがいる時点で、覚えている物語とは違うとお気づきになられませんこと?」

「!!」


 私の発言で彼女は眼を見開く。

 そしてすっと目を伏せた。

 

「そ、そうですね。……はい、その通りだと思います」

「ところで、タウンゼント伯爵令嬢。私はあなたについて王家に報告しなくてはいけないとおもっていますの」

「!!、お、おまちください。確かに私が普通ではないということをお伝えいたしましたがそれは」

「私の報告で、タウンゼント嬢が拘束されたり罪に問われたりすることはありませんよ。ただの情報共有です。それに、貴女が秘密を話したように、私も一つお話ししましょう」


 私の言葉に彼女はごくりと唾をのむ。

 普段、貴族令嬢として完璧であるといわれる彼女であるが、今は歳相応にみえる。

 素がでているのだろう。


「わたくし、王家の影ですの」


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