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リリア・テレシア~亜空間魔法の使い手~  作者: シャチ
第4章 王家の影編

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36.第一王子、婚約破棄の失敗

第一王子の名前をアレクシスとしていましたが、アンジェリカともかぶるのでカルバートと改変いたしました。

第一王子に名前を付けていたことをすっかり忘れていました。

 その日、学園の終業式が終わり各貴族が実家に帰るか冬の社交に備えるかという流れの中で、学校内にあるホールで第一王子が主催したパーティーが行われようとしていた。


 ちなみに、王家もこの情報は当然つかんでおり、第一王子はこの場でアンジェリカ嬢を貶め婚約破棄を宣言する腹積もりであることはつかんでいた。

 学園内の貴族子女の大半はこのパーティーにいやいやながら参加していた。

 何事もなければ次期国王として立太子する第一王子の呼びかけに異を唱えるのは難しいからしょうがないだろうが、この時すでに王家から高位貴族を通じて今回のパーティーに参加する者たちは何が起こるのかおおよそ知らされていた。


 なにより、パーティーを準備していたメイドや従僕たちは、すべて王家の騎士団員であり物理的な被害が発生する前に第一王子たちを取り押さえる予定であった。

 

 これから起こることはすべてシナリオがある。

 第一王子の描いたシナリオとは別の王家が用意したシナリオだ。

 

 そして私は、この場に久々に亜空間からではなくドレスを着て参加している。

 周りの生徒たちが普段見たことのない女子生徒がいるという目で観てくるが、私はすでに学生ではないのに場には溶け込んでいた。

 エディからも見た目が若いころと変わらないと言われる私だが、私自身もそう思っている。


「まさか、30超えても見た目がほとんど変わらないとはね」


 私自身も驚きである。

 町で娘と歩いていてもいまだに姉妹と間違われるのだからいまだに自分でも驚く。

 ロザリンドなど、何故お年を召さないのでしょうと少ししわの増えた顔で疑問を呈され何も答えられなかった。


「第一王子殿下のご入場です」


 感慨にふけっていると従僕の声が響いた。

 そしてホールの踊り場にたつ第一王子とその側近、そしてその横にはすでに平民である元男爵令嬢が並び立つ。


「出てこいアンジェリカ・タウンゼント!」


 第一王子が声高に婚約者を呼び捨てにする。

 一応それにこたえるようにアンジェリカ嬢は一人彼らの前に出た。


「貴様の悪行もここまでだ!!私の愛おしいカーシャへの行い目に余る。これをもって婚約破棄を言い渡し――」


 第一王子が婚約破棄と発言した段階で、ホールにいた従僕たちが一斉に彼らを取り押さえた。

 一糸乱れぬとはこのことだ。

 側近として護衛を担うはずの男も無様に取り押さえられていた。


「何をする!私は王族だぞ!!!」

「誠に残念ながら、先ほどの婚約破棄という発言をもってカルバート殿の王位継承権と王族としての特権は消え失せましたよ」


 彼らの前に現れたのはコーワン内務伯。

 その手には王家が正式に発行する勅命の書面が握られていた。


「王家が、我が国の発展と安定の為結んだタウンゼント伯爵家との婚約を何の権限もないものが一方的に破棄に至った場合、そのものの権限をすべてはく奪し、国家反逆罪として幽閉する。これが国王陛下の判断ですカルバート殿」


 そういって王印が押された勅命を殿下たちだけでなく、周りの生徒たちにも見せるように掲げる。


「ば、馬鹿な……」

「貴殿らのたくらみ、ありもしない罪でこの後タウンゼント伯爵令嬢を貶めようとなさったようだが、それらは王家の影によって否定されておるのですよ。学園なら王家の影も届か居ないとでも思われたのですかな? それとも、王家の影の存在自体をご存じなかった……などという事はございませんな?」


 心底丁寧に、馬鹿に言い聞かせるように話すコーワン内務伯は生き生きしていた。

 やっと肩の荷が下りたというところだろうか?

 まぁあまりのバカは相手をすると疲れるからしょうがないとは思うけれど。


「彼らを連れていけ、すでに貴族でも王族でもない、多少手荒にしても問題とならん」


 コーワン内務伯の発言に従僕に化けていた騎士たちは彼らの手に縄をうちつ連れて行った。


「すでに参加者の生徒たちには連絡済みであるが、此度の件至急持ち帰られよ。王家は第二王子殿下を時期王太子とする予定である」


 コーワン内務伯の発言を聞いて生徒たちは礼をしてホールを後にしていく。

 さて、アンジェリカ嬢はというとなんだかぼーっとしたままであった。

 そんな彼女に保護者のように寄り添いにいくルバート様をみるに、なんだか恋愛というより兄妹のように見えてしまった。

 

 まぁこれにて一つのたくらみは潰えたというか達成されたというか……

 少なくとも、明日から私は今までの生活に戻ることになるだろう。


 どうにもホールを後にするとき、アンジェリカ嬢の目線が私に向いていた気がするのは気のせいだと思いたい。

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