4.一属性しかなくとも、私はテレシア家の娘
魔力測定を終えて、宿泊していた部屋に戻ってきました。
お父様もルーク様含めた魔導士の方々も難しい顔をしていて、何かを話し合っています。
私は個室で待っているように言われて、今はメイドが居れたお茶とお菓子をつまんでいます。
「私、亜空間属性しかもってないんだ」
私の言葉に、部屋にいたメイドの肩がびくりと揺れました。
何かと思ってメイドを見れば、なんだか私のことを可哀そうなそれでいて若干馬鹿にしたような目で観ています。
確か彼女は男爵家の出だったはず。
弱いながら、属性は火と風で我が家の分家の一つだったはずです。
一属性しか持たないというのは一般的に下級貴族で平民と結婚した夫婦の子供に多いと教わりました。
私は、伯爵家の子じゃないのでしょうか?
「リリア、少し話をしよう」
メイドの不遜な目線にどうしようかな?と考えていたら、お父様が部屋に入ってきた。
そして、メイドはお父様ににらみつけられて慌ててお茶の準備を始めた。
「魔導副部長と詳細について話をした。過去にも希少属性……つまり火、水、土、風以外の属性を持つ子供が、その属性を失わずに大きくなると、他の属性が発現しないことがあるとのことだ。
一属性といってもリリーはおそらく亜空間属性をもっている。だから一属性だからといって気にすることはないぞ」
「そうなのですか?」
「例えば10年前までご存命だった教皇のアンテルス猊下がそうだった。猊下は侯爵家の出ではあったが、非常に強い聖属性の一属性しかお持ちでなかったのだよ」
珍しい事ではあるけれど、貴重な属性だと一属性しか持っていない貴族子女はいるらしい。
「リリーが一属性しかもっていなくったって、私の娘であることには変わらないよ」
お父様がやさしく声をかけてくれて、頭をなでてくれました。
私はその父の手にほっとして自分が思ったより不安を覚えていたことに気が付いた。
「さぁ帰ろう。ただリリーの魔法の勉強についてはどうするか考えないといけないな」
お父様の何気ない一言で思い出したことがあります。
カディル兄さまはすでに魔法の先生がついて勉強していますが、それは当然お兄様の属性の先生が付いています。
じゃあ私に合う属性の先生っているんでしょうか?希少なんですよね?
我が家についてぐっすり眠った私は翌日、家族全員がそろう朝食の時間の後に、お父様から私の属性について説明がされました。
「リリーは一属性しか持たないが、希少な属性であることが分かった。聖属性や回復属性といったわかりやすい物ではなく、おそらく物の転移をしているという事実から亜空間属性だろうということだ」
「リリー安心なさい。貴女は間違いなく私の娘ですからね」
お父様と同じく、お母様からも念押しのように娘だと言ってもらえた。
カディル兄さまもうなずいている。
「問題となるのはリリーの魔法の勉強だ。宮廷魔導部にもリリーと同じ魔法を使える魔導士はいないとのことだ」
帰ってくる前からお父様が気にしているのはこの部分だった。
私が一属性だからって家での扱いが変わったりはしなかった。
「教師がいないんじゃ、リリーは魔法の力を伸ばせないじゃありませんか」
「その通りだ。一属性であるよりそちらのほうが問題だ。そこで魔導副部長は一冊の本を貸してくださった」
そういってお父様が家令に持ってこさせた本は、それなりの厚さがある魔導書と呼ばれるものだった。
「これは、過去に存在した亜空間属性で宮廷魔導士になった平民が残した魔導書だそうだ。亜空間魔法についてどのようなものであるかをまとめたものだそうで、後進の為に残されたものとのことだ」
お父様はそういって私にその本を渡してくれた。
「これを読んで、もしわからないことがあれば手紙をだしてよいと副部長から言質を取っている。リリーはこの本を読んで魔法の勉強をすることになるから、しっかり励むように」
「わかりました!」
手に取った魔導書を手に、私は魔法を勉強することになった。
一属性しかないかもしれないけれど、私はテレシア家の娘として恥ずかしくない人間になろうと思う。




