32.貴族学校に行く理由
少々説明回です。
作者自身も設定を練っている中で頭がコタコタしており名前を取り違えたりしていました申し訳ございません。
今回、私が貴族学校へ行くことになった理由は学園においてタウンゼント伯爵令嬢の身辺を調査するとともに、彼女を保護することが理由だ。
新興伯爵家タウンゼント令嬢アンジェリカ。
第一王子カルバート・ハンストリア殿下の婚約者である。
彼女本来まだ学園に通う年齢ではないが、現在殿下とともに学園の2年目を過ごしている。
現在、彼女の噂としては両極端なものが聞こえてきている。
ひとつは、幼少期から言われていた品行方正で完ぺきな貴族令嬢。聡明で小さいころから伯爵領で様々な商品を開発、商業化してきたということ、さらには全属性持ちだという評価だ。
例えば、金属を先端に使った万年筆というペン。
それまで羽ペンしかなかったところに、ペンの中にインクを入れ金属の先端を持つペン先にて文字を書ける筆記用具を開発した。
これは今では庶民でも手に入るレベルの価格となり、無くてはならない商品となっている。
ほかにも、卵を使った調味料や伯爵領でしか味わえないスイーツ類の開発であったり、魔法鑑定後は火水風土すべての属性を持ち、それらを活用した魔道具を次々と発明している。
元来、魔道具というものは一般的なものではなく、有名な魔法防御の術式は古代に作られて以降、どのような経緯で開発されたのかの記録が失われ、改良も一苦労であり、現在も改変はできていない。
つまり、新規に魔道具が開発されたというのは王国の記録では初めてのことだった。
彼女が開発したものは数知れず、水洗トイレ、冷蔵庫、扇風機、給湯器、照明器具、発明品はまだまだある。
彼女が開発するものはすべて生活環境の改善につながっており、王国の貴族の間では持っていることがステータスと言っても過言ではない。
これほど強力な伯爵家が級に現れればいずれかの派閥が勢力を急拡大しそうなものだが、そうはなっていない理由がタウンゼント伯爵家の成り立ちにある。
理由が何とも貴族らしくないのだが、北部閥のフィンレー侯爵の妹君と南部閥のアイリンガム侯爵の弟君が、大恋愛の末結婚してできたタウンゼント伯爵家に端を発する。
私もそうであったけれど、貴族というのは家のことを考えての政略結婚が普通だ。
ところがこの二人、敵対派閥であるというにもかかわらず、互いを好いてしまった。
二人とも世継ぎでなかったというのも影響があるかもしれないが、ともかく両者は当主を懐柔し、結婚してしまったのだ。
下位貴族の間で南北派閥間の婚姻はあるにはあったが、まさか筆頭家が……当時は困惑したものだ。
おかげで貴族会の縮図は変わった。
北部と南部をつなぐ伯爵家が生まれたことで、王家派と貴族派という構図ができてしまったのだ。
今まで北部閥、南部閥、中立派という三竦みが崩壊、慌てた王家は第一王子とタウンゼント伯爵令嬢アンジェリカとの婚姻を決めた。
そして、ふたつ目。
これはアンジェリカ嬢が学園に通い始めてから王都で流れてくる噂だ。
学園内での彼女の行動はとても褒められたものではないというものだ。
下位貴族を見下しイジメ、奴隷に用に扱うだとか、婚約者である第一王子に近づく女子生徒には容赦ない制裁を与えるというものだ。
ただ、この噂について大人たちというより領主や席にある立場の者たちは冷静だった。
ひとつめの噂とあまりに合致しない人物像というのもあるが、アンジェリカ嬢が権力を使って下位貴族を黙らせたなどという事実が少なくともないからだ。
ここでいう事実はないというのは、家の爵位や後ろ盾である両侯爵が何か動いたという事実がないからだ。
ただ、学園内でのことは残念ながら詳しくわからない。
王立とはいえ学園は大人は入ることのできないある種の閉鎖空間である。
事実が事実として伝わってこないというのはよくある話で、このふたつめの噂もこれが理由だろうと思われる。
問題はこの二つ目の噂を第一王子がまともに信じているという事実である。
そして、学園入学後、第一王子とアンジェリカ嬢の仲は目に見えて悪くなっている。
そんな状況について確認と、王家としては絶対にアンジェリカ嬢に瑕疵をつけたくないことから、私に監視と保護という背反する仕事が割り振られたのだ。
学園の外には多くの目があるが、どうしても内側には目が少ない。
お着きのメイドや従僕は基本的に学園領から出ることができないからだ。
そこで私にこの仕事が回ってきたというわけである。
要は亜空間魔法を使って学園に侵入し、毎日午後に学園で彼女の様子を見守るという仕事が……




