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リリア・テレシア~亜空間魔法の使い手~  作者: シャチ
第3章 宮廷魔導士編

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30.変わった仕事へのお誘い

 宮廷魔導士になり1年が経過しました。

 残念ながら、まだ子宝には恵まれず、たまに出仕で城に赴き、普段はタウンハウスの維持管理をしながらたまに社交をして、魔物の討伐要請に答えつつ、エディの実験に付き合う日々を過ごしている。

 

 社交シーズンには両親も屋敷に訪れるため、大変賑やかだった。

 カディルお兄様たちは領地でお留守番。

 第一子が生まれてまだ1年、娘を放置してまで社交にでることはないので、しばらく外交は両親が、内政はお兄様たちが行っている。


 私の仕事はタウンハウスの維持と王都でのテレシア家の窓口、そして宮廷魔導士である。

 

 そんな日常の私のもとに変わった知らせが届いた。

 内務伯直々の呼び出しである。


「内務伯から呼び出しを受けるようなことをした覚えはないのだけど」

「私も何も聞いていないね。リリーにも心当たりはないわけだ」

「あるわけないわ」


 内務伯は王宮の内務省を治める伯爵であり、その権限は近衛師団と宮廷魔導部も受け持っている。

 さらには王城内での従僕やメイドの人事権も有しており、おもに王宮内での仕事全般についての業務統括を行っている。

 現在はコーワン伯爵が内務伯として仕事をされている。


「とにかく、予定日にうかがう事にするわ。部長を通り越して直接内務伯からの呼び出しなんて、何なのか想像もつかないけれど」


 実際の予定日までは7日間あり、私はその間に社交会と職場を通じて情報を集めてみたが、結局呼び出された理由はわからなかった。

 普通の業務であれば、この辺り少し探ればわかるものなのだが、こうも何もわからないとあきらめて直接話を聞くしかない。


 面会当日、あっさりと内務伯の執務室に通された。

 私はの前には内務伯とおつきのメイド以外人払いされてしまった。

 一応メイドが一人いるのは互いに既婚者である異性が二人きりではないという建前だろうが、明らかに重要な話をする雰囲気である。


「テレシア子爵、来てくれたことに感謝する」

「内務伯に置かれましては……」

「挨拶はいい、貴女は何故呼ばれたのか調べたようだが、何も出てこなくて困惑しているであろう?」

「えぇ、その通りですわね。いったいなぜ呼び出されたのか皆目見当つきません」

「逆に、テレシア子爵が呼び出した理由をつかめていたら、私はある処罰をしなければならなくなる」


 処罰?内務伯の管轄で情報が漏れる可能性としてはメイドたちの噂話などだろうが、そういったものもなかったので、本当にわからない。

 逆に普通のメイドたちが情報を秘匿できるとは思えない。

 王城に勤めている者たちは必ずどこかの紐付きであり、当然テレシア伯爵家としても王宮に伝いてはあるので、必ずどこかから少なからず情報がつかめるはずなのだ。

 それがつかめないとなると普通の組織ではない。


「さっそく本題に入るが、呼び出したのはテレシア子爵に宮廷魔導士のまま他の職についてほしいというのが理由になる」

 

 内務伯の発言の意図がわからず私は思わず首をかしげる。

 宮廷魔導士のまま他の仕事をしろというのはわかるが、宮廷魔導士はあくまで宮廷魔導士としてしか王宮に勤めていない。

 ましてや研究者ではない私は普段王宮にもいないので王宮内での仕事をすることは少ないのだ。


「いったいどのような職につけというのでしょうか? 私はすでに討伐任務で成果を上げていると思いますが」

「それを見込んでの依頼だ。 テレシア子爵、王家の影になる気はないか?」


 私は思わず呆けてしまった。

 王家の影

 当然知っている単語ではある。

 どこが統括している組織かわからず、さりとて王家として王国中の情報を集めることは必要。

 そのため王家の影という組織があるというのは暗黙の了解だが、誰がどのように運営し、構成員など当然誰もわからない組織だ。


「即答できかねるのですが」

「当然だろう、私がテレシア子爵を勧誘するのには理由がある。それだけでも聞いてくれ」


 なぜ私を王家の影としたいのか、それは私が亜空間魔法を使えるからだろう。

 しかしそれと王家の影とが私の頭の中でつながらなかった。


「影というぐらいだから、構成員などは当然公表されていない。それこそここにいるメイドがそうであるように、昨日顔を合わせた相手が影かもしれない。そう思わせることが重要なのだが、テレシア子爵の場合は違う」


 内務伯が言うには、私の亜空間に潜る魔法が隠密行動に役に立つという判断らしい。

 仮に見つかったとしても亜空間に逃げ込める。

 あるいは亜空間から対象を観察し続ける。

 亜空間から突然現れて……など活用方法は無限だろうという判断だそうだ。


 私はこの仕事を受けることとした。


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