28.戦果報告と帰還
変異ベヒモスを倒して領都へ戻ったときには日が沈むギリギリの時間だった。
早朝から移動して半日かけて山まで行ったので、当然帰りも半日かかる。
行きよりは多少は早いと言ってもどうしても移動には時間がかかるものだ。
「報告ご苦労、よく討伐してくれた。テレシア子爵、さすがは宮廷魔導士だ」
で、戻ってきてすぐにやることは侯爵への報告である。
私と、ついてきてくれた騎士団の隊長とドロシーさんと共に執務室を訪れて状況を説明し終えて感謝の言葉をもらった。
「変異ベヒモスについては演習場に展開しましたので、お好きに処理していただければと思います」
「魔石などいらないのかね?」
「私はあくまで宮廷魔導士として依頼を遂行しに来ただけですから、討伐完了の書面さえいただければ十分です」
ここでいう魔石とは魔物を倒すと手に入る宝石のようなもので、魔法の媒体や魔道具など活用方法がある。
当然大きくなるほど高価である。ほかにも魔物の素材というのもお金になるのだが、宮廷魔導士である私は個別に何かをもらうというのはちょっと違う気がしている。
「すぐにでも書面を用意しよう」
侯爵の言葉で部屋を後にするとき、ドロシーさんからもお礼を言われた。
たしかに魔法を無効化する魔物というのはごくごくまれに発生するので、その時手持ちの魔導士の属性が無効化されるとこうしても困ることになるのよね。
だから宮廷魔導士がいるともいえる。
同じ派閥だと属性違いがいないことが多いためだ。
それに別属性を使えると言っても、強い魔法が使えるとは限らないので、こういった特殊な討伐に呼ばれることがあるのだ。
私は侯爵家に一泊し、翌日には討伐報告書を作成、侯爵から討伐証明書も貰い、王都に帰還した。
「早かったねリリー」
「無事に討伐できたので、部長に報告します」
「本当に、亜空間魔法は規格外だよねぇ……今度は一緒についてきたいよ」
「急を有する討伐じゃなければいいですよエディ」
屋敷に帰りエディに報告した後は、宮廷魔導部へ報告へ行く。
私が初めて会った宮廷魔導士のルーク・リード子爵が現在の魔導部長だ。
当時は副部長だったので順当に昇進したことになる。
「ご苦労でしたテレシア子爵。貴女に依頼をしてよかった」
「そういってもらって光栄です」
「火と風が封じられるとどうしても北部閥から人を出さねばなりませんが、そうするとどうしても時間がかかる。貴女がいてくれて助かりましたよ」
「私は動ければいつでも討伐に向かいますので、お声がけください」
「えぇ、頼りにしています」
ちなみに、宮廷魔導士になる前から魔物の討伐をしていたのは授業の一環もあるが、魔導部長からの依頼もあって活動していた。
なので彼は私の能力については正しく把握している。
だからこうして緊急の案件が、まだ宮廷魔導士になりたての私に回ってきたのだ。
こうして誰かの頼りにされるというのは本当にうれしいものである。




