26.アイリンガム鉱山
アイリンガム侯爵領の主な産業は農業と鉱山から出る鉱物資源をつかった貿易である。
広い領地は山からの湧き水が豊富な川のおかげで小麦を含め野菜類が良く育つことから農業が盛ん。
それだけであれば王国内のどこでも農業は盛んであるが、特色がある産業として鉱山をいくつか保有していることがあげられる。
ルビーやサファイヤが取れる宝石鉱山、石炭を採掘する炭鉱、銅や鉄といった鉱山を保有している。
石炭はここ最近王国内の暖房器具としてストーブの燃料として市民でも手が出せる金額になってきている鉱石であり、アイリンガム侯爵領の財政を支える一つである。
その石炭鉱山周辺でベヒモスが出た。
つまり、アイリンガム侯爵領の稼ぎ頭の一つが休鉱中なのだ。
アイリンガム侯爵として蓄えが当然あるのですぐに経済的に困るわけではないが、これから冬を迎えるこの時期に石炭鉱山がつかえないとなれば市中の石炭価格は暴騰、経済的なマヒがおこればその不満は国に向く。
だから早急に片付ける必要があるのだが、自分たちでは倒せない。
というわけで王宮に救援を頼んだというのが今回の流れだ。
なのですぐにでも討伐してしまうに越したことはない。
一人できた私に驚いた侯爵ではあったが、侯爵家魔導師団の新人ドロシーの説明で納得された。
私は魔法防御を貫通する攻撃ができる。
つまり、火と風の魔法防御があろうともベヒモスにダメージを与えられる。
「まさかリリア様が直接おひとりで出張ってくるとは思いませんでした」
「私が一人できたほうが早いもの。ドロシーさん、一応戦った時の状況を教えてもらえる?」
侯爵とあいさつの後、ドロシーさんは私についてきて状況の詳細説明をしてもらうことにあった。
ほかにも子爵が一人で来たので他にもメイドを数名つけてくれて、部屋も用意してもらった。
なので、ドロシーと一緒にその部屋で状況の詳細を聞くことにした。
メイドにお茶を入れてもらっている間に私は持ってきた荷物のうちドレスを部屋のベッドの上にぶちまけ、片付けてもらう。
そしてお茶が入れば本題の開始だ。
「炭鉱に出現したベヒモスは通常種ではありません。すでに急報で王宮に伝えた通り火と風魔法を完全に防いでしまうため、私たち侯爵騎士団の魔法使いの攻撃はすべて無効化されました。さらに強い土魔法を使ってきます。おかげでこちらの土魔法を使える魔導士の攻撃は相殺されてたいしたダメージを与えられません。なにより通常種の倍の大きさがあります」
「なるほど、ごくまれに出現するという特殊個体というやつなのね」
「間違いありません。侯爵騎士団の騎士たちが大槍でけん制しましたが、傷もつけられませんでした。ただ、幸いなのは炭鉱にとどまっており町まで降りてこない事です」
「それだけが救いのようにも聞こえるわね」
「はい、仮に街に降りてこられたら被害は計り知れません……ただ、ベヒモスの目的は炭鉱の石炭のようなのです」
「魔物の生態はわからないものね」
イメージとしては石炭が欲しくてベヒモスは現れた、で、人に攻撃されたから反撃したが別に人を食らうだとかはしないので攻撃してきた人間を退けた後はそこに居座っているというわけだ。
「炭鉱までこの領都からどれぐらいかかるのかしら?」
「歩いて半日程度です。それほど遠くはありません」
「では明日の早朝に出発しましょう。案内よろしくね」
「わかりましたリリア様」
とうわけで、翌朝にはベヒモス討伐作戦の決行とした。
何ということはない、私の魔法で削り切れればそれで終わる。
削れないなら別の方法を考えないといけないが、逃げるだけなら相手を足止めすればいいので簡単だろう。
それに追撃まではしてこないようだし。
学園にいた間も強い魔物とは何度か戦ったが、通常魔法が効かないような魔物とはあったことがない。
私の魔法が本当に通用するのか、楽しみでならないのです。




