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リリア・テレシア~亜空間魔法の使い手~  作者: シャチ
第2章 貴族学校編

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22.学園卒業と亜空間の中

 学園の卒業式はデビュタントを兼ねたもので、卒業と同時に大人として扱われるようになります。

 16歳となり、私もだいぶ発育しました。

 少々凹凸に乏しい気がいたしますが……まぁそこも含めて好いてくれているエディでありがたい限りです。

 彼は浮気することなく私を婚約者として扱ってくれます。

 この卒業式後に開かれるパーティーでもきっちりエスコートをしてくれた。


「リリア様もメアリー様も宮廷魔導士に慣れてよかったですね!」


 今日も元気なドロシーさんは侯爵領にて魔導士団に入ることになっており、明日以降は王都を離れてしまうので、しばらく会う事は出来なくなってしまいます。

 数少ない同期の女性ですので文通は今後も続けるつもりです。


 そして、私とメアリー様は二人とも宮廷魔導士となれました。

 メアリー様は研究者としての採用で、私は戦闘員としての採用となりました。

 実際私は研究者気質ではないので、魔法による攻撃に極振りしつつ物資を簡単に運ぶという活用方法が戦闘員側での採用を後押しした形で、有事の際には騎士団と共に遠征することもありそうな雰囲気だ。


「ドロシーさんも地元に戻っての活躍、期待しておりますわ」

「お手紙くださいましね」


 和やかな雰囲気を遠巻きに見ているエディが何か言いたげだったので、私はそちらへ向かう。

 きっと例の件だろう。


「結婚式の準備なんかもあるけれど、明日本当にやるのかい?」

「何かあったら助けてくださいね」

「助けられればいいんだけどなぁ……まぁたぶん大丈夫だろうと思うけど」


 明日やるのは亜空間魔法についての大実験です。

 これまで、動物や犯罪奴隷を使った実験を繰り返し、亜空間に生物を入れることは問題ないという事がわかってきました。

 私が入り口を開いておく時間も長くなっており、人間も問題なく亜空間に入れることがわかりました。

 ただ、入り口を完全に閉めてしまうと、何人かの犯罪奴隷は発狂してしまって使い物にならなくなってしまい、それだけが不安材料です。

 そして、私も作った入り口に手や足を突っ込んでみたところ、その分には特に異常はなく、エディも中に入ってみた結果特に問題なかったことから、いよいよ私が入ってみようという事になりました。


 なお、亜空間の中は実際に入ったエディも犯罪奴隷たちも「名状しがたい」とのことで、幻覚が見えるだとか真っ暗だとかではなく、そのような感想になるのが謎でした。

 明日やってみる実験は、入り口を大きく開けたまま、私の腰にロープを取り付けた状態で亜空間にはいってみるというものです。

 何かあったらエディや護衛騎士がロープを引っ張って引きずり出す予定。

 仮に全身を亜空間へ入れたとき、入り口の魔法が不安定化するなら速攻で引っ張りだされる予定です。


「リリー、すくなくとも無理はしないでくれよ? 魔力に異常を感じたら絶対中止してくれ。結婚前に妻に先立たれるとか嫌だからね」

「わかってるわよエディ。エディも中に入って名状しがたいとはいえ生きて帰ってきたのだから大丈夫でしょう」

「術者本人が中に入るのは別の問題だよリリー。そこは今一度認識してほしい」

「わかったわ」


 卒業パーティーなのでエディとダンスを踊り、早々に学園を後にする。

 向かう先は新たな我が家であるテレシア家のタウンハウスだ。

 すでに準備万端な状態であり、しばらくは私とおつきのものが住む予定。

 結婚後はエディがここに加わる。

 明日の実験は我が家の庭で行う予定だ。



 翌日、昼前の時間にエディが我が家にやってきた。


「大丈夫エディ? 顔色が悪いわよ?」

「今一つ昨日は心配で眠れなかったよ」

「そんなに心配しなくても大丈夫だと思うわよ」


 今までの実験でも入り口さえ閉じなければ特に問題はなかったのだから私には大丈夫だという確信がある。

 けれど、エディはやっぱり心配らしい。

 

「ともかく、今日は新しい活用のための実験なのだから協力してもらうわよ」

「はぁ、わかったよリリー。本当に頼むから無理だけはしないでくれ」


 私は騎士服を着用して腰にロープを巻き付けてもらう。

 エディのほかに近くではロザリンドが見ているし、我が家の護衛騎士たちが私につながるロープをしっかりと握っていた。


「では展開します」


 私は自分の目の前に亜空間の入り口を出現させる。

 入口自体の厚みはなく、真っ黒な板というような感じだ。

 

「入りますね」


 私は真っ黒な板に一歩踏み出す。

 足や手を入れたことは今までも何度もあったので、そこまでは特に違和感はない。

 それに足場がないという感じでもなく、踏みしめることができた。

 そして、もう一歩踏み出す。

 ロープがピンと張った感覚が腰に伝わる。


 そして目の前には何とも名状しがたい情景が広がっていた。

 後ろを振り向くと心配そうな顔でエディやロザリンドがこちらを見ているのがわかるが、たぶん彼らに私の姿は見えていないと思う。

 入口は真っ黒であったが、中はなんというのだろう、無理やり言葉で表すなら絵具とぶちまけたような空間と言えるかもしれない。

 実験に使った犯罪奴隷の中には宙に浮くような感覚があったという話もあったが、私にはそれはない。

 ただ、この入り口がない状態でこの空間に取り残されたら気が狂うのもわかる気がするという空間だった。

 せっかくなのでこの亜空間でさらに亜空間魔法を使ってみる。

 入口の隣にもう一つ入り口を作るイメージで魔法を行使すると、エディたちの横の姿が見える位置に入り口ができた。

 私は「真横」というつもりで魔法を展開したので、確かに現実世界に置いての真横ではある。

 これは研究が必要だなと思ったけれど、とりあえず新しい入り口から通常空間に戻ってみることにした。


「ただいま戻りました」

「「うわっ!!!」」


 思っていなかった方向から現れた私にエディを含め全員が驚いた声を上げた。

 私は思わず笑ってしまう。

 でも確かに意図していなかったところから人が出てくればこうもなるだろう。


「特に問題はありませんでした。入口と出口? を別々に作ることも出来ましたし」

「そ、そのようだね……無事に戻ってきてよかったよ」

「おかげで、亜空間魔法の別の活用が見えてきましたけれど」


 私は目視している範囲しか亜空間魔法を行使できないが、亜空間から見えている外の空間に出口のようなものを別に作ることができた。

 つまりより活用できる方法が見つかったと言える。

 私は亜空間魔法に何か別の活用方法が見つけられるかもしれない。

 私は今回の成果にとても満足していた。

 

 


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