19.亜空間魔法の活用
早いもので学年があがった。
今年入学の1年生は去年より人数が少ない。今年は第二王子殿下も卒業する予定だ。
私はこの1年で婚約者のエディと一緒に亜空間魔法の活用を模索している。
亜空間魔法は結局のところ、魔力を使って観測不能空間へ向けての出入り口を作ることができる魔法だろうというのがこの1年の研究結果だ。
さすがにこの観測不能空間である亜空間に頭を突っ込んで観察するなんて言うのは怖くてできないため推定でしかないけれど。
この1年間の魔法の練習で、亜空間への入り口を開いておける時間は圧倒的に増加している。
さらに、亜空間に取り込んでおいたものを自由に出し入れすることができるようになってきた。
ただし、私が忘れなければという注釈が付く。
ちなみに忘れると二度と見つからない。
思い出したところで時すでに遅く、どこで何を取り込んだかをしっかり記憶しておかないといけないことが分かっている。
便利な魔法ではあるが、制約条件が結構大きく、無条件で使えるものでもない。
これが分かったのは、エディと庭でお茶をしている際に現れた虫を亜空間に取り込んで消滅させたのち、数日後にエディからそういえば、あの虫どうなったの?と聞かれて発覚した。
確かに取り込んだけれど、その後すっかり忘れており、取り出そうと思っても取り出せなかったのだ。
これは別に生き物を取り込んだからとかいうわけではない。
この出来事の後、小鳥を亜空間に取り込み、後日ちゃんと取り出すことができたので、自分がちゃんと取り出すことを意識して忘れないようにしておけば、亜空間に物でも生き物でも収納することができる。
もう少し魔力が育って、私自身が入れる大きさの亜空間への入り口がつくれるなら、私はそこから亜空間に入れるのではないか? と思っている。
まだ入り口を維持できるのは数分なのと、入り口がそれほど大きくできないので、私が入ることができないのでやっていないけれど。
ただ、亜空間魔法が収納に活用できることが分かると、私の手荷物は明らかに激減した。
全部亜空間にしまってしまえばいいので扇子やポーチなど出かけるときに持つ手荷物は全部亜空間に収納して出歩いている。
必要だと思えばぱっと取り出せるのでとても便利だ。
「王立騎士団の演習に同行してほしい……ですか?」
「リリーの能力のテストという面も含んでいます。忘れさえしなければ亜空間に収納したものをいつでも取り出せるということですから、行軍における兵站を担えないか? という実験的な内容です」
エディとのお茶会の際、私宛に実験に参加してほしいという要請を聞かされました。
確かに私の能力ならいろいろなものを収納できますが、忘れたらおしまいなのです。
それがゆえに実験をしてみたいというのが王立騎士団と宮廷魔導部の考えとのこと。
「協力は構いませんけれど、あまり大きなものは収納できませんし、私が覚えきれない量だとおしまいですよ?」
「そこは向こうも了解していますよ。今回は目録とリリーの亜空間魔法の出入り口のサイズの木箱に印もつけますので」
「つまり無くなっても文句は言われないわけですわね?」
内容としては王都から日帰りできる森に王立騎士団の歩兵が演習がてら行軍するので、それに必要な水や食料を私の魔法で収納して一緒についていくという内容とのこと。
仮に取り出せなくても問題ないように荷馬車も1台随伴するので、私はその荷馬車に乗って一緒に現地に行き、収納したものを問題なく取り出せるか? という実験をするのだそうだ。
「失敗しても問題なし、成功すれば宮廷魔導士にグッと近づくと思うよ」
「……つまりエディが調整してくれたってこと?」
「婚約者の能力を早めに知らしめたくてね」
そういってエディが私に微笑みかけます。
なるほど、私の為にもわざわざ調整をしてくれということのようで、私はこの演習に参加することを了承し、本番で失敗とならないように、実際に随伴するまでにもう少し魔法の練習をすることにしました。




