18.宮廷魔導士に向けて?
エドワード様とは何度か交流をする中で、エディ、リリーと呼び合う仲になった。
彼の興味は最初完全に私がもつ亜空間魔法だけだったけれど、婚約したからにはちゃんとお付き合いするという人で良かったと思う。
婚約者としての役目を果たしてくれて、彼の瞳の色と同じ宝石をあしらったネックレスを贈ってもらった。
私からもお返しに刺しゅう入りのハンカチを贈った。
そんな感じで婚約者との関係は良好を保ちつつ、学園での勉強は宮廷魔導士を目指す勉強に切り替えた。
魔法学科なので、上位の成績を取ることが宮廷魔導士への最も近道であり、メアリー様やドロシーさんにも協力してもらって魔法基礎について復習している。
勉強をさぼっていたわけではないけれど、私は亜空間属性しか持っていないことから、普通の属性や2属性を持つことによる攻撃魔法の性質についてちょっと知識が疎い。
なので、ちゃんと2属性の魔法を行使して攻撃魔法を行うメアリー様とドロシーさんに協力してもらって、どのような原理なのかなど、魔法の基礎を再度確認しているのだ。
「なるほど、やっぱり1属性だけですと、便利なものもありますが ”攻撃” という観点でみると ”うまいこと攻撃にならない” というのが正しいですね」
「えぇ、火魔法だけであれば暖炉に火をともしたり、かまどに火をいれることができますけど、リリア様のように、好きな位置に火を発生させることができませんから、風魔法や土魔法といった別の魔法と組み合わせて初めて魔法として成立するのです」
「攻撃魔法というくくりではどの属性とも相性がいいのは風ですわね」
風魔法は風をつかって別の魔法を遠くに運ぶことができる。
火、水、土、どの属性とも相性がいいのは風ということになる。
「火魔法が使える方が火起こし、水魔法は純粋に飲み水の確保などで一属性でも使っている方がいることは分かりましたが、土や風って使われていますの?」
私に質問にドロシーさんが答えてくれる。
「土魔法は農地の開墾や道路整備で使われることがありますよ。風魔法は作物の受粉を手伝ったりといったことをされていました」
「作物の受粉?」
「最近の宮廷魔道部の研究で分かったことらしいですけど、果物などは蜂によって花をいじってもらうことで実がなるそうで、花の粉、花粉というのが実の素につくと実になるということから、風魔法で蜂の代わりをしているそうです」
宮廷魔導部の研究者は色々な魔法についてや魔法の活用についての研究をしているらしい。
「メアリー様は研究者を目指されるのです?」
「ええ、研究者を目指すつもりよ。彼ともそういう話をよくするわ」
どうやらメアリー様は戦闘ではなく、研究者を目指すらしい。
私は戦闘向きなのではないかと思っている。
魔法について学んでいるのも、今使える亜空間魔法の謎を解き明かしたいというのもあるけれど、魔法防御を無効化する魔法の制御をより正確にしたいためだし、私の魔法なら人も簡単に殺せてしまう。
エディは私の魔法について研究する気でいるので、亜空間魔法について調べるのは彼に任せて、私はこの魔法を極めてみるのが良いだろうと思っている。
後日、エディの家でお茶をすることになった。
そこでは私ははっきりと聞いてみることにした。
「どうすれば宮廷魔導士になれるかって? 普通の人なら難しい問題だね」
「普通の人なら?」
「例えば2属性を持ち攻撃魔法を使える貴族が宮廷魔導士になるのは簡単じゃない」
私はエディの発言を聞いて首をかしげる。
彼自身は2属性を持つ魔導士であり水と土の属性を持つ。
「私も2属性しか持っていないけれど、私の場合研究者として学園在学中に研究論文を発表しているんだよ。水と土魔法を活用した農地整備と収穫量の倍増っていうね」
「その論文で宮廷魔導士になれたの?」
「そういうことさ。研究者であれば魔法をどのように活用するかといった論文や、魔法そのものの原理についての論文を発表することで、向こうからお呼びがかかったり、学園から推薦されたりする」
「じゃあ近衛に配属になるような宮廷魔導士は?」
「その魔法の威力で王族の脅威を排除できるか?というのが課題になる。 年に数回採用試験があって、学園の推薦があれば受けることができる」
なるほど、一つは頭脳を、もう一つは威力を示せということか。
「そして、例外がある」
「例外?」
私が聞き返すとエディは笑顔で頷く。
「特殊属性を持っている場合さ」
それって私なのでは?
同じ世代で私のような特殊属性を持っている人を他に知らない。
「なので、リリーは宮廷魔導士になりたいと学園に申し出れば推薦状をもらえて、卒業後はそのまま宮廷魔導士になれる可能性がある」
「なれない場合があるの?」
「人間性に問題がある場合だね……過去には魅了魔法を持っていた女子生徒がやらかして処刑された。悪いことをしなければ彼女は宮廷魔導士になって研究に協力したりといった人生が歩めたと思うのだけれど」
「そんなことがあったのね」
これはのちに調べたことだけれど、一般に有名な特殊属性として回復魔法、治療魔法があり、そちらは教会に所属することが多いそうだが、私の持つ亜空間魔法のほかに、時空魔法、洗脳・魅了魔法が分かっている属性だそうで、現在宮廷魔導部には洗脳魔法を使える人がいるらしい。
ちなみに、研究対象で普段は魔封じを装着して過ごされていて、研究の際だけ外しているとのこと。
研究に協力的なので閉じ込められたり処刑されたりせずに、現在は洗脳魔法の防御魔道具を構築しているという。
「だから、リリーは普通に生活していれば宮廷魔導士にはなれるんだよ」
「でもそれって研究対象としてよね?」
「まぁそうなるね」
「せっかく王宮に出仕するなら、何か仕事をしたいわ」
「それなら亜空間魔法のさらなる活用を考えないとね。今もリリーだと魔物討伐ぐらいしか任務に就けないから、近衛である必要もないよ。魔法防御を無効化できることを考えると暗殺のほうが向いてるぐらいかも」
「……暗殺」
「まぁ亜空間魔法の活用については一緒に考えていこう。最初は研究対象でも便利な魔法が使えるようになったら何か別の仕事ができるかもしれないし」
エディの言葉に私はとりあえず納得することにした。
まだ学園1年生、今すぐ考えないといけないわけではないし、未来が約束されているなら安心してゆっくり魔法を極めればいいのだし、それについてはエディに協力してもらうことにした。




