表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リリア・テレシア~亜空間魔法の使い手~  作者: シャチ
第1章 幼少期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/5

2.王城の対応とテレシア伯爵家の日常

 ハンストリア王国にある宮廷魔道部に一通の手紙が届いた。

 テレシア伯爵家からの手紙は、当初通常の処理をもって返信をする予定であったが、その内容が「娘が希少魔法を持つかもしれない」という内容であったため、宮廷魔道部副部長へ回されることとなった。

 

 普段宮廷魔道部に来る手紙というのは、大方どこそこの領地で魔物が現れ対処ができないだとかの実務的な話と、各貴族家の次男次女などで魔法に自信があるものからの自推の書簡が殆どであった。

 そのため、このような書簡が貴族家から届くというのは珍しかったのだ。


「記録に残る転移の魔術を使う幼児か……」

「はい、しかも手紙とは別に具体的に何ができ、何ができないかの記録も同封されておりまして」

「見せてくれ」


 手紙とその記録を受け取りルーク・S・リード副部長は内容を確認した。

 手紙の内容はさっと読み流し、同時に提出された記録を確認する。

 

 ・目に見えている範囲のものを瞬時に移動させることができる。

 ・移動は高速移動などではなく、一度消えて娘のもとに出現するようである。

 ・目に見えない範囲の物は移動できない

 ・無詠唱であるが、魔力を使った反応がある


 要約すればそのようなことが書かれていた。


「伯爵はただの親バカで送ってきたわけではないようだ。ただ、まだ生まれて1年もたっていないとなると、幼子(おさなご)の奇跡である可能性も否定できない」

「7歳ぐらいまでは魔力属性は安定しないというやつですか?」

「そういうことだ。実際三十年前侯爵家のご令嬢が回復魔法が使えると騒ぎがあったが、7歳になるころにはその能力は失われ、侯爵家が主に使える水と土の属性に落ち着いてしまった事例があるからな」

「当時は聖人が生まれたなんて騒ぎになったと聞いたことがあります」


 手紙を持ってきた文官の言う通り、過去に類似の事象は起こっていた。

 注視は必要だが、必要以上に騒ぎ立てるべきではないというのが現状の認識である。


「返事を出そう、あまり慌てず気長に様子を確認するようにと。7歳で受ける魔力判定までは状況が変わるかもしれないことも伝えておこう。ただ、王室には情報を共有しておく必要があるだろう。回復については一般的だしたびたび騒ぎになるが、転移となると事例はほぼない。場合によっては保護が必要になるかもしれないからな」


 ルーク副部長からの書簡を受け取ったテレシア伯爵家は、特に慌てたりといったこともなく平穏な日々を送っていた。

 娘に特別な力があるかもしれないとはいえ、クラウスもメディナも三十年前の出来事を前伯爵夫妻から聞いており、あまり騒ぎ立てるべきではないと理解していた。

 また、そのような特別な魔法が使えるからと言って娘を特別扱いすることもなかった。

 一般的な伯爵家のご令嬢として普通の生活を送らせたのである。


 リリアが生まれてから1年もたてば、彼女はつかまり立ちからよちよち歩きをはじめ、次第に言葉を覚えていった。

 言葉を覚え始めてから、彼女は余り転移魔法を使わなくなっていた。

 つたない言葉でも訴えれば乳母やメイドが物を取ってくれたり、それは触ってはいけないなど対応してくれるため、わざわざ魔力をつかってまで何かをしようという事が減ったのである。

 だが、全く魔法を使わないわけではなかった。

 例えば庭で母の膝の上でお茶の時間のふれあいをしているとき、気が付いたら彼女の手にバッタが握られていて小さな騒ぎになったり、与えていないのに手に菓子を持っていたりという事があった。

 バッタについては母メディナの驚いた声でびっくりしたのか大泣きし、手にもっていた焼き菓子はまだ歯が生え始めたばかりのリリアには食すことができず、しゃぶりつくした後でぐずったりした。


 この年、7歳を迎えた長男カディルは火と風の二属性の魔力を持っていることが判明した。

 父と二人、王宮魔道部に出向いての確認であり、テレシア家に伝わる魔力を見事に持っていたことで、カディルはほっとしていた。

 妹のように特別なものはなくとも、貴族として恥ずかしくない魔力量と属性を持ちえたことから、嫡男として何の問題もないというのは非常に重要であった。

 なにより、確実に跡継ぎとなることがクラウスにより確約されたことにより、仮に妹にどのような魔力が宿っていようとも、その地位は盤石である。

 妹が弟でなくてよかったと少しカディルは思っていた。


 そして、リリアが3歳になるころ、カディルは婚約者ができた。

 ウェンサー伯爵家のご令嬢シャーロットとの婚約だ。

 ウェンサー伯爵はハンストリア王国南の海に面した領地であり、海洋貿易の拠点である。

 この婚約は王都の物流拠点であるテレシア家と貿易拠点であるウェンサー家との政略の面が強いものであったが、カディルとシャーロットの仲は良好であった。

 なにより、シャーロットのカディル逃すまじという勢いが強い。

 彼女はウェンサー家の次女であり、年が合う事を理由にカディルと婚約がなった。

 姉はすでに貿易関係の為他国の子爵家に嫁いでおり、他国とはいえ姉より爵位が上の伯爵に嫁げるというのは逃すべきではない婚約と理解していたことが大きい。

 カディル自身もそのことを分かったうえでシャーロットと交流したのである。

 8歳とは言え貴族はしたたかだ。


 そして、たびたび遊びに来るシャーロットは義妹になるリリアを大層可愛がった。

 実家では自分が一番下ではあるが、テレシア家に来ればシャーロットお姉様と慕われれば悪い気はしなかった。

 転移魔法には驚いたものの、7歳まではどうなるかわからないと聞かされ、特に噂を広めたりというようなことはしなかった。

 そのようなことをすれば、この婚約が立ち消えるのではないかという思いがブレーキをかけていた。

 リリアも彼女にはよくなついており、一緒に遊んでくれる義姉との時間はとても楽しそうであり、両家の交流は順調そのものであった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ