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7.ドワーフの村へ

 レオニードたちは南西に進み、ドワーフたちの住んでいるアルム山脈の近くに来ていた。

 山並みの奥には、まだ雪の残るアルム山脈が、昇ったばかりの朝日を反射して輝いて見え、その手前には小高い山々が横たわっている。

 一行はさらにその山々に向かった。


 見晴らしのいいところでオズナが馬を止めると、皆がオズナの横まで馬を進める。

 

「このあたりの山のふもとに、ドワーフたちが掘った坑道の入口があるはずじゃ」


「坑道ですか?」

オズナの言葉にレオニードが聞いた。


 レオニードは、目を凝らして眺めてみる。

 しかし山の手前側には林が広がっているので、もっと近くまで行かなければ入口は見つかりそうもない。


「その坑道は、山のこちら側から向こう側まで通じておる。その向こう側の、人間があまり訪れないところにドワーフの村がある。でも彼らは、人間の町に製錬した金属を売りに行くこともあるので、そのときはその坑道を通ってこちらに抜けて来るはずじゃ」

「他に道は?」

「あるにはあるが、あの山をぐるっと回るから、もう二、三日掛かってしまう」


「その坑道は、この荷車は通れますか?」

ポンザがオズナに聞いた。


「ああ、ドワーフたちも金属を売りに行くときは荷車を使うからな」


 辺りを見回していたアミルが、指をさす。

「あそこに、荷車のワダチがあります」


「おお、さすがじゃな。やはりエルフはよいハンターじゃ」

オズナはそう言うと、そちらに馬を向けた。


 そのワダチは深く、何回もここを通っている事をうかがわせ、今いる荒れ地から山のふもとの林の中に向かっている。

 しかし、そのワダチは雨などで跡が消えかかっていた。


「でも最近は、ここを通ってないようですね」

アミルが言った。

 

「他に新しい坑道を掘ったのかもしれんな。ドワーフたちは穴を掘るのが好きじゃで。しかし手がかりがこれしか無い以上、このワダチを辿たどって行くしかないか」


「行きましょう」


 レオニードがそう言って、彼らはそのワダチを辿って馬を進めた。


 しばらく進んでそのまま林の中に入り岩山のふもとに来ると、古そうな坑道の入口があった。

 岩山なので落盤などが起こりにくいのだろう、木で組まれた天井や柱などはなさそうだ。

 

「おーここじゃ。三十年前に来た時は、この坑道はまだ採掘中じゃったが、ワダチを見ると新しい坑道を掘っているのかもしれんな。しかし、この坑道を抜けた所にはまだドワーフたちの村があるはずじゃ」


 オズナがそう言うと、ポンザは不思議に思って聞く。


「あれ? そういえば、ドワーフたちは鉱山の中に暮らしているものだとばかり思ってました」

「ドワーフたちにも種族があってな、北の寒い地方に住んでいる種族は、鉱山の中で暮らしておる。外は寒いし、火を燃やす木も少ないからじゃ。じゃがこのあたりの種族は、比較的暖かいので外の木の家で暮らし、その都度鉱山に入って仕事をしておる」

「なるほどー」


「では入りましょう」


 レオニードがそう言って馬を出そうとすると、オズナが制止する。


「その前に一つ注意しておかなければならん。ドワーフたちは、ちと、怒りっぽくて頑固じゃ。丁寧な言葉づかいで、下手に出る必要がある」

「そうなんですか? わかりました」


 坑道の入口は、背の低いドワーフたちが作ったにしては結構大きかったが、うす暗い場所では頭をぶつける可能性もあるので、レオニードたちは馬を降りて引き、歩いて坑道に入ることにした。

 坑道に入ると中は真暗だ。ドワーフが作業をしているなら、明かりが灯っていて明るいのではないかと思っていたのが外れた。松明を掛ける金具もあるが、埃をかぶっていて最近使われたような形跡がない。


 レオニードは少し入って一旦止まり、松明を作りに外に出ようかと思っていると、だんだん目が慣れてくる。

 周りが少し明るいので、彼はどうしてかと思って見ると、レオニードの腰に付けた、火の国で貰った聖なる火のランプが辺りを照らしてくれている。


 他の皆もそれに気が付いた。


「これは好都合だ。これでなんとか見えそうだな」

エマルが言った。


 彼らは坑道の奥へとゆっくりと進んだ。


 しばらく進むとアミルが身構えた。

「この先に、何かがいます」

皆にぎりぎり聞こえるぐらいの声で言った。


「え?」

ユシカが怖そうに身構える。レオニードとエマルは剣に手を掛けた。


「ドワーフ?」

レオニードがアミルに聞いた。


「違うかもしれない。ドワーフはもっとうるさいから」


「そうじゃな。奴らはドタドタと歩くし、中には一日中しゃべっているのもおるからの」

と、オズナ。


「ドワーフでないとしたら何ですか?」

レオニードが聞いた。


「もしかすると、ゴブリンが巣くっておるやもしれぬ」

「ゴブリン!?」

「そうじゃ。小鬼のゴブリンじゃ。奴らは臆病じゃから、圧倒的に数で有利な場合でなければ襲ってこない。もし同じぐらいの数なら、こちらが隙を見せなければ大丈夫じゃ。しかし、注意して行こう」


 ゴブリンというのは人間の背丈の半分ぐらいの、いわゆる魔物だが、武器を持っていて自分たちが有利だと思うと襲ってくる。

 そして人間や動物を食べるのだ。


 しばらく進むと、右側が崖になった場所に出る。明かりが届かないので、どれぐらい深いかはわからない。

 彼らは崖から踏み外さない様に、注意しながら歩いた。

 

 すると、アミルが再び静かに言う。

「囲まれている」


「なに?」

と、エマル。


 皆も辺りを見回したが、ゴブリンは光の届かない場所から遠巻きに見ているのだろう、何も見えなかった。


「数が多そうなのに、同じ距離を保って襲ってこようとはしないわ。なぜかしら」


「そうか、その火じゃ。聖なる火が奴らを遠ざけておるのじゃ」

オズナが、レオニードが腰から下げているランプを見て言った。


 その時、左の崖の上から石が落ちてくる音がした。

 

「前に、早く!」

レオニードがそう叫び、皆は速足でそこを抜ける。


 一番最後にいたポンザのすぐ近くに、人の頭ぐらいの石が落ちてきた。

 

「ゴブリンどもの仕業か?」

エマルが聞いてきた。


「わからん」

と、オズナ。


 すると、レオニードの腰に掛けているランプが、またたきだす。

 

「ランプに油を足さないと」

ユシカが焦って言ってきた。


「来る!」

と、アミル。


 レオニードは腰からランプを外し、ユシカに渡す。

「油を足してくれ」

そう言うと、レオニードは剣を抜いて、いましがた通ってきた道の方に少し戻り、剣を構えた。


 ユシカはランプを受け取って、すぐに荷車の樽の方に向かう。

 エマルは前方を守り、アミルは荷車の上から、弓を構えた。

 そのとき数匹のゴブリンが飛び出してきた。目が大きく、体には毛が生えているようだ。

 レオニードは飛び掛かってきた一匹を切り、アミルがもう一匹を射抜いた。

 エマルも前方で一匹を切り倒す。


 そこで周りが明るくなった。ユシカがランプに油を足して、聖なる火の勢いを強くしたのだ。

 光が強くなったおかげで、遠巻きにしていたゴブリンたちの群れが見えた。見えただけでも百匹近くはいそうだ。

 ゴブリンはまぶしそうにしながら後ずさって、再び闇の中に離れていく。


「今のうちに前に進もう」

オズナがそう言って、彼らは前に進んだ。


 やがて道は普通の坑道に戻り、さらに進むと坑道の出口らしき扉があった。

 その扉は、木と鉄で出来ていて頑丈そうだ。

 

 一番力が強そうなポンザがそれを押したり引いてみるが、びくともしない。

 

「どうやって開けるんだ?」

ポンザが言った。


「ここに鍵穴があるわ」


 アミルがそう言って指したところを見ると、扉の端の金属でできたところに小さな穴がある。


「鍵ですか? 噂では聞いたことがありますが、見るのは初めてです」

とポンザ。


「高価じゃからな、この地域では金持ちの宝物庫ぐらいにしか使われておらん」


 オズナがそう言うと、レオニードが聞く。


「でもなんでこんなところに?」

「ドワーフどもが、ゴブリンが出てこない様に、見よう見まねで作ったのではないか?」

「なるほど」


「でもどうします? 簡単には開きそうもないですよ」

と、エマル。

 

「そんな複雑な構造ではなさそうだし、道具があればなんとかなりそうだけど」

アミルがそう言って、辺りを見回す。


 そして自分の服を見て、旅用の外套を留めていたピンを外した。エルフが作ったと思われる、金属製のきれいなピンだ。

 アミルはそれをその鍵穴に入れて、なにやら動かしていた。


 ガチャ。


 すると音がして、その扉が開いた。


「すごいわ、アミルさん」

と、ユシカ。


 その扉を開けると、外からまぶしい光が入ってきた。

 後ろから遠巻きについて来ていたゴブリンたちも、その光を見て、あきらめて坑道の奥の方に戻って行く。

 

「また閉めておかないと、日が暮れたらゴブリンどもが外に出てくるな」

その様子を見てエルマが言った。

  

 レオニードたちはそこから外に出ると辺りを見回した。どうやら山の反対側に抜けたようだ。

 アミルはすぐに再び鍵を掛けたようだ。

 

「昔は、ここにドワーフたちの村があったのじゃが」 

と、オズナ。


 すると、遠くの方を見ていたポンザが気が付く。

「向こうに煙が上がっています」


 ポンザが指した方を見ると、確かに煙が上がっている。しかもあれは煙突の煙の様だ。

 今出てきた坑道とは少し離れた向かいの山のふもとに、そのドワーフたちの村はあった。

 どうやらドワーフたちは、今の坑道を捨てて、あちら側に移ったようだ。


「遠くに移住してなくてよかった。では行きましょう」


 レオニードがそう言い、皆が馬に乗って煙の出ている方を目指した。



 レオニードたちはドワーフの村の入口にやってきた。

 入口から村を見渡すと、村の建物は丸太を組んであって、高さは普通の人間の家より少し低いようだ。

 それ以外は他の国の家と大差ない。


 そこに少し離れた所を、ドワーフが一人歩いて来て、レオニードたちの少し先を通り過ぎようとした。

 背が小さく、たっぷりとした髭を生やしている。

 話に聞いていた通りだ、とレオニードは思った。


 レオニードが馬を降りて、彼に声をかけてみる。

「すいません」


 でもそのドワーフは、レオニードたちの方をチラッと見たが、そのまま行ってしまった。


「あれがドワーフなんですね?」

レオニードはオズナを見て、少し困った顔をした。


「そうじゃ」


 また、もう一人が歩いて来たので、レオニードが再び声をかける。

「すいません」


「なんじゃい」

今度は応えてくれた。


「こちらのおさの方と話したいのですが」


「なら急いだ方がいいな。今、坑道に入るところだ」

そのドワーフは顔で村の奥の方を示して言うと、またもどこかへ行ってしまった。


 ドワーフが顔で示した所には、山のふもとに坑道の入口があり、その近くに大勢のドワーフが集まっているようだ。

 

「しょうがない」

そう言うと、レオニードたちは馬を引いて村の中に入り、その集団の方に行った。


 レオニードが声をかける。

「すいません」


「ん? なんじゃい。勝手に入ってきおって」

一人のドワーフが応えた。


「今、入口の近くにいた方から、ここの長の方がこの中にいらっしゃると聞きまして」

「ああ、それで?」

「ここの長の方に会いたいのですが」


「わしだが、何の用だ」

そう言うと、そのドワーフは腕を組んだ。


「実は……」

レオニードはドラゴンのこと、女神のお告げのこと、聖なる金属を別けて欲しい事を話した。


「断る」

ドワーフの長は、きっぱりと言ってきた。


「え?」

「そんな大切なものやれるか。帰れ」


 するとアミルが口を開いた。

「やはりドワーフはケチだな」


「なにをー!? このとんがり耳が」

そのドワーフが怒った。


「本当のことを言われて、怒ったか?」

「我々はケチではない」

「では、すこしぐらいくれてもいいだろ?」


 ドワーフの長は、いまいましそうにアミルを見て、どうするか考えているようだ。

「では試練を受け、それをこなせたら別けてやろう」


 レオニードたちは目を見合わせる。うまくアミルの挑発に乗ってくれたようだ。少しは可能性がでてきた。

 

「どんな試練ですか?」

レオニードが聞いた。


「あそこに見える岩だ。あれを割ることができたら、別けてやる」

そこを見ると、ドワーフの背よりも大きい岩があった。


「どうやって割ってもいいですか?」

「いいとも」


「私がやります。斧を貸してもらえますか?」

ポンザがそう言って前に出た。


 ドワーフの長は、部下に斧を持ってこさせる。


「おいおい、斧であれが割れるか?」

エマルがポンザに聞いた。


「やるしかないです」


 レオニードたちとドワーフの長を含む何人かがその岩の前に向かった。

 他のドワーフたちは坑道に入って行く。


 ポンザが斧を持って、そのドワーフの長に聞く。

「一回試してもいいか?」


「何回でもいい。でも早くしてくれよ」

ドワーフの長が再び腕組みをして言った。


 ポンザは試しに、斧を力いっぱい振りかざしてみた。

 でも岩の表面が少し削れただけだ。


「どうした?」

ドワーフが笑っている。


 それを見てユシカがレオニードに耳打ちした。


 レオニードがうなずく。

「よし、それをやってみよう」


 ユシカは油の入った樽に行き、桶に油を入れて持って来た。

 樽は三樽あるので、余裕はある。

 

 レオニードが手伝って、それを岩の上から垂らし、岩の表面に油をしみこませる。

 さらに岩の下の辺りにも撒いた。

 そこに火打石で火をつけると、岩の表面に火が燃え広がる。

 

 ユシカとレオニードは油をその岩の中央付近にさらにかけて、火の勢いを増した。そのあと、岩が十分に熱せられたのを見て、今度は桶に入れてきた水をかけ、急激に冷やした。

 するとピシッと音がして、その岩の表面に裂け目が入る。

 

 それを見てレオニードが、

「ポンザ、あの筋を狙ってみろ」

と言ったので、ポンザはその通り斧で打ち付けた。


 すると、その筋が広がり岩が割れた。


 ドワーフたちが驚いている。


「なんということだ!」

ドワーフの長はそう言ってから、何か考えているようだ。

「うーむ」


 それを見たオズナが言う。

「約束は約束じゃな」


「うーむ、わかった、しょうがない。聖剣を鍛えるのに必要な分の聖なる金属はやろう。でも一つ頼みを聞いてくれ」


「どんな?」

レオニードが聞いた。


「ドラゴンは普通宝をため込んでおる。ドラゴンを倒したら、その宝の半分をくれぬか?」


 レオニードたちは顔を見合わせた。しょうがなさそうだ。

「わかった」


 レオニードがそう言ったのを聞くと、ドワーフの長は家に入り、しばらくすると出てきて、こぶし大の聖なる金属を持って来た。

「これだ」

そう言って、レオニードに渡してくる。


「ありがとう」

レオニードが礼を言うと、そのドワーフは念を押した。


「約束だからな。忘れるなよ」

そういうと、仲間に

「さあ仕事だ」

と言って坑道に入って行った。


「アミル、ユシカ、ポンザ、みんなありがとう」

レオニードは皆にお礼を言った。


 そして、レオニードはその聖なる金属を改めてよく見てみる。聖剣と同じような色の金属の塊だ。


「これは何の金属なんでしょう?」

レオニードがオズナに聞いた。


「わしも詳しいことはわからんが、神からもたらされたという話もある」


 アミルが何か言おうとしたがやめたようだった。


「では、次は聖なる土じゃな? ここから近い。さあ行こうではないか」

そういうとオズナは馬にまたがった。


 ポンザは、斧を返そうと思ったが、ドワーフたちが皆坑道に入ってしまったので、そのまま記念に斧を貰ってしまうようだ。

 レオニードたちは、次の土の国を目指して旅立った。




 サマ王国の王城では、サマ王が執務室の中をうろうろしていた。焦りを隠せないようだ。

 その部屋の中には大臣と騎士団長もいる。

 

 実は先ほど騎士団長から、チェスカの村人たちが突然姿を消したという報告を受けたのだ。

 まだだいぶ人数がいたはずだから、全員がドラゴンに食われるには少し早すぎる。

 しかし餌がなくなったら、次は王都にドラゴンがやってくる可能性が高い。


「全員ドラゴンに食われたのか!?」

サマ王が聞いた。


「少なくとも全員ではなさそうです。血の跡もありましたが、テントなどもなくなっていましたので、ドラゴンに襲われた後に、逃げ出したのではないかと思われます」

騎士団長が応えた。


「いったい、どこへ行ったのだ? ドラゴンがここに来てしまうではないか」


 今まで話を聞き、考え込んでいた大臣が口を開く。

「まあいずれにせよ、いつかは、あの者たちは食い尽くされて、その次はここへ来ることになったでしょう。ドラゴンからすれば、あそこからは目と鼻の先ですから」


 王様が歩きまわるのをやめて、大臣と騎士団長の二人に聞く。

「では、どうすればよい? 例の大弓はもう出来たのか?」


「本体は出来上がりました。今は矢を何本か作っているところです。なーに、ドラゴンごとき、倒してしてご覧に入れましょう」

騎士団長が胸を張った。


「大丈夫なのだな?」


「はい。早速、大弓を城壁の上に配置させます」

そう言うと騎士団長は、部屋を出て行った。


 サマ王は、残っていた大臣に聞く。

「本当に大丈夫なのか?」


「もしそれでだめなら、この国は終わりです」



 騎士団長は騎士団の詰所に行くと、一人の部下に命じる。

「おい、城壁の上の見張りを増やして、昼夜ドラゴンが来ないか監視させろ」


「はっ」


 次に他の騎士たちに命令する。

「おい、お前たちは例の大弓を城壁の上に配備しろ」


 騎士と兵士たちは出来たばかりの大弓を出してきて、城の中庭を取り囲む城壁の上部の、広くなった所に吊り上げている。

 

 騎士団長はその作業を見ながら、

「ドラゴンめ、来てみるがいい」

と言って、空を見回した。




 ドラゴンは空に舞い上がった。

 そして、いつもの様に住処すみかの周りを旋回してみる。

 すると、北の方から大勢の人間たちがやってくるのが見えた。

 

 戦争というやつか。人間同士の争いには興味はないな。ドラゴンは、始めはそう思った。

 しかしよく考えてみると、戦争で人同士が死ねば、自分の食べ物が減ることになる。

 この地域と北の地域の人間を食い尽くすには、二十年ぐらいはかかるだろうと思っていたが、これでは十年ぐらいで尽きてしまうかもしれない。

 そこでドラゴンは、北からやって来る軍勢の方に向かった。


 そこには人間が五千匹ぐらいはいた。上空で旋回していると、下から矢を放って来たが、もちろん届かない。

 ドラゴンはまず、その軍勢の先頭付近に火炎を吐いて、彼らがそれより南に行かない様に足止めした。

 炎は五分ぐらいは燃え続けているはずだ。

 次にドラゴンは、その人間たちの中ほどに降りると、馬に乗ってキラキラ光る鎧を着ていたやつを食うことにした。

 ついでにその周りのやつも食う。五匹ほど食ったところで、再び空に舞い上がった。

 今日はもう腹がいっぱいだ。

 

 上空から見ていると、その軍勢はバラバラになり北の方に逃げて行く。

 このままおとなしく北の地で待っていろ。そのうち行くから、とドラゴンは思い、自分の住処の方に帰っていった。

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