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彼女は、真っ先に俺のもとへとやってくると、俺と握手を交わしてきた。
あまりに突然の行動に、目の前の白衣の女性
に身を任せていると、彼女は満面の笑顔で話し掛けてきた。
「こんにちはココ君、待っていたわ」
まるで、すべてを見透かすかの様な切れ長の目と、不敵な笑みを浮かべる彼女。
そんな彼女に見とれていると、エミリが声を上げた。
「ちょっとココ、ぼーっとしてないで挨拶をし
なさいっ」
良く通る声は俺の耳にしっかりと届き、俺は我に帰った。
「あ、えっと初めまして猫宮ココです」
「いいえ、こちらこそ初めまして。
私はこの【エイリアンズ・ゲート】で研究者
をしている【四方 奏】
です」
四方さんは笑顔でそう語りながら、俺の手をぎゅっと握りしめてきた。
エミリとは違い、妙に冷たい手に心地よさを
感じつつ、改めて目の前の四方さんに目をむけた。
四方奏と名乗った白衣の女性は、黒髪長髪の 女性で、身長もすらっと高く、モデルの様な体型をしていた。
エミリといい勝負が出来そうなスタイルだ。
すると、そんな四方さんは今度はエミリの方 へと向かっていった。
そうして、四方さんはエミリとしばら会話をした後、話の区切りがついたのか、今度はエミリがやってきた。
エミリは何やら真剣な表情をしていた。
そんな異変に気付いたのもつかの間、エミリは突然、俺に抱き着いてきた。
あまりの突拍子もない出来事に俺はなすがままでいた。
もしかしたら、別れの挨拶をしに来てくれたのかもしれない。
そうして、しばしの抱擁の後。
エミリと何か会話をするわけでもなく、俺はただただ抱き着かれていた。
すると、エミリは突然俺から離れた。
彼女は笑顔になっており、目は少しだけ潤んでいる様に見えた。
「じゃあ私はここで、元気でやるのよココ」
エミリは少しぎこちない笑顔でそういった。
そんな彼女の笑顔に俺も思わず苦笑いになった。
しばしの別れ、長年寄り添うように生きてきたエミリとの時間が、ついに途切れてしまう事に、思いのほか、寂しく感じていた。
「まぁ、突然の事で色々わかんねぇけど、こん
なの、今に始まった事じゃないからな。
せいぜい与えられた運命を存分に楽しむとす
るよ」
「えぇ、あんたなら大丈夫よ、ココ」
「あぁ」
「元気でね、ココ」
「エミリも元気でな、ばあちゃんと仲良くやっ
てくれ」
「もちろんよ……あ、そうだ、これ」
「ん?」
そう言うと、エミリは肩にかけているバッグから下駄を取り出して、俺に手渡してきた。
「おぉっ、下駄だ」
「あんた、本当に好きよね、下駄」
「音がいいんだよ音が、カランコロンってな」
「そうね、それからもう一つ」
そうして、彼女は風でたなびく金色の髪を一度かき上げた。
「これは、おばあちゃんが言っていた事だけど
ね」
「あぁ、なんだ?」
「これから向かう先で、ココを待ってる人がい
るんだってさ」
「俺を待ってる人?ここに?」
「そう、あんたにとって、とても大切な人達な
んだって……」
何やら意味深なセリフを言った後、エミリは名残惜しそうに手を振って見せた。
そして、彼女は二度と振り返る事なく離れていった。
それは、また会えるから安心しているからなのか。
それとも、ドラマティックな俺の抱擁を背中で待っているのか。
まぁ、とにかく、どこか物悲しい光景に俺はただ立ち尽くした。
すると、俺は突然肩を叩かれ、思わず声を上げてしまった。
「うわっ!!」
振り返ると、そこには四方さんがいて、不思議そうに俺を見つめていた。
「どうしたのココ君、そんなに驚いて?」
「い、いやなんでもないです」
「……ふーん」
四方さんは、どこか不満げな様子で俺を見つめてきた。
「あの、なんですか?」
「いや、ココ君って、意外と礼儀正しいのね」
「それは、どういう意味ですか?」
「いやぁ、見た目の割にはちゃんと敬語使って
くれると思ってね」
一体、俺はどんな風に見られているのだろうか?
「そりゃ、目上の人には敬語じゃないと色々と
大変なの知ってるんで」
「あら、そう」
「そうです」
「そ、じゃあ行きましょうか」
「あ、はい」
エミリとの別れを告げた後。
俺は四方さんに連れられて、入門ゲートの近くにある扉へと向かい、その中へと入った。
屋内は少しひんやりとしており、殺風景な廊下を歩くこと数分。
ようやく扉が姿を現し、その扉の前で四方さんは立ち止まった。
よかった、このまま異世界にでも連れていかれると思っていたから、安心した。
だが、安心したのもつかの間、扉に掲げられたプレートによって、俺の心はすぐにどん底へと叩き落される事となった。
【第十七実験室】
扉のプレートにはそう記されていた。
その六文字を見た瞬間、拘束台にドリルやメスやチェンソーやら、と、物騒な想像で頭が一杯になった。
いや、椅子に縛り付けられて電流を流されるというのも……
いやいや、まさかそんな事があるわけない。
そう思い、俺は四方さんに話し掛けた。
「ま、まさかとは思いますけど、解剖とかされないですよね?」
恐るおそる、そんな言葉をつぶやいた。
すると、四方さんはまるで、フクロウの様に首だけを向けてきた。
不気味を通り越して、もはや人間業に思えない四方さんの行動に怯えていると、四方さんは不気味な笑みを浮かべた。
「ふふふ、ココ君は解剖されたいのかな?」
「ちょ、ちょっと、怖い事を言わないでくださいよっ」
「うふふ冗談よ、解剖なんてしないわ、さぁ、安心して入ってきて」
「は、はぁ」
不安要素を残しながらも、俺は四方さんの後をついて部屋に入った。




