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空気の読めないエミリに、俺は呆れて車窓に目を移した。
そうだ、こんなネガティブに導いていく様な
人間とは関わりあわないのが得策だった。
そう思い、車窓から外を眺めると、晴天のおかげか海がキラキラと輝いており、それはもう絶景だった。
そんな光景を眺めながら、タクシーは軽快に飛ばすこと数分。
タクシーが少しづつ減速していくのを感じた
俺は前方を確認した。
タクシーの前方には、検問所らしき建物が見えた。
そして、検問所らしき場所の手前で、タクシーは停車した。
すると、検問所らしき建物から、鬼の様に険
しい顔をした男が飛び出してきた。
彼は、パツパツの制服を着用し、プロレスラーの様な巨体を動かしながら、ノッシノッシと大股で歩いて来た。
まるで個室のトイレから出てきた様な登場の仕方に、少なからず嫌な予感がした。
そして、警備員はタクシーの近くまでやって
くると、運転席の車窓をコンコンと優しく小突いた。
体格の割に、とても繊細なノックをする警備員に、少しだけ恐怖心が和らいだ。
だが、不安は拭えず、俺は思わずエミリに話しかけた。
「なぁ、エミリ、俺は刑務所にでも入れられる
のか?」
「ほんとね、ほら見て、警備員がものすごい顔
で見てるわよ」
まるで、子どもの様にはしゃぐエミリは、俺
にすり寄りながらそんな事を言った。
つくづく人にくっつくのが好きなものだ、と、呆れながらエミリをはねのけた。
すると、エミリはなぜか嬉しそうに笑った。
「おい、何が面白いんだよ」
「ココはビビりだなぁ、と、思ってさ」
「ど、どこがビビッてる様に見えるんだよ」
「ふふっ、ビビりビビりー、ほれほれ」
エミリは、まるで俺をからかう様に俺の頬を
ツンツンしてきた。
そして、俺のほっぺたを大福と例えながら、
まるで、中の餡をぶちまけさせるかの様な勢いでつついてきた。
「おい、やめろっ」
「ひゃーっ!!」
たまらず怒鳴るとエミリは勢いよく離れた。
そして、なぜかエミリは嬉しそうな笑顔を見
せながら頭を守る仕草を見せた。
そんな他愛もない戯れの最中、タクシーの運
転手が、額の汗をハンカチでぬぐいながら話しかけてきた。
「お客さんちょっといいかい?」
運転手の言葉に、エミリが敏感に反応して返
事をした。
「は、はい、なんでしょう運転手さん」
先ほどまでキャッキャ、ウフフ、と騒いでい
た人間が、こうも簡単に取り繕う事が出来るものかと感心していると、エミリは真面目な顔をしながら、乱れた髪を整えていた。
「あのね、タクシーはここまでだから」
「あ、はいわかりました、じゃあ少しだけ待っ
ててもらえますか、帰りもお願いしたいで」
「はいはい、わかりました」
タクシー運転手は、その止まる事のない汗を
拭きとりつつ、笑顔でそういった。
やがて、俺たちはタクシーから降りると、厳
しい顔つきの警備員が歩み寄ってきた。
近くで見ると、警備員の大きさがより一層わ
かり、俺は思わず身構えると、エミリはすぐに俺の背後に隠れてきた。
険しい顔つきの警備員を前に、俺は思わず生
唾を飲んだ。
そして、それは、エミリからも鮮明に聞こえ
てきた。
まるで、今にも何かが始まりそうな緊張感の
中、ようやくといっていいほど警備員が口を開いた。
「【猫宮ココ】さんと、その保護
者の方ですね」
まるで、楽器の様に響き渡る低音ボイスに、
エミリはすぐに反応した。
そして、何を思ったエミリは突然俺の前に立
ちはだかった。
「はい、私が保護者のエミリで、この子がココ
です、間違いありませんっ」
「では、入門口へと案内します」
そういうと警備員は先導し始めた。
淡々とした様子の警備員についていくこと数
分。
検問所を抜けて、しばらく歩いた所に入門口の様な建造物が見えてきた。
どうやらあそこがギフトガーデンへの入り口
らしい。
すると、そんな大きなゲートの近くに、白衣
を身にまとった女性がぽつんと立っていた。
こんな炎天下の中よく待っていられたな。
そう思っていると、彼女は小走りで俺たちの方へと向かってきた。




