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20xx年、エイリアンズゲートにて。  作者: しゃこじろー


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 季節は春、今日の天気は晴れ。


 気温は十七度という肌寒い今日この頃。


 俺を乗せたタクシーが、とある場所へと向かっていた。


 車内では、小太りの中年男性が白シャツを汗でにじませながら運転しており、ラジオからはアイドルソングが流れていた。


 運転手は、指でリズムを取りながら上機嫌で運転している。

 一体、何がそれほど彼を上機嫌にさせるのだろう?


 そう思い、車内に響くアイドルソングに耳を傾けてみた。

 すると、耳に届いてきたのは可愛らしい女性の声と、心地良いリズムだった。


 確かに悪くはない、そして、このアイドルは歌が上手い。

 そんな、特徴的な声と表現力に、俺も思わず魅了されそうに……

 

 いや、そんな気分ではない。


 そうだ、俺はこの曲にノッている場合では無かった。


 そう思い、俺は手元にあるパンフレットへと意識を戻した。


 【★エイリアンズ・ゲートへようこそ★】


 そう書かれたパンフレットには、巨大なタワ

ーと、未来都市を彷彿とさせる街並みの背景が印刷されていた。


 その、印象的な光景に、俺はほんの少しだけワクワクした。


 【エイリアンズ・ゲート】


 そこは、たくさんの【宇宙人】が暮らしているという、今となっては常識となった場所。


 そんな、ワクワクのパンフレットの中身を見ようとした矢先、俺の持っているパンフレットが宙に浮いた。


 いや、正確に言えば浮いたのではなく、隣に

座る彼女によって取り上げられた。


 彼女の名は【エミリ】


 フルネームすらわからない異邦人だ。


 彼女は、俺が中学生になったばかりの頃、居候としてやってきた。


 かれこれ三年程の付き合いになるが、エミリから故郷の話を聞いた事がないし、彼女から話す事もなかった。


 まるで、女スパイだな。


 そんな、異邦人エミリは流暢な日本語で喋りかけてきた。


「ねぇねぇ、そんなもの見てないで私の相手し

 なさいよ」


 日本語をかなり勉強してからこっちに来たと

いう彼女。


 確かに、言葉が流暢なのは感心する。


 だが、どうせならもう少し片言の方が可愛げ

があった。


「うるさい、パンフレットを返せエミリ」

「あらあら、なんて怖い顔をしてるのよココ」

「はぁっ!?」


 こ、怖い顔だとっ!?


 全くエミリの奴め、俺のコンプレックスを刺激してくるなんて、本当に嫌な奴だな。


「べ、別に怖い顔なんてしてないだろ、早くパ

 ンフレットを返せよ」 

「えー、私には怖い顔している様にみえるけど

 なぁ」

「いや、それはだな……」


 まぁ、不機嫌な理由ならある。


 なぜなら、目が覚めたらタクシーの中。


 しかも、知らない場所へと連れてかれてる途中だ。


 だが、だとしても俺は断じて怖い顔なんてしていないさ。


 そうさ、怖い顔っていうのはネガティブなものを引き寄せてしまう恐ろしい顔だ。


 だから、いつだってポジティブに、笑顔で考える事が大切なんだ。


 そう思い、俺は必死に笑顔を取り繕った。


 しかし、そんな俺の顔を見つめるエミリは、いぶかしげに目を細めていた。


「な、なんだよエミリ、その目は?」

「ココ、その笑顔は嘘よ」


 ずばり、エミリは俺の嘘を見抜いた。


「よ、よくわかったな」

「あんたの笑顔はすぐに嘘だってわかるの」


「なんでわかった?」

「わかるものはわかる。っていうか、怒ってな

 いのなら、もしかして緊張してるの?」

「はぁ?」


 一体何をいってるんだこいつは。


 そして、訳もわからぬ憶測に、俺の頭には怒りの感情が沸き上がってきた。


 しかし、それを爆発させた所で何かが好転す

るわけでもないと悟っている。

 だから俺は、加熱された脳内を冷やす様に、ため息をついた。


「いや、緊張なんてしてないが」

「そっか、緊張してるんだぁ、可愛いなぁ」

「おい、話聞けよ」


 俺の気持ちを分かった様な口調をするエミリに、貧乏ゆすりの速度がトップギアに入った。


 もう我慢の限界、今まさに口を開き暴力的な言葉が出かかった。


 しかし、その瞬間エミリという異邦人は何を思ったのか、いきなり俺に抱き着いてきた。


「なっ、お前なにしてんだっ!!」


 俺はすぐさまエミリをはねのけると、彼女は 

かわいらしい声をあげながら、シートの上で体を丸めて楽しそうに笑った。


「おい、本当に何がしたいんだよ」

「いいじゃない、これくらい」


「よくないだろっ」

「でも、ココが緊張して可愛いと思ったん

 だから、抱き着いただけよ」


 ウインクしながら、おちゃめな事を言うエミ

リは愛らしく、思わず「許す」という言葉が脳内を駆け巡った。


 だが、暴力的な口だけはそれを許さないよう

で、すぐさま言葉が飛び出した。


「ふざけるのも大概にしろ、俺はお前の抱き枕

 じゃないんだぞっ」

「えー、でも日本のことわざに「かわいい子に

 はハグさせよ」っていう言葉があるじゃな

 い?」


 おいおい、何を言ってるんだこいつは。


「いいかエミリ、その誤った言葉を二度と口に

 すんな、つまらんぞ」

「何よ、じゃあ何が正解なの?」


「かわいい子には旅させろだ、ほら「獅子はわ

 が子を千尋の谷に落とす」って言葉があるだ

 ろ?」

「ふーん、知らないっ」


 興味のない様子で返事するエミリ。


「おい、俺をからかってるのか?」

「えへへ、そんな事ないよ、ごめんごめん」


 エミリは、怒る気が失せる笑顔でそういう

 と、ようやく静かになった。


 全く、なんなんだ一体……

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