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ダンジョン街のミミとビビ ~世界はダンジョン産で満たされる~  作者: 石火
第一章:境界線の向こう

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第二話 幕間 メイリン

メイリンサイドです。

 私はハーフリングの女の子メイリン、十三歳になったばかりよ。半年前に神様のお言葉によってダンジョンコアを見付け、町を出てもう七日になる。


 小柄で足の速いハーフリングの私なら、地図の場所なんて直ぐに辿り着くと思ってたの。しかし現実は違っていたわ。得意な隠密と休憩などに使える気配遮断の魔道具で、道中はある程度安全に移動できた。しかし常時隠密のスキルを使うことも出来ず、姿が露になるときに限って男に目を付けられる。


 ハーフリングは見目が良いので仕方ない。特に私は町一番の美人だと評判のハーフリング、声を掛けたくなるのも道理だ。なので最初は「ありがとう」「大丈夫です」など言っていたが、いい加減面倒になり無視をすることにした。するとしつこく食い下がる者は減ったが、罵声を浴びせられる様になった。


 「ブスが調子乗るな」「性格悪いから目つきが悪い」など言いたい放題だ。まあ、「負け惜しみ格好悪い」と言ったら追い掛けられたけど、逃げ足には自信があるからね。


 そんな可愛い私にも限界がやって来た。速足での長距離移動に加え、追い掛け回され逃げるなどの負担が全て足にきたのだ。このまま歩き続けるのは難しいと考え、街道脇にあった大きな木の木陰で休むことにした。するとまた声が掛かる、モテる女はしんどいわー。


「お姉さん、お怪我してるの?大丈夫?」


「小さいからって甘く見ないでよね! って、あれ?」


 声は子供っぽく可愛らしく、今まで声を掛けてきた男とは違っていた。あれ? ケットシーがなんで? と疑問が尽きない。すると「ビビが癒しの踊りしてあげるね」と、踊り出す。軽やかなステップを呆然と見る。すると水が差し出される。ママが言ってたわ、ハーフリングとケットシーは共存して暮らしている国もあるって。喉も乾いていたしゴクゴクと喉を潤した。


 さっきの子もそうだったけど、こっちの子も金の目をしている。幸運を運ぶという金の目に私は興奮し、なんとか御近付きになれないかと思いダンジョンコアの話題を出す。


 今一番話題に上がるダンジョンコアの話よ、さあ喰いついてきなさい。


「内緒だ。じゃあ、俺たちはもう行く」


 内緒ってダンジョンコアを持ってるって事じゃない。何処に行くのよ! しかし金の目を諦めきれない、何とか同行する機会はないかと後を付いて行くことにする。足の調子も徐々に良くなってきている、きっとあの踊りの力ね。


 するとグレーの子が楽しそうに踊ると、すごい勢いで二人は歩き出した。私の本気を超える勢いだ。二人をなんとか捕まえられないだろうか、夜の寝静まった時ならなんとか出来るだろうか。こんな嫌がらせにも負けない私って偉いわ。


 すっかりケットシーの二人は見えなくなってしまった、住んでた町では猫ちゃんとは仲良しだったし餌を上げれば寄ってくるだろう。あれこれ手管を考えながら進むと、前方には木々が生い茂る林が現れた。今なら足も十分癒えたし、何かあっても逃げる自信はあるわ。


 林の終わり近くまで進んだところで、数時間前に話し掛けてきた男が仲間を連れて現れた。肩を揺らしながらガラ悪く近づいてくる。


「よー、さっき振りだなハーフリングのクソガキ」


「まったく記憶にないわ、誰かと勘違いしてるんじゃない。脳みそ小さそうだもの」


「なんだとこの野郎。てめ……って、待ちやがれ!」


 待つわけないでしょ、馬鹿なんじゃない? って、馬鹿だったわね。追い掛けてきた男たちを振り向き観察する。後衛が一人に前衛が三人。


 ちょっと厳しいわね、でもこのまま走れば敵も縦長にならざる得ない。足もほぼ全快だし、分散させて各個撃破ね。


 目論見通り馬鹿が縦長になって私を追い掛ける。先ずは一人目。投石で立ち止まり、怯んだ一瞬に左脹脛を切りつける。追撃さえされなければ良いので、殺す必要はない。


 二人目にも投石を試みるが、直前に仲間がやられる姿を見ているだけに動じた様子はない。そういう反応を私も予想してるのよっと、男の足元に小瓶を叩きつける。麻痺薬だ、私は風上なため上手くしたら他の男も麻痺らせられる。


 すると火球が二つ私の目の前を過った。嫌な予感がして咄嗟に左へ移動したのが幸いした。すると間髪入れずに片手剣が襲い来る、私は短剣でいなし距離を取る。右腰に下げている短剣も抜き、双剣で男に挑むがやはり魔術師が邪魔をしてくる。少し押され気味だと感じるが、早く倒さないと麻痺らせた男も参戦してくるだろう。


 何か取っ掛かりがあればと思ったところ、突然視界にあのグレーの子が映った。隣には三毛の子もいる。魔道具を使って休憩をしていたのだろう、バッチリ目が合ったグレーの子が盛大にため息を吐く。


 しかし、参戦してくれるようで、三毛ちゃんが杖を握って駆けてきた。グレーの子は地面に手を付くと、魔術師の足元に穴があく。そして三毛ちゃんが片手杖で魔術師の後頭部をボゴンと殴った。


 何事かと振り返った男の隙を見逃さず、双剣で十字に斬り捨てる。こいつが一番手強かったので猫ちゃんには感謝だ。私は嬉しさのあまり剣を仕舞いながら駆け寄り声を掛けた。


「猫ちゃん!!」


 その瞬間空気がキンと張り詰めたのを私は感じ、歩みも止まってしまった。そして恐ろしく蔑んだ目をしたグレーの子が言葉を紡ぐ。


「呼んだか? ちびの亜人ちゃん」


 亜人とは人族以外の種族を一纏めにした総称であり、種族が分かっている者には使わない言葉だ。なんと失礼な子なんだろう。しかし、私は寛容な女。子供の失言など大したことではない、それよりもお近づきにならないと!


 すると二人は大きな魔物を召喚して、街道を外れて行ってしまった。召喚まで使えるなんて素晴らしいわ。


 直ぐに追い掛けたかったけど、男たちから戦利品を頂かないと麻痺薬使った分赤字だわ。まずは回収をしよう、向かった方角は分かっているしね。


「待っててね猫ちゃんたち」


 私を置いてこんなに先に進むだなんて何を考えているの。捕まえたらきつく叱らないと。なおも先に進むと小さな墓場へ辿り着いた。いきなり墓なんて縁起でもないわね。日暮れ前なのに人が多いし……。何かしら、王冠? を被ったマントが見える。


 近くで見ようと柵を越え墓場に入る。墓の飾りなら私が貰った方が有意義よね。そう思い手を王冠に出すと、王冠の下の暗闇に二つの光が灯った。あっ、これって亡者!?


 もう私のバカバカ。よく見ると亡者の群れじゃないの、あの子たちにハメられた! 一から躾けないといけないわ。


 取り敢えず私は全力で逃げることにする、逃げ足には自信があるんだから。街道まで逃げると戦士らしき男と弓士のエルフがいたので、亡者の群れに襲われたと報告する。すると草原の上を滑るように進む、王冠を被った魔物が現れた。見覚えのあるその魔物に見覚えはないと話ていると、他の二人も標的にされたようで戦うしかなくなった。


 決死の覚悟で斬りかかるが手応えはない、二人の攻撃を見れば何かしらの対アンデッド装備であることが分かった。しかし、標的は三人になっているのだから何もしないわけにいかない。


 そんな時、新しい援護が入る。青白く輝く体躯の馬に跨った二人のケットシーだ。やはり私を心配して戻って来てくれたのね。でも私をハメた事は許さないわよ。


 私の活躍もあり、なんとかリッチ王なる魔物をやっつけた。そしてドロップ品は四つ、王冠・王笏・指輪・マントだ。汚いマントはいらないなと考えていると。四人が各々希望を言い出した。


「いや待って! 一番の権利は私でしょ!」

 慌てて私は大きな声で主張したわ。私は一歩引くようなそんな弱い女じゃないのよ。


「よく考えて欲しいのだけど、私が此処までリッチ王を連れてこなかったら皆は戦うことも無かったのよ。本当ならば四つとも私に権利があると思うのだけど、共闘したことで慈悲を与えるわ。私は王笏を貰うわ」


 これが最大に譲歩した結論よ、私が何も貰えないなんて誰が聞いてもおかしいわ。私は杖を拾いに一歩踏み出したわ、「大穴」えっ? と考える暇もなく私は穴に落ちた……。あのクソ猫めぇ。


「リッチ王を連れて来たのは貴様か。あんな凶悪な魔物を人が居る所に連れて来たのは犯罪であり、この場で殺されていても文句は言えない。何が共闘した慈悲だ、お前は何もダメージを与えていないぞ」


 エルフの言葉に私は憤慨する。強そうな人に頼って何が悪いって言うのよ。それなら私をハメた猫にも言いなさいよ。不満が口から次々と溢れ出す、ダメージがどうとか知らないわよ。ダメージが欲しいなら、私に銀の武器でも属性武器でも渡すべきでしょ。けち臭いエルフにウンザリするわ。って勝手に分配しないでよ! 全部私のでしょー!


「ねー! 聞こえてるんでしょ! 何とか言いなさいよ!」


 人通りの消えた街道に少女の声は響いた。

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