第二話 街道での共闘 後編
第二話 街道での共闘 の後編になります。もし前編が未読なら是非前編からお読みください。
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街道から外れた道なき道を進んでいると、小さな村というか集落に行き着いた。集落外から見ると危険な予感はしないが、少し不思議な感じはする。集落の規模にしては出歩いている人の数が多過ぎるし、日暮れ前に何事だろうかと気になった。
「ちょっと寄ってみようか、宿屋もあるかもしれない」
「分かった。サイゾーさんありがとね」
ビビがサイゾーに手を振り、俺はサイゾーを帰還する。そしてトコトコと歩き集落へ向かった。集落へ近づくと一定の特徴があることが分かった。村人の動きがぎこちなく関節がおかしいようだ。
どうやら出歩いてる者は皆亡者で、生前していた行動を何も考えずに繰り返しているようだ。小さな集落に何故こんなに亡者がいるのか不思議だなと考えていると、集落の最奥にある墓場から魔力が溢れていることに気付いた。
「ミミだめ。そのままではミミも取り込まれる]
ビビが俺の上着を掴んで引き留める。どうやらこんな状況になった元凶が墓場にあるようだ。亡者に強く効くのは聖属性か光属性のどちらかだ。ケットシーのステップに両属性あるが、攻撃魔法のような効果はない防御特化だ。
「ビビ、静かに此処を離れよう」
「了解」
俺たちは静かに後退り、後ろに注意して慎重に街道へ戻る。
「何があったのか分からないが、街道から外れた場所であるのが幸いだな」
「そうだね、あそこだと亡者は外へ出ないかも」
集落には柵も門もあったし、誰かがわざわざ門を開けたりしない限りは問題ないだろう。教会なりがそのうちなんとかするだろう。
「ムズムズする」
「街道から外れて隠れようか?」
「……うん。それが良いみたい」
俺たちは急いで街道から出来るだけ遠ざかって、物陰に隠れ姿隠しの布を被った。すると集落の方から「いやあああ!!」という叫び声が聞こえた。草原を掻き分け走る足音が響く、音の主が街道へと躍り出た。
「まさかとは思ったが、やはりハーフリングの少女か」
「亡者の姿は見えないけど……」
ハーフリングの少女は街道ですれ違った人に亡者がいたと説明をしている。このまま何もなく終われば問題ないが、ビビが隠れる事を是としたならこれで終る筈がない。
草原の上を音もたてずに地上から浮き進むものが現れた。どうやらハーフリングの少女を探しているようで、街道に上がり左右を見回し少女を見つけると音もなく少女に向かった。どう見ても高位のリッチで俺まで鼻がムズムズする。
「あいつ強い。王冠被ってた」
「此処が墓場じゃなくて良かったな。魔術師のリッチは魔術をバンバン使ってくる、神官の場合もそうだ。王の場合は手下を次々呼び出し統率する」
リッチは音と光に敏感だし、俺らが動くと直ぐにターゲットにされるだろう、どうしたものか。
「ビビは聖、光属性の物を出しておく」
「そうだな、少しは身を守る足しになるだろう」
「ミミ、ユニくんって光属性だよ」
「うーん。リッチ王に指揮権奪われそうで怖いな」
「ユニくんなら五分五分かな?」
「光属性を加味しても六:四でリッチ優勢だろう」
「むぅ、そんな気もする。あっ、浄化ポーション出てきた」
「ああ、俺が昔錬金修行で作ったやつか。懐かしいな」
ハーフリングの少女は逃げられないと悟ったのか、街道で行き交った者に事情を話し、と戦う覚悟を決めたようだ。リッチ王とハーフリング・エルフ・人族の戦いが始まった。
「仕方が無い、参戦しよう。俺たちはユニに乗って光矢の射程距離ギリギリで戦うこと、向こうで戦っているエルフみたいにな」
ビビは「了解」と真剣な顔で頷く。そして浄化ポーションを取り出し並べていく、全部で五本あった。
「リッチ王は魅了や召喚を使うときは必ず立ち止まる。だからビビは浄化ポーションを準備して、発動前にユニの首筋に少量かけること」
ケットシーに魅了は効かないし、召喚と魅了の無いリッチ王にならば相手が格上でも勝機はある筈だ。
「じゃあ、ユニを召喚するよ」
「了解」
俺の説明を受けビビが何も言わないということは、勝ったも同然だ。そう思えるほど俺はビビの先見や予感の事を信頼している。
「ユニ召喚!」
眩い光と共に青白く光り輝く馬体のユニコーンが現れた。額にねじれた長い一本の角があり、敵を串刺しにしたりする。
俺は素早くユニに飛び乗り、「ユニくーん」と抱き着いたビビをすかさず引っ張り上げる。ユニにも作戦を説明し了承を得る。
射程ギリギリを移動しながらユニが光矢を放つ、光矢が当たるとリッチ王は一度ガクッと揺れるがそれ程ダメージがあるとは思えない。しかしエルフの放つ光の矢よりも、追加ダメージのようなものがあるようだ。嬉しい誤算だ。
ハーフリングの少女と人族の男性は近接戦闘で、ヒット&ウェイで攻撃している。人族の方はダメージが通っているらしく、武器か魔法で属性付与をしているのだろう。武器に浄化ポーションを掛けたらもっと効果が出る気がした。
するとリッチ王は立ち止まり、『キィアアアアアアアア!!』と甲高い叫び声を上げる。
まるでダメージを負った風に見えるが実際は逆で、アンデッド召喚である。しかし此処は墓場でもなければ古戦場でもない、いくら叫ぼうがアンデッドは現れない。
「一回得した」
「次も召喚だと助かるな」
「キィアは召喚把握した」
「魔法は詠唱を始めるのがポイントだ」
「了解」
ユニの上で俺たちは少し余裕があるなんて思っていた。そしてエルフの光の矢とユニの光矢で、徐々にではあるがリッチ王にダメージを与えていく。するとまたリッチ王は立ち止まり叫び声を上げるが召喚は不発に終わる。
リッチ王からアンデッドが召喚できないことに苛立っている様子が伺えた。そんなとき、俺の前に座るビビから「フフッ」という、嘲り笑いが聞こえた。
すると聞こえるはずのない距離のはずなのに、リッチ王は振り向き眼窩の青白い光がこちらを睨んだ気がした。
「ユニくん、移動して!」
突然焦ったビビの声が響き、ユニは素早く移動した。すると後方で地面が弾ける音が響く。リッチ王が先程まで俺たちのいた場所に空間移動し、王笏を降り下ろしていた。
「空間移動までするのか。ビビ助かった」
「見えた」
どうやら先見が仕事したようで助かった。逆を言えば先見の知らせがなければ、あの王笏が当たっていたのだろう。危なかった。
「リッチ王のプライド傷付けた」
「なるほど、仕様もない王だな」
「これで王の器だって?」
「どれだけ小さい器だって?」
この会話がどうやらヘイトを買い過ぎたようで、俺たちは暫くリッチ王に追い掛け回された。俺たち以外の近接は小休止出来たようで結果オーライだ。
その後も危なげもなく俺たちはダメージを与えていた。順調だと思ったところでリッチ王は足を止め黒い靄が近接二人を包み込む。二人は武器を下ろし俺たちに向かってくる、その目は虚ろで魅了状態だと分かった。
するとまたしてもビビから笑い声が聞こえた。
「これで気兼ねなく、あいつを殺れる」
ビビの視線は、魅了されたメイリンの細い首筋に向けられていた。あいつとはリッチ王のことではない。
そんな物騒なことを言う相棒に、俺は慌てて浄化ポーションをかけろと指示を飛ばす。
「ビビ!浄化ポーションを使え!」
「……チッ」と舌打ちが聞こえた気がするが気のせいだろう。
ビビは得意の土魔法で地面に穴をあけ、突進してきた二人が転げたところに浄化ポーションを振り掛けた。二人は正気を取り戻しリッチ王へ向かった。男の方は「すまん。ありがとう」と言って戻ったが、少女の方は何故か俺たちを睨み「何かけてんのよ、気持ち悪い!」と言って戻って行った。
その後、召喚と魅了を使ってきたが無難にやり過ごし、ビビのまるで狙っていたかのように唱えたストーンランスによってリッチ王は崩れ落ちた。ビビは小さく「よしっ」と言い、拳を掲げた。最後の最後を見極めたビビが誰よりも喜び、まるで大活躍したかと思うほどだ。ビビがこの場の誰よりも狡猾なのかもしれない。
その場にいた者は皆が皆、歓声を上げた。
これで集落の亡者も眠る事になるだろう。今回に関してはある意味ここまで連れ出したハーフリングの少女の手柄と言えなくもないなと心の中で思った。街道まで連れてくるのは論外だが……。
さてここから問題がある、ドロップ品は四つだ。戦闘に参加したのは五人、ということは一人は何も貰えない。よくあることだが揉めることも多いため全て売ってしまって、五人で等分にすることが多い。しかしそれは見知った仲だったりパーティを組んでいた時だ。今回の突発的なものには等分することはないだろう。
「ビビは王冠が欲しい」
ビビがいきなり希望を口にした。多分高そうとか偉そうとかよりも、被りたい気持ちが大きいだろう。
「俺はマントが欲しいな」
これは近接の男性だ。ボロボロのマントだが性能が良いのだろうか?
「私は強いて言えばそのリングだな」
エルフの弓士は赤い大きな石の嵌った金の指輪を選んだ。
「俺は王笏だな」
これは俺だ、使えそうなのが王笏かと思う。
「私は全部欲しい……けど、ダメだろうから武器の王笏かな」
希望がとうとう被ってしまったか。少女の話はまだ終わらない。
「よく考えて欲しいのだけど、私が此処までリッチ王を連れてこなかったら皆は戦うことも無かったのよ。本当ならば四つとも私に権利があると思うのだけど、共闘したことで慈悲を与えるわ。私は王笏を貰うわ」
少女はそう言って王笏を拾いに行こうと一歩足を踏み出した。
「大穴」
ビビは地面に穴をあけ、少女は穴へスコーンと落ちてしまった。エルフが四つのドロップ品を拾い集め、各々に渡していった。そして穴に向かい言い放った。
「リッチ王を連れて来たのは貴様か。あんな凶悪な魔物を人が居る所に連れて来たのは犯罪であり、この場で殺されていても文句は言えない。何が共闘した慈悲だ、お前は何もダメージを与えていないぞ」
表面上平静に見える目は、恐ろしく冷たかった。穴からギャーギャーと喚く声が聞こえるが、皆そんな声は無視して「お疲れ様」と解散した。取り敢えずビビにブカブカの王冠を収納させ、俺たちは夕暮れの街道を北東へ向かった。
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