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ダンジョン街のミミとビビ ~世界はダンジョン産で満たされる~  作者: 石火
第一章:境界線の向こう

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第二話 街道での共闘 前編

第二話は前編後編となっております。後編は明日更新予定です。

  俺達の矢印の旅は順調に進み、大陸中央部へと向かう街道は疎らに人が増えたように感じる。

 大人も子供も性別や種族も様々だ。注意深く見ると皆が皆、北東へと進んでいる様子で、きっと皆ダンジョンが目当てなのだろう。


 街道脇の大きな木の下で、少女が一人項垂れて休んでいる。

「お姉さん、お怪我してるの? 大丈夫?」

「小さいからって甘く見ないでよね! ……って、あれ?」


 ハーフリングの少女はどうやら何度も声を掛けられて苛立っている様子だ。まあ、ビビにかかればそんなものは赤子のようなものだ。


「あら、ごめんなさい。勘違いしてしまったわ。もう七日も歩き通しで足にガタが来たようなの」

「ビビが癒しの踊りしてあげるね」


 ビビが華麗なステップを踏む間に、俺は少女に水を差し出した。

「あら、こっちも幸運の目だわ。有難いわ、お水いただきます」


 俺たちの住んでいたゼルコヴァ王国はハーフリングも多く住んでいるため、お互いの性質はよく分かっている。そのため警戒もせずに水を飲んだのだ。ケットシーがハーフリングに悪意を持って接することは基本的には無い。


「ビビのダンスがあれば、これくらいの怪我ならすぐ治るだろう」

「ありがとうございます。お二人もえっと、あの、矢印に導かれて?」


 ぼかした訊き方をしたつもりだろうがバレバレだ。

「内緒だ。じゃあ、俺たちはもう行く」


 踊り終わったビビを呼び、俺たちは街道を北東へと進んだ。


「ねえミミ、あの子ついてくるよ」

「放っておけ、足さえ治ればハーフリングなら何とでもなるさ」

「そうだね。あんな簡単にダンジョンコアの話を出すなんて、ビビでも迂闊だって分かるよ」


 踊りながらでもビビは様子を窺っていたらしく、迂闊なんて辛辣な言葉が出てくるほどには印象は良くないようだ。

「さすがビビは出来る子だな」

「でしょう」


 と言って、ビビは胸を張り上機嫌だ。その勢いのまま弾む心のダンスを踊った。疲労が軽減された俺たちの歩みは早く、ハーフリングの少女との距離は大きく開いた。


 ハーフリングは少数種族で、身長は一メートルから一メートル二十センチほど。性格は陽気で力持ち、俊敏で魔法は使えないが独自の魔法陣魔法を使う。……一般的な認識としてはこんな感じだろう。同じ地域に住む他種族としては、これらに加えて「嫉妬深くて喧嘩っ早く、ねちっこい」と付け足すだろう。


「この先から街道が林を突っ切るようだが、問題は無さそうか?」

 林の入り口で立ち止まり、ビビに問い掛けた。


「悪者がいる。でも、狙いはケットシーじゃないみたい」

「素通りできるなら問題ないな」

「了解」


 林の中間ほどで少数の気配はするが、動く様子はなく俺たちが狙いではないのだろう。しかし、人の気持ちなんて数秒で変わってしまうものだ。用心に越したことは無いと召喚の腕輪の確認をする。


 俺は表向きには錬金術師としているが、一番得意としているのは召喚士だ。因みにビビは自称踊り子だが、総称としては『歌う者』ということになる。他にも鑑定や先見、薬師など才能豊かだが、本人にやる気が無いのだから名乗るのは烏滸がましいレベルだ。


 ケットシーが若くして博識なのは、転生者のみの種族だからだ。しかし記憶の残り方は個々人で違い、欠落も多い。ビビとも特に前世について話したことは無い。


 前方に光が差し、薄暗かった林の終わりだ。

「もう少し進んだら食事にしよう」

「うん。ぺこぺこ」


 林から遠ざかり、街道から離れて休憩だ。念のため認識阻害の魔道具を出す。

「今日はビビが出すね」

 ビビは嬉しそうに猫の額から、肉に玉子焼きに魚など、豪華なお重を取り出した。


「なんのお祝いだ?」

 その豪華さに思わず訊ねていた。

「波の泡様が自由となったお祝い」

「そうか、破邪の守りをお使いになったか。そりゃあ、祝わないといけないな」

 二人で「「波の泡様の自由に!」」と果実水の入ったカップを掲げた。



「これ、ジジおじさんの唐揚げだ! 相変わらず美味いな。……こんだけ種類が多いと集めるの大変だっただろ?」

「種類多いと、一切れ二切れと分けると数が作れるんだよ。だからそれほど大変じゃないよ」

「なるほど、俺たち少食だからな。それに品数が多いと嬉しいから丁度良いな」


「ドワーフのオッセンブリ親方はビビの憧れ」

「ああ、大食いのオッセンブリな。この間食い過ぎだって奥さんに飛び蹴りされてたな」

 ビビはフォークを持った手を頬まで上げて、「うそー」と驚いている。


「奥さんのパンキーさん素晴らしいね!」

「ああ、村一番の力持ちだしな。パンキータックル」

「「岩をも砕く!」」


 二人で笑い合い、昼食が終わる。タオルケットをお腹に掛け食後の昼寝だ。ケットシーは寝るのが大好きだ。だが、さっきパンキーさんの噂話をしたせいか、二人とも魘されるかのように同時にガバッと起き上がった。

「「パンキータックル……」」


 小一時間ほど寝ただろうか、荷物を片付け出立する。前方から争っている気配と怒声が響く。どうやら昼寝の間にハーフリングの少女に追い抜かれ、彼女が林の悪党を引き連れてここまで来たようだ。二人の男が道に転がり、二対一になっている。


「あっ、ビビ目が合っちゃった……」

「仕方が無いな、悪党の後衛の方をやるぞ」

「了解」


 俺が走り出し、後ろからビビの声が聞こえる。「穴ぼこ!」

 後衛の男の足元に穴が空き、男が前方へ倒れこむ。そこへ俺が杖を振り下ろす。ボコンと鈍い音がした。


 少女の方も決着がついたようで、駆け寄って来た。

「猫ちゃん!!」

 どうやらこの少女は育った国が違う様だ。うちの国でケットシーを猫ちゃんと呼ぶ者はいない。案の定、ビビはお気に召さないようだ。

「呼んだか? ちびの亜人ちゃん」


 蔑むような視線を向けたビビは、敵の装備を頂くと俺の手を引き歩き始めた。

「お願い。サイゾーさん出して」

「特別だからな。……サイゾー召喚」


 現れたのは突進紳士バイコーンと呼ばれる魔物、サイゾーだ。サイゾーは「さいぞーさーん」と抱き着いてきたビビを、微動だにせず紳士的に受け止めている。俺はサイゾーに乗ってビビを引っ張り上げ、北東へ向かうよう指示を出した。


「あいつほんと何なの? ビビあいつ嫌いだ」

「他国で育ったハーフリングがどういったものか分かって良かったな」

「あいつだけが特別だと思いたい」


 フレンドリーに寄ってきて差別的なことを宣い、嫌がられている自覚もない。その証拠に、彼女は一定の距離を開けて俺たちの後をついてきているのだから。

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