表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン街のミミとビビ ~世界はダンジョン産で満たされる~  作者: 石火
第一章:境界線の向こう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/20

第九話 記憶の欠片

「第一章:境界線の向こう」のエピローグになります。

 朝靄の中、俺は目覚める。

 いつものように二人を探すが、いつもと違い二人はスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。


「ふむ、いつもと違うんだな」


 靄の中、石畳の道を進むと、いつの間にか道を見下ろすこととなった。

 その瞬間、胸の奥がひどく疼いた。


 なんとは言わず矛盾を感じる。



「あっ、夢か……」




 知らない景色のはずなのに、懐かしさとも痛みともつかない感情が溢れてくる。



 いつの間にか握っていた夜色のコアが微かに脈打った。前方から吹き抜ける風は冷たく、俺の体を吹き抜けていった。妙に冷たく感じた。


 その瞬間、何かが弾けた。


 暗闇の中に輝く、一本の道があることに今更ながら気づく。


 金色の細く柔らかな光を編んだような、幾重にも撚り合わさった細く長い道。



 かつての俺が誰かと歩いた、どこまでも行けると思った道。


 その道は空の裂け目にも、海の底に眠る海底都市にも、神々が眠る場所にさえ続いていた。


 俺と君は、ただ一緒に歩いているだけで幸せだった。


 けれど君は絶望したんだね。


 そして俺も遅れて絶望した。



 その瞬間、道は閉ざされた。君は俺を置いて先に進み、俺はそこから動けなくなった。





 どれだけの時間が経ったのだろう、俺は君の行かなかった道を行くしかなかった。



 そして気付いたんだ、俺が置いて行かれたんじゃない、ただ俺が君について行けなくなっただけだと。


 俺は進むしかないんだね。この道を一人きりで。


 光が消える。

 途切れた道の残光だけが、瞼の裏に焼き付いていた。




「ミミ? どうしたの、ダンジョン街はすぐそこだよ」


 ビビが心配そうに俺の顔を覗き込む。

 その金の瞳が、胸の奥の疼きを呼び覚ます。


「……いや。なんでもない」


 そう答えながら、俺は確信していた。この地は、かつての俺が“いた気がする”場所だ。


 ケットシーとして生まれて三年。朧げに頭を覆っていた記憶の靄が、少しだけ晴れた気がした。




 風がまた吹いた。


 今度は冷たくない。まるで「ようこそ」と歓迎してくれているように感じた。


 胸が少し温かくなった。




 道の向こうに、ダンジョン街の輪郭がぼんやりと浮かんでいる。


 石造りの家々が朝靄にとけ、遠くで鳥の声が聞こえる。


 初めて見るはずの景色なのに、胸の奥がじんわりと温かくなる。


「ミミ、行こう」


 ビビが尻尾を左右に揺らし微笑む。


 光の道はもう見えない。

 けれど、その残光はまだ胸の奥で確かな熱をもって揺れていた。


 俺は大きく息を吸い、前を見る。


 今の俺には、仲間たちがいる。



 きっと、また歩き出せるのだろう。

 この仲間たちと共に。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しでも『面白いな』『続きが気になる!』と思ってくださったら、ブックマークと下にある

【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると、執筆の励みになります!

では、次話で!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ