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ダンジョン街のミミとビビ ~世界はダンジョン産で満たされる~  作者: 石火
第一章:境界線の向こう

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第七話 ノーム

 ヴルスガルド王国は海峡に挟まれた国で半島だ。端から端まで馬車で十日かかる距離だが、俺たちなら三日もあれば走り抜けられる。


 街道沿いには、戦時中の駐屯地がいくつも残っている。今は一般開放され、どこも賑わっていた。半年前まで疲弊していた国とは思えないほどだ。


「次の駐屯地で宿とるよ」

「りょかーい」


 ビビはご機嫌だ、返事で分かる。ダンジョン街に向かう前に、肉と魚を買い込む気なのだろう。


「いいおじさんとの約束守らないと!」

「そうだな。食料は多いに越したことはない。この先、何があるか分からないんだし」


 そんな話をしていたとき、ビビが突然叫んだ。


「ミミ、ミミ、やっばーい!」

「なんだ? 語彙があやしくなってるぞ」

「あれ、絶対ノームの家だよ!」


 ビビが指さした丘には、小さな扉と丸い窓。どう見てもノームの家だ。


「こんにちはー」


 丘に突撃したビビを見るが、家からの反応は無い。


「留守だった」


 ハハハと笑うビビに、居たらどうしてたのかと思ったが、何も考えてないのだろうから何も言わない。


「駐屯地で出会えたら良いな」

「そだね」


 駐屯地では肉や魚、野菜を買い込み、俺はチーズも確保した。ここも元兵舎が宿屋になっており、安価な為か宿泊客で賑わっていた。


 ダンジョン街に近づくほどに人が増えている。この辺りはまだ人族が多いが、中央部に近づくほど多様なものとなるだろう。


 翌朝、階下に降りるとビビが嬉しそうに手を振ってきた。


「丘のノーム、ロークって名前なんだって! 一月前にダンジョン街に向かったっぽい」

「なら、ダンジョン街で会えるかもな」


 その後もビビのノーム情報は続く。ノームは警戒心が強く、大地の民と呼ばれる半精霊のような種族で、独自の文化文明を持っている種族だ。



***




 俺たちは速度アップのステップで、順調に東へと進んでいる。それと同時に戦時中は激しい戦いがあったのだろうと、思わせる跡も増えてきた。


 商人たちは街道からメレディス王国を見る価値はあると話していた。その訳がもうすぐ分かるのだろう。国境の名残はあるが、兵士の数は少なく本当に終戦したのを感じる。


 関所間の距離は結構開いていて昔はこの距離を馬車の行列ができていたそうだ。まあ、メレディス王国はルーメン魔法国が、ヴルスガルド王国を攻撃することに中立を貫いたそうだ。


 自分の国土を通過させてる時点で中立じゃないと思うが。さて、そろそろ遠くにメレディス王国が見えるかな。


 メレディス側の関所が見え、海峡の向こうには瓦礫の山がいくつも見えた。行列の人たちは、普通に入出国をしているのだから生活に問題はないのか?


不思議な光景だ、綺麗な街並みと瓦礫の山が共存している。フリーとなった関所を通過しようとしたとき、唐突にビビが止まった。


「どうした?」


 急に立ち止まったビビが町の逆側、左をじっと見つめる……。

 俺もビビから目を離し、左を見つめる……。人々は事も無げに俺たちを追い越していく……。


「「……」」



「地脈が途切れてる……」

「メレディスの瓦礫の山が原因なのか?」

「どうなんだろ……。ロークに訊いてみよう」


 ビビが指さす先に大きな背嚢を背負った小さなノームがいた。地面にしゃがみ込み何かをしている。俺たちは彼に近づき声を掛ける。


「ローク」


 声を掛けると、ロークは肩をびくりと震わせた。


「何してるの、あぶないよ?」


 びっくりはしたようだがロークは大地から目を離さない。そしてビビよ何が危ないんだ、ここは何の変哲もない路肩だ。


「……地脈が乱れて、薄くて……進めない」

「なるほど!」

「この先に行くほど大地の加護薄れる……ノームは大地の民……困る……」


 ビビとロークが話し合い、すぐに意気投合したようだ。そしてビビに手を引かれたロークがやってくる。


「ロークもダンジョンコア持ってるんだって! だから一緒に行こうって誘った」

「よろしくお願いします」


 ロークは三角帽子を取って頭を下げた。あどけない顔に、琥珀色の意思の強さを感じさせる瞳だ。


「こっちこそよろしく頼む。俺はミミ召喚と錬金術をしている」

「ロークっです。鉱石関係が得意で、土魔法が使えます」

「僕はミミ、土魔法と鑑定士やってるよ。あとちょっと踊るよ!」


 三人で自己紹介をし、ビビが強引に誘ったんじゃないかとか聞いたが、誘ってもらえて嬉しかったそうだ。地脈の乱れの原因は分からないそうだ。


「やっぱり、ノームは少し小さいので侮られるって云うか、その……」


 うんうん、そうだよな、小さいってだけであいつら上から目線なんだよ、良く解る。


「ぜんぜん小さくないよ。ほらビビとかわんない」


 そう言ってビビはロークの横に立ち、頭のてっぺんを掌で「おなじー」としていた。


「そうだな俺たち似た者同士、仲良くやっていこう」

「「「おーっ!」」」


 先ずはロークの大荷物を猫の額(ねこのひたい)に収納した。謙遜を通り越して詐欺に近い命名だが、おかげで他人に中身を狙われることはない。空間収納を持っているのを隠す方が難しいための苦肉の策だ。


 ロークは地脈を使って体力補助、現在地などの把握をしていたため、地脈の断絶にお手上げ状態だった。それなら一緒に行こうとビビが誘ったということだ。


召喚(サモン)サイゾー!」


 サイゾーは「ブルッ」と召喚された。いつものようにビビがサイゾーに抱きつく。


「サイドバッグを取り付けるから、二人はバッグに入れるか?」


 バッグと言っても重い物を入れることもあるため、籠のような物になっている。


「左にローク、右にビビが入ってくれ。俺は背に乗るから」

「りょーかーい」

「はーい」


 バイコーンは闇と土属性だから二人とも相性が良いだろう。ロークも地脈の乱れから距離を取れるし、良いこと尽くめだ。


「ローク、ビビ荷物になるの初めて!」

「お、おれも!」


 左右に分かれた二人がお揃いだと笑っている。俺以外は土属性だから打ち解けやすいのだろう。ちなみに俺は水属性だ!


 水属性は錬金術には最高な属性なんだからな! なんて思わないでもないが、逆に俺まで土属性は地味すぎて砂埃が立ちそうだ。


「じゃあ、最初はゆっくり行くからな。サイゾーもサイドバッグがあることを気にしてくれ」


 サイゾーも分かったようなので出発する。街道は往来する人も馬車も増えてきている、接触しないように慎重かつ大胆にサイゾーには走ってもらいたい。


 サイゾーは普通の馬よりも大きいから、人々の目を惹く。あまり注目されたくなくて召喚獣を出すのは控えていたが、ビビが召喚OKだと言うのであれば大丈夫だ。


 ダンジョンコア仲間が出来て心強い。そういえば、ハーフリングの少女もコア持ちだったが、あの性格じゃ仲良くはなれないだろうな。


 そんな仲良くやっていくと言ったそばからビビとロークが揉めている。それはおやつを食べ終わったあとに起こった。


「何回だって言ってやる! 僕の方が背が高い!」

「おれだって何回だって言ってやる! おれの方が高い!」


 でことでこをくっつけ言い争っている。二人とも数時間前は「おなじー」って言ってたのに。どうしようか、俺の目からは全く同じに見える……。



「まあまあ、二人同じでいいじゃないか」


「外野は黙って!」

「おまえも二桁で上から目線か!」


 三桁になってから出直せとか白熱している。


「いやいや、実際俺の方が高いからな」


 はははと苦笑しながらそう言うと、風向きが変わった。二人の目が怖い……。


「そういうとこミミの悪いとこだよ!」

「ビビ、そういうとこをガツンと言ってやれ!」


 えっ、俺が悪いの?


「ほらそれ、俺が悪いの? って顔だよ。反省して!」

「そうだそうだ。反省して!」


 ビビの目がキランと光る……。


「そうだな、ちょっと背が高いからって、上からですまなかった」

「「反省したか?」」

「反省した……」


「「なら許そう」」


 そう全てはビビの計画通り、喧嘩して、仲直りして、仲良くなりましょうってやつなんだろう。まあ、仲良くなったのなら良いだろう。


 ロークの被っていた猫も早々にビビに剝がされたし……。


「二人とも、今日はロークの歓迎で肉を食うぞ!」

「「やったー!」」


 宿屋に着くまでに、三人で肉の歌を一曲完成させた。

 すれ違う人たちが耳を傾けていたので、出来は悪くはないだろう。歌の魔力が効きすぎたってことはないよな……。


***


「おい、今日は何でこんなに肉料理ばっかり出るんだ?」

「分かんないが、他の店も肉が無くなったらしいぞ」


 夜、閉店した肉屋が臨時開店させられるという珍事があったとか、なかったとか……。

第七話は幕間ありです。

第八話が前中後編の三話

そして九話で、一章が終幕になります。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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では、次話で!

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― 新着の感想 ―
ミミとビビの“トテトテ”した旅が本当に魅力的でした。二人の空気感がとても心地よく、親しみやすくて良かったです。 旅を進める中で人や神を救っていく展開も印象的で、可愛らしさだけでなく、しっかりとした世界…
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