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3.混沌審査会

スクリーンに映されているのはシルエットだけだ。

事前に撮ったものか、ビデオ通話かは現時点では判断できない。

「ンフフフ。やはり、義務教育上がりのガキ共は雑魚そうな面してるなぁオイ。お前らに社会の怖さを教えてやるよ。ンフフフ」

ねっとりとした声で舐め回すようにこちらに話しかける。

彼のこの一言だけで、場の空気が変わった。

1年生の一部は忘れたはずの怒りを再燃させている。また一部は強く怯えている。

2年生は興味津々といった様子で、スクリーンに見入っている。いや、1人を除いて、か。

3年生は呆れている者もいれば、傍観を貫く者もいる。

彼が今、間違いなく場を支配した。

「ンフフフ。マジか?ガキ共。俺の一言だけでそんな怒るか?」

挑発的な発言を1年生に向ける。

その言葉を受けて、松尾や中居がぎゅっと拳を握りしめる。

「モジモジ、そんなに怯えるかぁ?芋虫みてぇだなぁ」

気の弱い川嶋の顔が更に青白くなる。

「とてつもなくよぉ、子供だなぁおい。そんなんだから大人に騙されるんだよ。ンフフ」

大人に騙される?その言葉は理解できない。

あの方というのも大人でないし、3年も大人でない。

大人に騙されるとは一体、何を言っているのだろうか。

「ンフフ。まだ気づかないのか、霧島ぁ?アイツが危険だと判断したと言っていたが、大したことないなぁおい」

全員の視線が私に集まる。私はすかさずマドンナオーラ解放…

なんて冗談を言ってる暇はない。

あの方とかいう奴に名指しをされてしまった。

非常アラートが私の脳内で鳴り響いている。

思った以上にあの方というのは危険な存在のようだ。

しかし、あの方が言った事に対して色々と考えを巡らす暇はない。

なぜなら、今、この状況を打開しなければならないからだ。

この状況で打てる最善の策は何か、考えを巡らさねばならない。

そう考えていると、思わぬ救い舟が現れる。

「おいおい、あの方さん。このマドンナ気取ってる性悪女が危険因子な訳ないだろう。精々、自分の事を褒め称えることしかできない自己中でしかないと思うが」

「ちょっと、赫藺くん?口が少し悪いんじゃないかなぁ。私はみんなのことを考えられる素敵な女性だよ?」

でかした、赫藺。余計な言葉が多いが、私の窮地を救ってくれた。

私はこの場を生かしてこの状況から脱せられる。

「わ、私も霧島さんはすごい広い視点を持つ人だと思うよ…」

川嶋が私の発言に賛成してくれたことは今はどうでもいい。

「ンフフ。仲間割れかよ、オイ?だが嘘を言っているようにも見えないな」

「そうですよ。私はあなたのいう危険な存在なんかではありませんっ!」

「まぁまぁそんな泣くなよ、オイ」

一瞬訪れる沈黙。話が噛み合っていない違和感。

やはり会話は録画なのだろうか?

「おいおい、冗談でそんな沈黙するなよ」

冗談だったようだ。

にしては悪趣味だとは思うが。

「そろそろ、説明をしてくれないかなぁ?長ったらしく君に好き放題されているのは私達も嫌なんだけど?」

火輪は流石に痺れを切らしたらしく、この長く続く無意味な会話を終わらそうと口を挟んできた。

「あぁいいぜ。本題に入ってやるよ」

少し緩んだかと思われた緊張感が前よりも更に強まる。

「お前らは大人は自分っ達に危害を加えないという漠然という意識を持っているんだぁ。だがなぁ、お前らは大人がどれだけ汚いかを痛感できたというわけだ」

ここで先ほどからかなり我慢をしていたと思われるが、ついに痺れを切らした中居が

「さっきから大人大人って、誰の話をしているんだ?」

敬語口調で無くなった事を考えると、からかなりの怒りを溜め込んでいるらしい。

「ンフフ。お前らの担任… ワンコロ共だよ」

中居の怒りが消えていく、松尾も同じように怒りを溜め込んでいたようだが、彼もまた怒りが消えていったようだ。

それは、事象を理解できずフリーズしたためだ。

まるで、写真を大量にアップロードした旧型の携帯のように。

だが、ここで面白い現象が視界に入り込む。

3年生が頭を抱えているのだ。

この事から、このような事案は以前にも起きていたようだ。

「ンフフフフフ。驚愕の事実だと思うだろうよぉオイ。まぁだが心配するな。あの教育委員会の犬が能動的にそんなことをするわけないだろぉ?」

彼がそう言った途端、2年生全員がスマホをポケットから取り出す。

「おい、2年共。不必要な物は持ち込み現金だと言ったよな?」

岩豚が一人騒ぎ始めるが、2年は誰も彼を相手にしない。

そして、黙々と作業を始める。

すると録音されていたのであろう音声が流れ始める。

「ワンワンワンワン」

「きゃぅぅん」

「くぅぅん」

「バフ、バフバフバフ」

一瞬で犬の鳴き声を人間が真似たものだと気づく。

そしてまたも、1年生全員の脳内がフリーズする。

何故か?


この犬の鳴き声が全て、1年の担任の声で作られたものだからだ。


「なぁ、面白いだろ。今は生成AIでこんな物まで作れる時代だぜ。しかし、ワンコロにはお似合いだなぁ。餌を与えただけで生徒を裏切るワンコロどもにはこのくらいがちょうどいいぜぇおい」

再び、中居と松尾に怒りが戻ってきているようだ。

だが、その怒りは決してあの方と呼ばれた奴だけに向けられた物ではないはずだ。

絶対に信頼していいと思っていた者からの裏切り、それは時にして心に深い傷跡を負わせる。

そして、その矛先を持たない怒りをどこに投げればいいかわからなくなる。

それでも、今目の前にいる明確な“敵”に対峙する必要があるこの状況で、彼らは怒りを一体どうすればいいのか。

それは簡単だ。

静かに、情報を集め、確実に“敵”を葬る。

何が理由だったかをきちんと精査して。

それは並大抵の人間が瞬時に考えられることじゃないはずだ。

現に、彼らは今、“敵”に何の理由もなく、怒りを沸かせている。

彼らの未熟さが露呈する。

それは、“敵”の思う壺なのに、だ。

「何を先生方にしたんだ?このゲス野郎」

当て場のない怒りは、明確な存在に向けるしかできない。

「弱点を突いたのさぁ」

それは彼の思う壺だ。

「弱点って何だ?」

この状況は非常にまずい。

「それは秘密だぁ。よかったなぁ、俺とお前は秘密を共有する恋人には至ることはなかったようだ。ンフ、ンフフフ、ンフフフフフフフ」

一番怒るべきなのは、自分自身なのに。

…私はマドンナである。

どんな時でも平静を装う。いや、そうしないといけない。

そう心に近い、バックグラウンドのように聞こえていた彼らの声をもう一度頭で再生し、吟味する。

一番焦っていたのは私自身だったのだ、と感じた。

それほど恵梨先生を信じていたようだ。

……いや違うな。

クラスに明確な“敵”が存在する。

そう、確信した。

それは彼の発言や、違和感からも感じ取れる。

彼の発言には裏が存在する。

私を試すように彼は挑戦してきたようだ。

「やはり、

マジか

モジモジ、

とてつもなく」

明確な、アナグラムが。

私は気持ちに蓋をして、中居を見た。

中居は拳を力一杯握りしめたが、何も口にしなかった。

そして、スクリーンに映し出された映像はこれで終わった。

少し驚いたが、今はその事実より、この審査会をどうするか、もしくはどうなるか、だ。

今の“敵”は彼女達にとってはそうではないと考えられる。

「今の話、よく聞かせてもらった」

彼女の次の一言で1年生の今後の人生が変わるかもしれない。

だが、発せられる言葉はわかりきっている。

「確かに、2年生の不当な関与があったことは事実であり、それを彼らも承認していることから、是認するしかないことだ。しかし、本件において彼らに一切の責任は生じない。現在わが校において彼らを縛る法律が存在しないためだ。そのため、このまま審査会を行う」

敗色確定。そう、1年生の誰しもが思う。

だが、私は見ていた。映像再生中に、SP達が倒れていたことを。

そしてこれから更に事態が混沌とすることを。

「パーンパーンパーンシーンパーンパーンパーンシーンパーンパーンパーンシーン」

シンバルを叩いた音楽が鳴り響く。

「な、何事なのだ⁉︎」

のえるんが真っ先に気付いたようだ。

そして中居が警告を1年生にする。

「みんな、あそこによくあるシンバルを叩くチンパンジーの人形がこちらに向かって来ている。そして信じがたいことにあの強そうな人たちを倒したみたいだ。みんな、逃げて!」

言われるがまま、審査員の1年全員がその場から逃げようとする。

だが、後ろから言葉の氷が刺される。

「逃げる必要はない。ただの人形を恐れるな。何者かの審査会遅延行為の類だ」

「そうだよねぇ、冷川ちゃん。こんなのよくあることだしぃ」

よくあるのはかなりやばいとは思うが、ひとまず、人形から逃げる必要は無くなったようだ。

人形はそのまま前進を続け、スクリーンの方に移動した。

そして、停止した。

隣のフーマくんは安心したのか私に軽口を叩く。

「なんだ、あの人形何でもないじゃーー」


『『『ドカーーーーーーーーーーーーン』』』


とてつもない音をあげて爆発が起き、そこにはいくつもの爆死体が…

とはならなかった。

イメージとしては超大型のクラッカーのような感じだろうか。

大量のあのピラピラしたやつが人形の首から放たれていた。

少しほのぼのする展開である。

だが、そうほのぼのともしていられない。

「⁉︎ ない、ないよ。法律案のデータが。スクリーンも起動しない。何で⁉︎」

冷川の悲痛な叫びにも聞こえる声が会議室内に鳴り響く。

私と冷川を除く者達は状況を整理するので手一杯のようで、困惑の極みといった表情を浮かべている。

しかし、冷川は何かを思い出したようで、すぐに合点が入ったようだ。

だが、彼女の顔は憎悪に塗れたものに変わる。

「…道化」

なにをいってーーーーーー


「みなすわぁぁぁぁぁん⁉︎ハッピーに毎日暮らせていますかぁ!平等は大事ですよねぇぇぇぇんんんん!!!!!!!!!!!」


何だろうこの嫌悪感は。

まるで子供だらけの遊園地に親にいやいや連れ込まれた時のようなあのムズムズする気持ち悪さを少し感じてしまった。

私は別にこのハッピーな感じが嫌いなわけではないのだが、ちょっと流石にここまでくるとキツイかも…

ってそんなことは一旦置いておいて、声の主の方に顔を向けてみると。

そこには…


マジシャンのような仮面を被り、ニタニタと笑う人間…いや、道化がいた。


「皆さん、どうもこんにちは。ご機嫌いかがでしょうか。あぁ、ご紹介が遅れました。私、生徒会書記局長を務めております、酔狂と申します。以後、お見知りおきを」

どうも、ですぅ。

えぇ、皆さん、最近春とは何だろうと感じます。

だって、今あんま春って感じしなくない⁉︎

いや、気のせい?

私の家だけかなぁ…

それでは、また次作で〜

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