2.混沌審査会
冷川の宣言により、審査会が始まると、何処からともなく現れたSPのようなガッチリした体格の学生2人が黒いスーツと黒いサングラスを身にまとい、会議室の扉を閉めた。
そして、そのまま扉の前に張り付いた。侵入者を入れさせないのが目的か。
「おいおい、どういうことだ?この審査会には部外者は厳禁だろう?なぜ、審査員でない奴らが部屋に入ってる」
そう言うのはさっきから何かと首を突っ込む、岩豚である。
だが、今回の指摘もまたその通りの指摘である。
審査会には審査員しか入れないのは鉄則だ。これは他クラスに情報が漏れてその1クラスが有利になるのを防ぐためのものだ。
といった話は一切、先生からは聞いてはいないのだが、このような約束事を2、3年生で作っていたのではないか。
と言うのも、私2、3年生だけで会議をしているのを何回か見たこともあるうえ、今回の岩豚の発言に関しては2、3年生問わず多くの生徒が頷いているからだ。
「我々は、ただ扉を死守するのみ。文句があるなら耳栓でも何でもしてやろう」
すると、喋りそうにない感じだったSPっぽい学生2人のうち、より体が屈強な方が前に出てきてそう言った。それに追従するように、もう一人の学生も頷く。
「ふぅん。まぁいいんじゃない?こう言うアクシデントは審査会には付き物だし。そこの二人も、耳栓はしなくて大丈夫だよ。その代わり、後でじぃっくり話を聞かせてもらうけどね」
ここで、2、3年生双方に影響力の高いと思われる火輪が発言したのはお大きいだろう。
大半の上級生は火輪の発言に免じて、と言う形で不満な顔をするのをやめたようだ。岩豚に関しても、火輪には逆らえない様子だ。私達1年生は場についていけずに硬直していたが、場も落ち着いたお陰で皆、安心しているようだった。
少し、ハプニングは…(いや、少しではないが)あったものの、仕切り直して審査会が始まった。
「それでは、もう一度だが、審査会を始める」
いよいよ、私達が推敲した法律案のお披露目だ。
先ほどから少し気になっているのだが、冷川はオンオフのスイッチが激しいらしい。全くもって口調が違う。
「1年生は初めて見るだろうから、よく見て考えるように」
…はて?
私達の法律案はどうなったのだろうか。各クラスで、法律案を出し合うのでは?
あっけに取られていると、目の前のスクリーンに文字が映される。
『 校法案
1.全ての権益は、2,3年生にのみ与えられる。
2基本的人権は学校外では尊重しない。
3.第1項 1年生に発言権はない。
第2項 教員は原則、我々に干渉しない 』
1年生全員の顔が青ざめていく。
まず、見て思った第一印象は非常に内容が少ない、ということだ。
だが、これには当然理由がある。この3条の条文だけで、2、3年の権力を強力にし、学校の権力を強力にし、1年と教員の権力を弱めている。
そのインパクトは凄まじい。もし仮に、この国が無法になる前にこんな法律案ができていたら、それを言った人間はめでたく即辞職、社会的に抹殺されるはずだ。
しかしながら、今は無法だ。
クソという言葉が脳裏に浮かび上がる。我々1年生は嵌められたようだ。
どうやら、2,3年生を甘く見ていたらしい。
「先生からも聞いていただろうけれども、今回は私達が作った法を審査してもらう」
待て。待て待て。理解が追いつかない。私達は先生に法律を出し合うと教えられた。
だがなぜ?冷川の表情は嘘を言っている人間のソレではない。
と、いうこうことは…
「審査長。失礼ながら、我々は先生方にそのようなことは一言も聞いていません」
彼は、あの江戸豚が彼氏こと、中居である。1年2組だ。
「そうだぜ?俺もこんなんおかしいと思うんだが」
さらに松尾も発言をする。
だが、やはりこの冷川には想定外の発言だったのだろう。少し驚いた顔をして、すぐに困った顔になった。
「アレェ…おかしいな。先生にはちゃんと言ったはずんなんだけどなぁ… そうだよね?火輪ちゃん」
「うん、私達はちゃんと報告したはずだよ。みんなが知らないなんてあり得ないはずだけど」
と、3年生達は本当に何も知らないようだった。
「あぁ、それなら私達だよ」
何ともまぁ罪悪感ナシナシの声で2年生の方から声が聞こえる。
天川だ。
「何言ってるんですか?先輩」
そのように憤怒するのも当然だ。自分達の出鼻をくじかれ、これからの生活がかかっているというのに一切の干渉を許さないようなやり方をするだなんて。悪の極みだ。
「なぁ霧島。くだらないと思わないか。今頃言ったって負け犬の遠吠えじゃないか」
意外にも意外なタイミングで口を開いたのはフーマこと赫藺である。
ここは勿論、マドンナ的回答をする。
「そうかもしれないよ?でもね、私達は一生懸命考えて法律案を作ったの。それは他の一年生も同じ事。それに、この法律は私達の人生に関わるの。あまりふざけた決め方をされるのは勿論、いい気分じゃないよね」
「そんなものか」
「そんなものだよっ」
「ケッ」
ケッて何だよケッって。そんな事を考えている間に、2年対松尾&中居の戦いが始まっていた。
「おかしいですよ。俺達は必死にみんなにとっていい法律案を作ったんだ。それなのにそんなふざけたこと言われても納得できるわけないでしょ⁉︎」
「そんなこと言ったって、仕方ないことだと思うよ?だってさぁ… 」
天川が妙な間を開ける。そして皆の視線が天川に集まる。
「あの方がやったことなんだから」
…あの方?あの方とは誰だろう。
思い当たる人物は存在しない。生徒会長のことだろうか…
「誰なんだよ。そのあの方ってのは⁉︎」
「それは、我は説明しようぞ、松尾殿。」
「…」
怒りを抑えられないのか、松尾はのえるんを睨みながら黙っている。
それを後ろで中居が
「まぁ、松尾くん。僕もさっき声を荒げてしまったけど、ここは一旦説明を聞いた方がいい気がするよ」
どことなくモテ豚に似ているような話方が鼻につくが、そこは置いておこう。
「中居… 分かったよ。話は聞く」
すると、のえるんは『ふふぅん』と息を鳴らして、自慢げに説明を始めた。
「私達2年生は、何もクラス間で対立などしていないのだ!私達2年生は全て、あの方の指示によって動いている。あの方の考えることはまさに神の領域であり、深淵をも見通す力を持つ。まさに、至高の帝王である」
何というか、のえるん節(厨二病)がよく出ている発言である。
すると、2年4組のところに座っていた生徒が何を思ったのか笑いながら前に躍り出る。
「のえるん、もういいぜ。俺があの方の凄さを1年坊主共に教える」
「おぉ、流石使えない舎弟であるなぁ」
「うるせぇ、皮肉か」
頭は坊主で顔はチンピラって感じの雑魚そうな奴である。
のえるんに空気を乱されたあたり、ネタキャラ枠っぽい。
「…ゴホン。というわけでよく聞け、坊主共。あの方は俺たちのリーダーであるが、これ以上俺の説明は不要だ。なぜなら、今から本人に登場してもらう」
自分から躍り出ておいて説明しないのかいとツッコミしたくなるがそこは置いておこう。
最近色々置き過ぎな気もするが、そこは気にしない。
スクリーンに映像が流れ始める。
全員がその画像を睨んだり、吟味するように見たり、嬉々として見たりする。
「ンフフフフフフフ」
驚くほど低く、場の空気を破壊するほどの邪気を纏った笑いだ。
どもでもです。
春ですね〜
開花しましたよ桜が
待ちに待った桜が!
さぁ、私も桜を見て…
どうするんでしょう…
それではまたの話で〜




