第四話:心は嵐
メニュー表を確認していながら中々注文をしない七瀬。
優子さんが痺れを切らして向かおうとするのを止めるため、俺は優子さんに声を掛けながら、七瀬のところへ、ミルクティーを持っていく。
「お客様。大変差し出がましいとは思いましたが、悩んでおられたので、私めの入れた、イングリッシュ・ブレックファストと呼ばれるミルクティーでございます。
店長よりは詳しくありませんが…、ミルクティーで合わせると、大変美味であるとか…。
お口に合わなければ、残してもらっても構いません。
では、私めはこれで失礼させていただきます」
嘘である。
そもそも、七瀬はメニューを見ていたのではない。
メニューで自身を隠し、その横から覗き見ていたのだ。
伊達に学校で奴を観察していたわけではない。俺は七瀬についてならば、7割は理解していると言ってもいい。
だが、まだ足りないのだ。
これでは、足りない。
この程度では。
「……ねぇ…。よー君、狙ったでしょ」
「何がでしょうか?」
「あーはん。とぼけるか。オッケイ了解。把握した。
よー君は私に似てるからね」
「優子さんとは、決定的に違うところがありますがね」
「どうだかね。まぁでも、決定的に同じところもあるでしょう?」
「それは、否定できませんね」
「「恋愛が下手くそなところ」」
♪♪♪
いつも以上にいっぱい話してくれるわ!
嬉しい!!でも、これを他の女性客にも、してるのよね?…、やばい、狂いそう。
忘れなきゃ。
まって……嘘でしょう…?
なんで、私の好みがミルクティーだって知っているの!?
…世一君のところでは飲んでいない。
なぜ?学校でもミルクティーは買っていない…。
まさか!世一君は、私のストーカー!?
いえいえ!そんなわけないわ!
だって彼は多分私のことを好きじゃないもの!
………。悲しくなってきたわ。
せっかく世一君が入れてくれたのだもの。
温かいうちに飲まなければ。
冷めてしまったら、死ぬしかないわね…。
いや、だめだわ!
死んだら元も子もないじゃない!
だめよ!七瀬!あの日決めたじゃない!
絶対に世一君と添い遂げてみせると!
え…、なにこれすごい美味しい…。
料理もできて、紅茶も入れれて、勉強もできて、掃除もあんなピカピカにできるレベルで……、対して私は…、料理は…できない…、掃除も…、できない…、いや!人並みにはできるわ!
紅茶は、むりね…。
わたしには、勉強しかないわ…。
ていうかさっきからあの女馴れ馴れしくない?だれなの?あ、ヤバいまた狂いそう…。
世一君!私の心を浄化して!
♪♪♪
何度か、七瀬に呼び出され、ちょっとした会話を挟み、七瀬は帰って行った。
「なんか、終始無表情で、よー君に似てるね?」
「いえ。ゆるゆるでしたよ」
「…え?何を見てたの?」
「表情ですが」
「……まじかよ」
「では、お先失礼します」
「おっと、よー君。逃がすわけないでしょ?」
ですよね〜。




