第十二話:達成
「一つ聞いてもいいですか?」
「なんだ…?」
「何故、放置したんですか?
こんなにも長く」
かなりの時間が経過してから溜息を吐いて。
「…嫌われていると考えていた。
さっきも言ったが仕事も忙しい。
それに、いなくても問題ないと考えた。
時間が経って、新菜も仕事に明け暮れている事に気づいた。
離れていたほうが上手くいくと。
その後はお見合い相手でも探して、とね」
「はぁ…、なんでもっと早く話し合わなかったんですか?
ふざけてるんですか?」
「さっきも思っていたがもっと言い方を考えなさい。
……まぁ、私は言えないかもしれないが…」
「ほんと走って来て良かったですよ」
「…、見ればわかる。
学校から、ここまではそれなりに距離がある。
授業中に抜け出してきたんだろう?」
「マナーモードにはしてましたけどね。
連絡をしてくる人物は、条件的に1人しかいません。
あんな時間に連絡が来る。
つまり、”何かあった”と考えるのが普通です」
「はぁ…、まったく。
他人にそこまで動くことができるものか?」
「いいえ。七瀬だけです。
それと七瀬の母、新菜さんと仰っていましたね?
ちゃんと話し合ってください」
「彼女なら大丈夫だよ。
私に対して一度も連絡してこないし、七瀬にも会ってないことは知っている。
それよりも聞かせてくれ。
君は七瀬が好きか?」
「…それは貴方には言えません。
ただ、言っておきます。
七瀬から来るのなら、私は拒みませんし、全力で相手すると」
「…そうか。それにしても、かなり準備してきたな…?」
「それなりには用意してましたよ。
これもです。
ちゃんと読んでください。
この後、私の両親にも、話を付けます。
やる事が山積みなので、できるだけ早くしてくださいね」
「…、覚書…?君はビジネスマンか、何かなのか…?」
「ビジネスはしたことありませんね」
ーーーー
「ふぅ…。ちょっとだけ緊張したな」
「……全然そうは見えなかったけど…?」
「するさ。
言っても相手は大人だ。
100%相手が悪くても、こちらにも非がある行為をするんだ。
そういう時は何度やっても緊張する。
失敗できないしな」
「…世一君」
「ん?」
「ありーー」
「ストップ。まだ終わってないぞ?
そこから先は全て終わってからにしてくれ」
「……分かった」
ーーーー
「「………」」
「というわけだ。父さん、母さん。
色々と準備は整ったから、後は引っ越しするだけ。
父さんと母さんの許可さえくれれば、俺はーー」
「父さんはね。むしろね…。ありがたいかもね…。でも、父さんね。複雑かもしれない」
「母さんはね。滅茶苦茶うれしいけどね。
でも母さんね。複雑だわ。ホントに」
「……す、すみません…」
「…?なんで七瀬が謝るんだ?」
世一は静かに、内心でほっとしながら、手帳に達成の二文字を刻んだ。




