第22話「開いていた扉」
22話目になります。
よろしくお願いします。
『世界から逃げる男』のショート映像をYouTubeでも公開しています。
本編とあわせて、映像でも世界観を楽しんでもらえたら嬉しいです。
翌日の午後一時四十七分。
久世透真は、昼休憩を七分残して仕事へ戻っていた。
別に勤勉だからではない。
午後に残しておくと面倒になりそうな作業を、先に片づけているだけだった。
モニターには広告原稿の修正版。
右側には取引先から届いたメール。
机の端には、昼食だったコンビニのおにぎりの包装が小さく畳まれている。
事務所の中には、キーボードを叩く音と、空調の低い駆動音が流れていた。
窓の外は晴れている。
八月の光が向かいのビルの窓へ反射し、白く眩しい。
透真はマウスを動かし、修正した画像を一枚ずつ確認した。
「久世さん」
少し離れた席から廉沙莉が顔を上げた。
「はい」
「今日、定時で上がるんですよね?」
「その予定です」
「その予定って言う人、大体上がれないですよ」
「じゃあ、上がります」
「急に強い」
沙莉が笑う。
透真は視線をモニターへ戻した。
今日中に終わらせる必要がある仕事は、あと二つ。
どちらも大した量ではない。
午後五時半までには終わる。
終わらせてから病院へ行く。
昨日の時点で、そう決めていた。
そのために朝から少しだけ仕事の順番を変えている。
わざわざ誰かに言うほどのことでもない。
「病院か」
低い声がした。
大場泰然だった。
大きな身体を椅子へ預けながら、伊達眼鏡越しに透真を見る。
「はい」
「仕事は」
「終わらせます」
「ならいい」
それだけだった。
大場は再び手元の資料へ視線を落とした。
以前なら、もう少し何か言われていたかもしれない。
何を調べている。
いつまで続ける。
危険じゃないのか。
そういう問いを。
最近は言われなくなった。
透真が説明しないことを、大場が諦めたわけではない。
必要な時には自分から話すだろう、と待たれている。
それはそれで少し面倒だった。
問い詰められた方が、逃げる理由を作りやすい。
スマートフォンが震えた。
机の上。
表示された名前を見て、透真は手を止める。
相良修司。
通話を取った。
「はい」
『久世か』
「違います」
『切るぞ』
「久世です」
『最初からそう言え』
電話の向こうで、小さく息を吐く音がした。
『昨日言ってた写真。工事会社に残ってた保存データまで辿れた』
透真の指がマウスから離れた。
「原本ですか?」
『原本、って言い切ると少し違う。撮影した端末そのものに入ってたデータじゃない。工事会社の記録用サーバーに保存されてた画像だ。少なくとも、今まで見てた印刷コピーよりは遥かに元に近い』
「見られます?」
『そのために電話してる』
「今日?」
『俺は明日でもいいぞ』
「今日で」
一拍。
『……そう言うと思った』
「なんでですか」
『知らん』
相良の声に、わずかな笑いが混じった。
『鍵の方も少し出た。全部じゃない。施設管理の古い台帳と、工事期間中の貸出表。それから当時の扉の仕様書』
「鍵穴の型も?」
『そこまで分かるかは現物を見ないと何とも言えん。ただ、メーカーとシリンダー系列までは追える可能性がある』
透真は時計を見る。
十三時五十分。
「六時半くらいなら行けます」
『分かった』
「あ」
『なんだ』
「アリスさんも行きます」
『本人に確認したのか』
「これからします」
『じゃあ確認してから言え』
通話が切れた。
透真は数秒スマートフォンを見た。
正論だった。
メッセージ画面を開く。
『今日、六時半に病院です。写真と鍵の資料が出ました。来ます?』
送信。
十秒もしないうちに既読がついた。
『行きます』
その下に、すぐもう一件。
『プリンですか?』
透真は画面を見た。
昨日の会話を思い出す。
次は僕が買います。
自分で言った。
言った以上、逃げる理由がない。
『飲み物でもいいですか』
『プリンです』
『選択肢がない』
『昨日、何か買うって言いました』
『何か、です』
『じゃあプリンという何かで』
「……」
「何ニヤニヤしてるんですか?」
沙莉の声がした。
透真は顔を上げた。
「してません」
「してましたよ」
「してません」
「彼女?」
「違います」
「じゃあ白峰さん?」
「どうして二択なんですか」
「違うんですか?」
「質問を質問で返さないでください」
沙莉が楽しそうに笑った。
透真はスマートフォンを伏せる。
向かいから大場がこちらを見ていた。
「何ですか」
「いや」
「何ですか」
「別に」
今度は自分がやられた。
透真は無視して仕事へ戻った。
*
午後六時二十二分。
病院一階のロビーには、昼間とは違う静けさがあった。
外来受付の大半は閉まり、照明も一部が落とされている。
自動販売機の明かりだけが妙に白く見えた。
透真は片手に小さなコンビニ袋を持ち、壁際の長椅子へ向かった。
白峰アリスはすでに来ていた。
薄い水色のパーカー。
長いプラチナブロンドの髪が、冷房の風にわずかに揺れている。
透真を見ると、彼女は時計を確認した。
「八分前です」
「早いですね」
「透真さんもです」
「僕は普通です」
「私も普通です」
「それは嘘です」
「私の台詞を取らないでください」
アリスが立ち上がった。
その視線が、透真の手元へ落ちる。
「それ」
「はい」
「プリンですか?」
「残念ながら」
透真は袋を渡した。
アリスが中を見る。
二個のプリンと、ペットボトルの紅茶。
数秒の沈黙。
「プリンじゃないですか」
「そうですね」
「残念ながら?」
「買ってしまいました」
「自分で?」
「コンビニの店員さんに強制されて買うことってあります?」
「ないですね」
「じゃあ自分でです」
アリスは袋を抱えた。
必要以上に喜ぶでもなく、驚くでもなく。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
それだけだった。
昨日交わした小さな約束が、今日、普通に履行された。
透真にとっても、アリスにとっても、それ以上の説明は必要なかった。
「食べます?」
「今?」
「溶けませんけど、冷たい方が美味しいので」
「資料見ながらプリン食べるの、怒られません?」
「相良さんなら怒りそうですね」
「じゃあ後で」
「はい」
二人は並んで歩き始めた。
廊下を進み、エレベーターへ向かう。
アリスが横から透真を見た。
「鍵、持ってきました?」
「持ってます」
「ちゃんと?」
「昨日言ったので」
「見せてください」
「今?」
「今です」
透真はジャケットの内側へ手を入れた。
小さな透明袋。
その中に、古びた一本の鍵が入っている。
何度見ても、特別なものには見えない。
真鍮に近い鈍い色。
細かな傷。
使われた時間だけが表面に残っている。
アリスは袋越しに鍵を見た。
「……古いですね」
「新しかったら名前に偽りがありますから」
「古い鍵って呼んでるだけですよね?」
「じゃあ今日から鍵にします」
「情報量が減りました」
透真は袋を戻した。
エレベーターの扉が開く。
二人が乗り込む。
扉が閉じる直前、アリスが言った。
「でも、持ってきたんですね」
「比較するって昨日決めたので」
「はい」
「何ですか」
「何も」
アリスは前を向いた。
透真もそれ以上は聞かなかった。
*
相良は、昨日とは別の小会議室にいた。
長机の上にはノートパソコンと数冊のファイル。
さらに透明なクリアファイルに入った図面と、紙焼きの写真が数枚並べられている。
「遅い」
「まだ六時二十九分です」
「俺が待った時間の話だ」
「それは僕の責任じゃないですね」
「お前は本当にそういうところだけ一貫してるな」
「褒め言葉として受け取ります」
「褒めてない」
相良はアリスを見る。
「白峰さんも来たか」
「はい。私が来るって決めました」
「久世に連れてこられたんじゃなく?」
「違います」
「ならいい」
相良はそれ以上何も言わなかった。
透真が椅子へ座る。
アリスはその隣ではなく、机の角を挟んだ斜め向かいへ座った。
資料全体を見渡しやすい位置だった。
「まず写真だ」
相良がノートパソコンを回した。
「工事会社に残ってた保存データ。撮影後に社内サーバーへ移したものらしい。撮影端末のデータそのものは残ってない。だから厳密な意味で原本とは呼ばない」
画面に写真が表示される。
見慣れた旧棟五階西側の廊下。
しかし、これまで見ていたものとは明らかに違った。
輪郭がある。
コピーでは黒く潰れていた部分に濃淡がある。
壁の汚れ。
床の養生材。
扉の縁。
そして。
十五歳の久世透真。
少し離れた位置に立つ少年。
その先。
白い服の女性。
さらに奥。
520。
透真は無意識に呼吸を浅くした。
自分の過去を見ている。
その感覚には、未だに慣れない。
写真の中の少年が自分だという事実は、音声によってほぼ逃げ道を失っている。
それでも。
そこに立っていた時の自分を、今の自分は覚えていない。
知らない人間の写真に、自分の顔だけが貼り付いているようだった。
「拡大するぞ」
相良が操作する。
520号室。
扉と枠の境界。
昨日までのコピー写真では、細い黒い線にしか見えなかった部分。
画面上で大きくなる。
透真は目を細めた。
「影……だけじゃないですね」
「俺もそう見た」
相良が別の画像を開く。
「こっちは後の写真」
資材移動後。
ほぼ同じ区画を撮影した写真だった。
完全に同一の撮影位置ではない。
角度も数度違う。
それでも比較はできる。
「こっちはない」
相良が指した。
扉と枠の境界。
問題写真にあった暗部が、後続写真では消えている。
「照明の差は?」
透真が聞く。
「ある。だから最初はそれを疑った」
相良は机上の紙を一枚取った。
「当時の建具仕様を施設管理から出してもらった。旧棟五階の病室扉は片開き。廊下側から見て、520は右吊り元。室内側へ開く」
画面の扉と図面を交互に指す。
「問題の暗部があるのは戸先側だ」
透真は写真を見る。
蝶番側ではない。
扉が閉じる側。
「つまり?」
アリスが尋ねた。
「扉が室内側へ数センチ開けば、廊下側からはこの位置に隙間が出る」
「数センチ?」
「写真から正確な幅は出せん。撮影角度もあるし、扉の厚みも影響する」
相良はマウスを動かした。
問題写真と後続写真を並べる。
「ただし、単純な印刷汚れって線はかなり薄くなった」
「データにもあるから」
透真が言う。
「ああ」
「レンズとか、光は?」
「それも残る」
相良は即答した。
「だから写真だけなら断定しない」
次に、別の資料を開く。
扉の断面図だった。
「問題はこっちだ」
相良が指で図面を叩いた。
「この扉にはドアクローザーが付いてた」
「自動で閉まるやつですか?」
アリスが聞く。
「そうだ。ただし、自動施錠とは違う」
相良は言葉を切った。
「ここ、混同すると話がおかしくなる」
透真は図面を見る。
「閉まることと、鍵が掛かることは別」
「そういうことだ」
相良が頷いた。
「520の錠は当時、ラッチ付きのシリンダー錠。少なくとも資料上、ホテルみたいに扉を閉めた瞬間に外側から必ず施錠される方式じゃない。閉鎖状態と施錠状態は別だ」
「じゃあ、『原則施錠』っていうのは」
アリスが言った。
「人が鍵を掛ける運用だった」
「そうなる」
相良は続ける。
「ただ、扉自体はドアクローザーで閉じる。正常なら、手を離せば最後まで戻る」
「正常なら」
透真が拾った。
「そこだ」
相良は別の紙を出す。
「保守記録も見た。十九日から二十一日までの間、520のドアクローザーに故障報告はない。五階西側全体を広げても、その三日間に建具の不具合報告は出てない」
「故障してなかった証拠ではないですね」
「ああ。報告がないだけだ」
相良はすぐ認めた。
「現場で一時的に引っ掛かった。物が挟まってた。誰かが手で押さえてた。閉まり切る前に写真が撮られた。そういう可能性は残る」
透真はもう一度、写真を見る。
細い暗部。
ただの黒い線だったもの。
今は違う。
扉の戸先側に沿って、上から下へ濃淡が続いている。
完全な直線ではない。
床に近づくにつれて、わずかに幅が変わる。
「これ」
アリスが立ち上がった。
画面へ顔を近づける。
「何だ」
「後の写真、もう一回大きくできますか?」
相良が拡大する。
アリスは問題写真と後続写真を何度も見比べた。
「扉の取っ手」
「取っ手?」
透真も見る。
「問題の写真の方が、少しだけ位置が違って見えません?」
相良が目を細めた。
「角度じゃないのか」
「かもしれません。でも、扉の枠じゃなくて、取っ手と扉面の見え方です」
アリスは自分の手を机の上で動かした。
扉を模すように、手のひらを立てる。
「閉じてる時と、少し開いてる時って、取っ手の見える面積も変わりますよね?」
相良が何も言わず画像を切り替える。
問題写真。
後続写真。
前の写真。
再び問題写真。
「……待て」
相良が図面を引き寄せた。
扉の寸法。
取っ手の位置。
さらに写真。
「白峰さん」
「はい」
「そこ、よく気づいたな」
「物より、人がどう使うかを見てたので」
「人?」
「扉って、人が使うものじゃないですか」
アリスは写真の白い女性を指した。
「この人が扉の近くにいるから、最初は手を見てたんです。開けようとしてるのか、閉めようとしてるのか。それで取っ手が気になりました」
透真は女性の手元を見る。
だが。
「手は分かりませんね」
「はい」
アリスも頷く。
白い女性の腕らしき輪郭は確認できる。
しかし手首から先は、服と背景に溶けている。
扉へ触れているのか。
何かを持っているのか。
それとも何もしていないのか。
そこまでは見えない。
「でも扉は……」
アリスが呟いた。
相良が画像を見たまま答えた。
「ああ」
数秒。
誰も喋らなかった。
相良が椅子の背へ身体を預ける。
「少なくとも、この写真が撮られた瞬間」
指先で、520号室の扉を示す。
「扉は完全には閉じてない」
透真は写真から目を離さなかった。
相良は続ける。
「暗部だけなら影の可能性を残した。だが保存データで戸先側の隙間が確認できる。取っ手の見え方も、扉面がわずかに振れている状態と矛盾しない。後続写真では閉鎖状態に戻っている」
「確定ですか?」
透真が聞いた。
「言い方を選ぶなら」
相良は一度考えた。
「問題写真の撮影時、520の扉は完全な閉鎖位置にはなかった。これはかなり強く言っていい」
そこで区切る。
「ただし、開けた人間がいたとは言ってない」
「ドアクローザーが閉じてる途中かもしれない」
「そうだ」
「誰かが物を出し入れした直後かもしれない」
「そうだ」
「何かが挟まってたかもしれない」
「そうだ」
「故障記録がないだけで、正常だった保証もない」
「その通り」
相良が透真を見る。
「珍しく話が早いな」
「昨日から同じことやってますから」
「嫌にならんか」
「なってますよ」
透真は即答した。
「かなり」
アリスが笑った。
「でも来てます」
「来ない方が後で面倒なので」
「便利ですね、その理由」
「大体のことに使えます」
透真は画面へ戻る。
原則として閉ざされていた部屋。
その扉が。
写真の瞬間には、閉じ切っていなかった。
それだけ。
誰が開けたのかは分からない。
何のために開けたのかも分からない。
中に誰かがいたのかも分からない。
それでも。
十年前の一枚の写真から、初めて一つの状態だけが切り取られた。
520は。
あの瞬間。
開いていた。
*
「で、ここからが面倒な方だ」
相良が厚いファイルを机へ置いた。
「鍵だ」
「帰っていいですか?」
「駄目だ」
「面倒って聞いたので」
「お前が調べろって言ったんだろうが」
「昨日の僕に言ってください」
「目の前にいるだろ」
「昨日の僕ではないです」
「屁理屈だけは一日で更新されるんだな」
アリスが口元を押さえている。
「笑わないでください」
「笑ってません」
「嘘ですね」
「便利ですね、それ」
さっきの言葉を返された。
相良は二人を無視してファイルを開いた。
「まず結論から言う。520専用の一本だけが鍵箱に保管されてて、それを借りた人間の名前が全部残る――みたいな単純な管理じゃなかった」
ページをめくる。
「当時の五階西側には、複数の鍵系統があった」
相良は指を動かす。
「各室の個別鍵。病棟側の共通鍵。施設管理側が持つ管理鍵。それと、工事期間中に責任者へ貸し出されてた鍵」
「全部で520を開けられた?」
「全部、ではない。そこを今確認してる」
相良は鍵一覧のコピーを見せた。
番号。
管理区分。
貸出先。
返却欄。
十年前の紙を複写したものらしく、一部は薄い。
「520の個別鍵は存在した。ただ、用途変更後に個別鍵を毎回貸出簿で管理してた形跡は薄い」
「どういう意味です?」
アリスが聞く。
「病棟側に常備されてた可能性が高い」
「使うたびに名前を書かない?」
「そういう運用だったらしい」
相良は頷いた。
「病棟の共通鍵も同じだ。職員が業務中に使うたび、何時何分に何号室を開けたなんて記録は残さない」
「じゃあ」
透真が紙を見る。
「八月二十日に520を開けた記録がないっていうのは、思ったより弱いですね」
「そうなる」
相良は即答した。
「昨日まで見てた搬入出記録は、部屋の用途上の記録だ。物を入れた、出した。そういう作業があれば残る。だが、扉を開けた行為そのものを全部記録してたわけじゃない」
「つまり」
アリスが言う。
「誰かが確認のために開けて、何も持ち出さず、何も入れず、閉めたなら」
「記録が残らない可能性はある」
「普通に?」
「普通にだ」
相良はページをめくった。
「施設管理側も似たようなものだ。こっちは管理鍵そのものの貸出記録は残る。ただし、借りた鍵でどの扉を何回開けたかまでは残らん」
「工事責任者も?」
「ああ」
八月十九日。
貸出。
返却。
八月二十日。
貸出。
返却。
八月二十一日。
貸出。
返却。
同じ管理番号が三日間並んでいる。
「これが五階西側の管理鍵?」
「その一つだ」
「二十日にも普通に貸し出されてる」
「工事をしてるからな」
相良は言った。
「だから、鍵の記録だけ見れば異常はない」
透真は三日分を追う。
十九日には520への物品移動がある。
二十一日にもある。
二十日にはない。
しかし。
鍵自体は、三日とも人の手に渡っている。
「十九日と二十一日は、搬入出記録と鍵の貸出が両方ある」
「ああ」
「二十日は鍵の貸出だけ」
「そう見える」
「でも、その鍵を520に使ったかどうかは分からない」
「分からん」
「使ってないかもしれない」
「もちろんだ」
相良が腕を組む。
「工事区画全体で使える管理鍵だからな。二十日に貸し出された理由自体は、五階西側の作業で説明できる」
「520を開けるために借りたわけじゃない」
「少なくとも、そう書いた記録はない」
透真は紙から視線を上げた。
「じゃあ、候補は結構残りますね」
「病棟側の共通鍵を扱えた職員。施設管理担当。当日の工事責任者。520の個別鍵へアクセスできた職員」
「清掃は?」
「確認した。清掃側が独自に520の鍵を持ってた記録は今のところない。必要なら病棟側か施設側に開けてもらう運用だった可能性が高い」
「看護師は?」
「病棟共通鍵を扱えた可能性がある。ただし当日の誰が実際に持っていたかまではまだ絞れてない」
アリスが写真を見る。
「女の人だった可能性もある」
「ある」
相良は言った。
「男だった可能性もある」
「あります」
「写真の女性が病院職員だった証拠もない」
「はい」
「だから、まだ繋げるな」
「繋げてません」
「顔が繋げてる」
「顔で判断するんですか?」
「刑事だからな」
「便利ですね」
「お前ら二人ともその言葉好きだな」
透真は写真を見る。
白い女性。
520の扉付近。
扉は完全には閉じていない。
鍵を使える人間は複数いた。
使用記録が必ず残る仕組みでもなかった。
なら。
ここまでは普通に説明できる。
誰かが開けた。
何かを確認した。
閉じる途中だった。
たまたま工事記録写真に写った。
それだけかもしれない。
むしろ、そう考える方が自然だった。
「これなら」
透真が言った。
「別に変じゃないですね」
相良が頷く。
「今のところはな」
「写真が撮られる少し前に、誰かが520を開けた。用事が終わって閉めた。その途中」
「あり得る」
「搬入出がなければ記録も残らない」
「あり得る」
「白い人はたまたまそこにいた」
「それもあり得る」
「僕もたまたまそこにいた」
相良は返事をしなかった。
透真は少しだけ笑う。
「そこだけ嫌そうですね」
「偶然が二つ三つ重なると、確認したくなるだけだ」
「職業病ですね」
「お前に言われたくない」
その時。
アリスが写真を持ち上げた。
「相良さん」
「なんだ」
「鍵って、どう持ってたんですか?」
相良が眉を寄せる。
「どう、って?」
「こういう管理鍵です」
アリスは机の上の貸出表を指す。
「一本だけ裸でポケットに入れるんですか?」
「いや」
相良がファイルをめくる。
「そこも少し資料がある」
古い備品管理資料。
鍵の管理方法を示す写真ではない。
紛失防止についての注意書きだった。
「施設管理側の鍵は複数をまとめて持つことがあった。キーリング、チェーン、後年はリール式も使ってる。当時の備品表にもチェーンの記載がある」
「銀色?」
「材質までは分からん」
「じゃなくて」
アリスは原本に近い画像を指した。
「この人です」
白い女性。
胸元。
コピーでは、細い銀色の線にしか見えなかった。
相良が拡大する。
画像が粗くなる直前まで。
そこには確かに。
細い線状のものがあった。
首元から胸。
そして、斜め下へ。
コピーで見た時よりも長い。
「……ネックレスじゃない?」
透真が言う。
「かもしれません」
アリスは否定しなかった。
「名札のストラップとか」
「あり得ます」
「服の装飾」
「それも」
「じゃあ何が気になるんですか」
アリスは少し考えた。
そして、自分の胸元から腰へ手を動かした。
「長さです」
「長さ?」
「普通のネックレスなら、ここからこう落ちますよね」
首元から胸の中央。
「でもこれ、途中から少し横に流れてるように見えません?」
透真は画面を見る。
確かに。
真下ではない。
身体の向きのせいとも考えられる。
服の皺かもしれない。
背景の線が重なっているだけかもしれない。
「手の方に伸びてる?」
透真が言った。
「そう見えるだけかもしれません」
アリスはすぐに付け足した。
「先が見えないので」
相良が画像をさらに拡大した。
粒子が目立つ。
輪郭が崩れる。
白い女性の手元は、判別できない。
銀色の線も、腰付近で途切れている。
正確には。
何かに隠れている。
「これ以上は無理だな」
相良が言った。
「鍵は見えない」
「はい」
「鍵じゃないとも言えない」
「はい」
アリスは写真を見たまま頷いた。
「ただ」
彼女は貸出表へ視線を移した。
「昨日までは、これが何なのか考える時に、ネックレスとかアクセサリーとかしか思いつかなかったんです」
指先が、銀色の線の上をなぞる。
「でも、鍵を持って歩く人が実際にいたなら」
そこで止める。
相良が続けた。
「鍵用のチェーンという可能性も候補には入る」
「はい」
「それだけだ」
「それだけです」
アリスは素直に頷いた。
透真は黙っていた。
写真。
白い女性。
銀色の鎖。
520。
昨日までは別々だった。
今日。
初めて、それらの間に一本の普通の説明が通った。
鍵。
超常現象でもない。
特殊な道具でもない。
病院の中で、人が部屋を管理するために使う、ただの鍵。
だからこそ。
透真はジャケットの内側へ手を入れた。
「相良さん」
「ん?」
「これ」
透明袋を机へ置いた。
古い鍵。
相良の顔から、わずかに力が抜けた。
「持ってきたのか」
「昨日言ったので」
「どこから出た物か、もう一回確認するぞ」
「経緯は前に話した通りです」
相良は頷いた。
既に確認されている出自について、必要な部分だけを短く照合する。
透真も余計な言葉を足さなかった。
十年前の記憶が曖昧だからといって、今ある物の来歴まで都合よく変えることはできない。
相良は手袋をつけ、透明袋越しに鍵を確認した。
「昨日、施設管理に写真を送ってある」
「この鍵の?」
「ああ。現物を見せる前提じゃないから、まず形状だけだ」
「何か分かりました?」
「少しな」
相良は別の紙を出した。
そこには古い鍵の仕様図が印刷されていた。
「520を含む旧棟五階西側の一部で使われてたシリンダーは、同じメーカーの同系列製品だった可能性が高い」
透真は鍵を見る。
「メーカーは?」
相良が答える。
袋の中の鍵。
その持ち手部分にある、擦れて薄くなった刻印。
同じだった。
透真は何も言わない。
「ただし」
相良が先に釘を刺す。
「このメーカーの鍵なんて珍しくもない」
「でしょうね」
「病院の中でも複数使われてる。同じメーカーだから520の鍵、なんて話にはならん」
「系列は?」
「そこが次だ」
相良は古い鍵の拡大写真と、仕様書を並べた。
「鍵の全長。ブレード幅。持ち手の形。溝の基本配置」
一つずつ。
指で追う。
「少なくとも、形式上は同じ系列に入る可能性が高い」
アリスが鍵を見る。
「520に入るんですか?」
「そこまでは分からん」
相良が即答する。
「鍵は同じ系列でも、切り込みが違えば開かない。個別鍵なら当然だ。共通鍵やマスター系統との関係も、現物のシリンダーか正確な鍵番号がないと判断できん」
「番号は?」
透真が聞く。
「お前の鍵は、刻印の一部が摩耗してる」
相良が袋の上から角度を変える。
照明が表面を滑る。
確かに文字らしきものがある。
だが全ては読めない。
「完全には取れない?」
「今ここではな」
「じゃあ、確定してるのは」
透真が言った。
「少なくとも、520に使われてた鍵と形式上まったく別物ではない」
「ああ」
相良が頷く。
「この鍵が、520を含む旧棟の当時の鍵系列と同じ規格に属していてもおかしくない。そこまでは言える」
「520の鍵とは言えない」
「言えない」
「520を開けられたとも言えない」
「言えない」
「病院の別の場所の鍵かもしれない」
「十分ある」
「病院と関係ない可能性も?」
「同じメーカー、同系列の設備が別施設に使われてりゃな」
「じゃあ」
透真は椅子へ背を預けた。
「全然分からないですね」
「お前、今までの話聞いてたか?」
「聞いてたから言ってます」
相良が眉間を押さえた。
アリスが鍵を見ながら小さく笑う。
「でも、一個は減りましたよ」
「何がです?」
「絶対に違う鍵、ではなくなった」
透真は彼女を見る。
「候補が増えただけでは?」
「違います」
アリスは首を横に振った。
「昨日までは、520とこの鍵を並べる理由がなかったんです」
机を見る。
写真。
鍵管理表。
扉の仕様書。
古い鍵。
「今日は、比べてもいい理由ができました」
透真は答えなかった。
それは、たぶん正しい。
鍵が答えになったわけではない。
ただ。
無関係だと捨てる理由もなくなった。
*
午後七時五十八分。
資料を見始めてから一時間以上が過ぎていた。
会議室の外を通る人の数も減った。
遠くで清掃用カートの車輪が鳴る。
アリスがプリンの入った袋を見た。
「食べていいですか?」
「今ですか」
「さっきより今の方が冷たくないです」
「理屈が逆では?」
「これ以上待つともっと冷たくなくなります」
「それはそうですね」
相良が顔を上げる。
「ここで食うのか?」
「怒ります?」
「資料から離れろ」
「はい」
アリスは素直に机の端へ移動した。
透真もプリンを一つ渡される。
「僕の分もあるんですか」
「二個買ったの透真さんですよ」
「アリスさんが二個食べるかと思って」
「食べられますけど」
「じゃあどうぞ」
「嫌です」
「なんで」
「透真さんも食べてください」
押し返された。
仕方なく蓋を開ける。
プラスチックの小さなスプーン。
十年前の病院資料の横で食べるには、妙に平和な味だった。
「美味しいですね」
アリスが言う。
「普通です」
「普通が一番です」
「アリスさんが言うと説得力がない」
「どういう意味ですか?」
「そのままです」
「失礼ですね」
その会話を聞きながら、相良はコーヒーを飲んでいた。
「相良さんも食べます?」
「いらん」
「一個しか残ってませんけど」
「じゃあ聞くな」
アリスが笑う。
ほんの数分。
誰も写真を見なかった。
誰も520と言わなかった。
誰も十年前を口にしなかった。
透真はプリンを食べ終え、容器を袋へ戻す。
そして自然に、また机へ視線を戻した。
自分でも少しだけ嫌になる。
以前なら。
今日はここまで。
続きは相良に任せる。
何か分かったら連絡してください。
そう言って帰っていた。
その方が楽だ。
今だって、帰ろうと思えば帰れる。
相良が調べるだろう。
病院も調べる。
自分がここにいる必要はない。
なのに。
机の上に置かれた古い鍵が、妙に気になった。
「……十五歳の僕の音声」
透真が言った。
相良が顔を上げる。
「なんだ」
「『部屋を見てました』って言ってましたよね」
「ああ」
長く再生する必要はなかった。
声はもう覚えている。
自分の声なのに。
自分では知らない声。
白い人は先にいました。
女の人だと思います。
そして。
部屋を見てました。
「前は」
透真は原本に近い写真を見る。
「白い人が520を見てた、くらいの意味だと思ってました」
アリスも写真を見る。
「今は?」
「分かりません」
透真は少し考える。
「でも、扉が閉まってたのと、開いてたのとでは意味が違う」
相良が黙って聞いている。
「閉まってる部屋を見てるのと」
透真は写真の暗部を指した。
「開いてる部屋を見てるのは、同じじゃない」
アリスの表情から笑みが消えた。
「中を見ていた可能性もある?」
「可能性だけなら」
透真は答える。
「でも写真では、そこまで分からない」
白い女性の顔の向き。
身体。
扉との距離。
どれも、決定的ではない。
さらに少し離れた場所。
十五歳の透真。
少年も520側へ身体を向けているように見える。
ただし。
女性を見ていたのか。
扉を見ていたのか。
室内を見ていたのか。
別の何かを見ていたのか。
写真には答えがない。
「僕も」
透真が言った。
「扉が開いてたから止まった可能性はありますね」
「脚は?」
相良が聞く。
「短距離なら歩けた」
「写真の位置までなら?」
「それだけなら否定できないでしょうね」
相良が頷く。
右脚の怪我。
業者記録との食い違い。
それはまだ残っている。
だが今は中心ではない。
透真は写真の中の自分を見る。
白い女性との距離。
二人は向かい合っていない。
少なくとも写真上では。
女性は透真を見ていない。
透真も女性を見ていないように見える。
二人の間に会話があったようにも見えない。
それなのに。
二人とも。
520の方向へ注意を向けているように見える。
「追いかけてたわけじゃないのかもしれませんね」
アリスが言った。
「誰が?」
「十五歳の透真さんが、白い人を」
透真は写真を見る。
「そうですね」
アリスは女性を指す。
「この人は先にいた」
次に少年を指す。
「透真さんは後から来た」
「音声ではそうなります」
「でも、この写真だけ見ると」
アリスは二人の間へ指を置いた。
「二人が一緒にいるようには見えないんです」
透真は目を細めた。
「同じ場所にいるのに?」
「はい」
「矛盾してません?」
「同じ場所にいるのと、一緒にいるのは違います」
アリスは静かに言った。
「二人とも、相手じゃないものを気にしてるように見えるから」
520。
透真の視線が、自然にそこへ戻った。
閉ざされていたはずの部屋。
だが。
写真が撮られた瞬間だけを見れば。
扉は完全には閉じていない。
そして、その近くに白い女性がいる。
少し離れて十五歳の自分がいる。
偶然。
それで説明できる。
今でも。
白い女性が職員なら、なおさらだ。
鍵を使える立場だったかもしれない。
別の職員が開けた後だったかもしれない。
工事責任者が確認した後だったかもしれない。
病棟共通鍵なら、使用記録が残らなくてもおかしくない。
普通の可能性は、まだ大量にある。
だが。
透真は机の上の鍵を見る。
「相良さん」
「なんだ」
「これ、実際に520で使えるか調べられないんですか」
「旧棟はもう当時のままじゃない」
「ですよね」
「それに、現存する扉に差して開いたとしても、シリンダー交換されてたら意味が変わる」
「じゃあ逆に」
透真は古い鍵を指した。
「鍵じゃなくて、鍵穴側は?」
相良の片目が細くなる。
「シリンダーか」
「はい」
「当時の520のシリンダーそのものが残ってるか、ってことか?」
「現物じゃなくてもいいです」
透真は仕様書へ視線を移した。
「交換履歴とか、撤去した時の記録とか。管理番号とか。鍵側だけ見ても、同じ系列ってところまでしか分からないなら」
一度言葉を止める。
自分でも、何をしているんだろうと思う。
十年前の鍵穴を探そうとしている。
普通に考えれば、十分面倒だ。
だから。
「シリンダー側の型番まで分かれば、もう少し潰せません?」
相良は答えず、資料を見た。
ページを何枚か戻す。
「旧棟の改修と解体時に、建具設備の撤去一覧を作ってる可能性はある」
「可能性?」
「施設側の保存状況次第だ。シリンダー交換記録が残ってれば、520が用途変更された時に鍵を変えたかどうかも追えるかもしれん」
「用途変更時?」
「ああ」
相良が顔を上げる。
「病室だった頃の鍵をそのまま使ってたのか。物品保管室になった時に交換したのか。それだけでも、この鍵との比較条件が変わる」
透真は古い鍵を見る。
同じメーカー。
同系列。
形式上、520で使われていたものと矛盾しない。
それだけでは何も決まらない。
なら。
次に見るべきものは一つだった。
「それ、確認してください」
「簡単に言うな」
「じゃあ僕が確認できるなら僕がやります」
相良が透真を見る。
少しだけ長い沈黙。
「……お前」
「何ですか」
「いや」
「気になるんですけど」
「別に」
「今日それ流行ってるんですか」
「知らん」
相良はファイルを閉じた。
「施設管理に当たる。旧棟閉鎖時の設備台帳、シリンダー交換履歴、撤去記録。残ってれば出してもらう」
「お願いします」
「ただし」
「はい」
「何も残ってない可能性もある」
「それならそれで」
透真は鍵を透明袋ごと持ち上げた。
「違うなら違うで潰せますから」
「違うかどうかすら分からん可能性もあるぞ」
「それでも、確認しないよりは早いです」
「何に対して早いんだ」
透真は少し考えた。
「面倒が終わるまで?」
「疑問形にするな」
アリスが笑った。
相良は呆れたように息を吐き、資料をまとめ始める。
透真はもう一度だけ、パソコンの画面を見た。
十年前の廊下。
白い女性。
その胸元を走る、細い銀色。
少し離れた十五歳の自分。
そして520。
写真が撮られた人間たちは、誰一人カメラを見ていない。
そもそも、撮影者も彼らを撮ろうとしていなかった。
残したかったのは廊下の状態だけだった。
工事を始める前の、ただの記録。
だから。
白い女性がそこにいたことも。
十五歳の透真がそこにいたことも。
520の扉が僅かに開いていたことも。
十年前には、誰にとっても写真の主題ではなかった。
証拠ですらなかった。
誰も重要だと思わなかったものだけが。
十年後。
同じ一枚の中で繋がり始めている。
透真の視線が移る。
白い女性。
520。
扉。
銀色の鎖。
机の上の古い鍵。
最後に。
扉の暗い隙間。
十五歳の自分は言った。
白い人は。
部屋を見ていた。
閉じた扉を見ていたのではない。
少なくとも。
あの写真が撮られた瞬間。
520は、完全には閉じていなかった。
なら次に確かめるべきなのは。
誰が怪しいかでも。
白い女性が何者なのかでもない。
もっと単純なことだった。
机の上で、古い鍵が蛍光灯の光を鈍く返す。
透真はそれを透明袋ごとジャケットの内側へ戻した。
「相良さん」
「まだ何かあるのか」
「520のシリンダー」
「ああ」
「当時の型番まで出たら、先に連絡ください」
「白峰さんにもか?」
透真は一瞬だけアリスを見る。
アリスもこちらを見ていた。
「僕にでいいです」
「分かった」
「時間決まったら、僕から連絡します」
アリスが当然のように頷いた。
「はい」
それで話は終わった。
帰り支度を始める。
誰も大きな答えを得たわけではない。
白い女性の名前は分からない。
銀色の鎖の先に何があったのかも分からない。
古い鍵が520を開けた証拠もない。
十五歳の透真が室内へ入った証拠もない。
ただ一つ。
閉ざされていたはずの520は。
あの写真が残した一瞬だけは。
閉じていなかった。
そして。
鍵が違うなら。
そこで一つ、終わる。
もし違わなかったなら。
次に確かめるべきなのは、鍵ではない。
それを受け入れる側。
十年前。
520号室の扉に取り付けられていた、
鍵穴だった。
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今回のエピソードをイメージした映像も順次公開予定です。
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