表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南洲一族の縄墨  作者: 西季幽司
「縄墨」の章
PR
37/41

最後の対決②

 その頃、宮川は祓川と共に南洲家を目指していた。

「いよいよ石川と最後の対決ですね~」と宮川が気炎を上げると、「気負うな! やつが犯人だという証拠はまだ何もない。全ては状況証拠に過ぎない」と祓川は至って冷静だ。

 南洲家ではいつも通り石川が半笑いを浮かべながら、「おや、刑事さん。またですか? 精が出ますね~」と二人を出迎えた。

 何時もの応接間に通された。

「お茶でも煎れて来ましょう」という石川を「結構です。そこにお座りください」と祓川が制した。そして、「石川さん。ああ、玄宗さん。あなた南洲則天さんと不倫関係にあったそうですね。違いますか?」といきなり斬り込んだ。

 石川は「えっ――⁉」と驚くと、「はは。僕と則天さんがですか? レストランで会ったことを、まだ疑っているのですか? あれは、たまたまです。前にも言いましたよね? 久しぶりに会って、お茶を飲んで、世間話をして別れました。それだけです。親戚なのですから、会って話をしても不思議ではないでしょう?」と答えた。

 それに構わず、祓川が続ける。「則天さんとの不倫が、この事件のきっかけだったのでしょう。あなたがた二人は、則天さんの夫、守弘氏が邪魔になった。そこで、彼を始末しようと考えた。大型台風がもたらした集中豪雨により、別荘の裏庭が崩れ落ちて危険な状態にあることを知った則天さんは、守弘氏を誘い出し、別荘のベランダから突き落として殺害しようと試みた。石川さん、あなたも相談に乗っていたのでしょうね。だが、危険を察知した守弘氏により、寸でのところで計画は失敗し、逆に則天さんがベランダから転落死してしまった。返り討ちに遭った訳です」

「馬鹿らしい」と石川は一笑に付した。

「石川さん、玄宗さん。あなたは困った。あなたの真の目的は、則天さんなどではなく、則天さんが南洲家の当主として所有している石川山だったからです。則天さんが亡くなれば、石川山は当然、遺産として守弘さんが相続することになる。そうなると、あなたの手の及ばないところに行ってしまう」

「馬鹿らしい」と石川が再び口にする。

 声に出すのが、やっとのようだ。日頃、口数の多い石川が妙に無口だ。祓川が何処まで知っているのか、気になっているのだろう。

「招知大学の鷲尾教授、あなたの恩師ですよね? 鷲尾教授をお訪ねして、話を聞きました。あなた、教授のもとに調べてもらいたいと鉱石を持ち込んだそうですね? 私は詳しくありませんが、インジウムって言うんですか? レアメタルのひとつだそうで。鉱石にそれが含まれていないか、確認してもらいたいと、あなたから頼まれたと教授は証言しています。

 鉱石を調べると、確かにインジウムが見つかった。石川山にはインジウム銅鉱が大量にありそうだということで、鷲尾さんのゼミと合同で調査を始めているそうですね。

 そう言えば、あなた、南洲家の遺産なんて何も要らない。だが、石川山だけは、南洲家発祥の地なので、南洲家の当主として、所有しておきたい――と言っていましたね。あなたは、石川山にインジウム銅鉱があることに気がついた。そこで、石川山を我が物にする為に計画を練った。石川山の所有者であった則天さんを色仕掛けでたぶらかし、守弘さんと別れさせ、自分と結婚させる。その上で則天さんを始末すれば、石川山はあなたのものになる。最初はそういう計画だったのではありませんか?」

「馬鹿らしい」石川がまた繰り返す。顔色が真っ青だ。

「石川山を我が物にする為に、守弘さんを始末しなければならなくなった。そこで、あなたは一族の人間に、遺産目当てに守弘さんが則天さんを事故に見せかけて殺害した――という話を信じ込ませ、南洲一族の縄墨を持ち出して、守弘さん殺害計画への協力を強制した。南洲一族の縄墨なんて、今の時代、過去の遺物のようなものです。ですが、あなた方一族の人間にとっては、非常に重い足枷みたいなもののようですね。全く、信じられない一族です。一族の人間は復讐を誓い、あなたへの協力を申し出た。そして、計画を練り上げた。

 恐らく、最も熱心だったのが南洲隆也氏でしょう。一族の長老として、そして、次期、南洲家の当主として、守弘氏は排除しなければならない――隆也氏はそう考えていた」

 祓川の言葉に、石川は「ふふ」と笑った。

「則天さんの四十九日に、南洲家で法事が行われました。法事が終わり、歓談していたあなた方は、くつろいでいた守弘氏に襲い掛かった。皆で押さえ込み、ロープで首を絞め上げ、殺してしまった」祓川はここで言葉を切ると、石川の表情を伺った。だが、石川は能面のように無表情だった。

「守弘氏の遺体は一晩、南洲家で過ごしたのでしょう。翌日、南洲隆也氏は守弘さんの車を運転して吉祥寺のアパートに向かい、あなたは守弘さんの遺体を車に乗せて、会社へと運んだ。途中、守弘さんのアパートで隆也氏を拾ったのでしょう。

 二人で会社に到着すると、遺体を社長室に運び込んだ。会社への入場は、守弘さんの社員証を使ったのですね。

 さて、ここから篠村さんの出番です。篠村さんは斎藤淳史という人物を確保してあった。斎藤は守弘さんと一緒に会社を興した共同経営者だったそうですね。プログラムの天才で、会社のネットワークに簡単に侵入することができた。防犯カメラの映像を書き換えることなど、朝飯前だった。

 篠村さんは、日曜日の夜に守弘さんの遺体を運び込む様子が撮影された映像を消し去り、あたかも守弘さんが前日の土曜日の夜に会社にやってきたように、斎藤に防犯システムの映像やデータを書き換えてくれと頼んだ。そして、日曜日の夜に呼び出されてやってきた遠藤の映像を土曜日の夜に移動してもらった。遠藤に罪をなすりつける為です」

「ふふん」と石川が鼻を鳴らす。

「遠藤の身柄を確保しておいたのは、あなたでしたね? ヤクザ仲間に大怪我を負わせて逃げて来た遠藤を匿っていた。あなたにとって、飛んで火にいる夏の虫だった訳です。何故、遠藤に守弘さんを殺害させなかったのですか? 和美さんが言っていました。遠藤は則天さんの犬だったと。遠藤に、則天さんは守弘さんに殺されたのだと吹き込めば、彼は守弘さんを殺しに行ったでしょう。遠藤を実行犯として使えば良かった。何故です?」祓川の問いに、石川は答えない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ