表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南洲一族の縄墨  作者: 西季幽司
「奸計」の章
PR
24/41

誰が鍵を開けたのか?①

 宮川は先輩刑事の鈴木に頼み込んで、遠藤からの取り調べの時間を割いてもらった。どの道、遠藤は黙秘を続けている。鈴木に祓川の捜査内容を話すと、「流石は祓川さん。我々では考えつかないような捜査をしているな」と感心した。

 取調室で遠藤は腕組みし、両足を大きく広げて、椅子に浅く腰かけていた。態度がデカイ。取調室に入って来た刑事が若い宮川だと分かると、一層、反り返った。

 宮川が「これを聞いてください」と祓川から送られてきたボイス・メッセージの再生を始めると、その声を一声聞いただけで、雷に打たれたように椅子から飛び上がって姿勢を正した。


――おい、遠藤。俺だ。浅田だ。今まで、散々、お前の面倒を見てやったのに、恩を仇で返しやがって、この野郎。きっちり落とし前をつけてもらうつもりで、お前を探していた。だがな、もう良い。金森のオジキから、「俺の顔に免じて、今回だけは遠藤のこと、許してやってくれ」と話があった。どうやって金森のオジキに話をつけたのか知らないが、オジキの顔を潰す訳には行かない。今回だけは手打ちにしてやる。

 オジキに言われた。「兄貴分なら、やつの生い立ちのこと、ちゃんと知っていなきゃダメだぞ」ってな。確かに、ちと無神経だったかもしれない。だがな、その報いは十分にうけた。今でも頭が痛えんだよ。だから謝らないぞ。

 いいから戻ってこい。エンコを詰めろ――とまでは言わないが、少々、痛い思いはしてもらうがな。でなきゃあ、俺の気が収まらん。ふふ。

 昔通り、面倒を見てやる。だから、早く出て来い。警察の厄介になるのは、今じゃない。何時かは俺が決めてやる。

 ショウのやつも心配していたぞ。あいつ、泣きながら、「遠藤の兄貴がすいませんでした」って、俺に謝ってきた。良い弟分をもったな。

 じゃあな、遠藤、待ってるぞ。


 ボイス・メッセージの再生が終わると、遠藤は姿勢を正したまま、「刑事さん、悪いがもう一度、最初から聞かせてくれないか」と丁寧に頼んだ。再び、ボイス・メッセージを聞き終わると、「一体、誰が金森のオジキに口を効いてくれたんだ?」と首を傾げた。

「青梅署に祓川さんという刑事がいます。昔、金森さんの息子さんが事件に巻き込まれた時に、無実の罪を晴らしてあげたそうです。金森さん、そのことに恩に感じていました。だから、祓川さんの頼みで、浅田さんに口を効いてくれたのです」

「祓川・・・さん? 何故、その祓川さんが俺の為に金森のオジキに話をしてくれたのだ?」

「祓川さんは、あなたが無実だと考えています。警察はけっして冤罪を出してはならないというのが祓川さんの考えです。だから、あなたの為に金森さんと話をしたのだと思います」

「そ、そうか・・・」と遠藤は暫くの間、押し黙ったが、突然、「刑事さん。祓川さんの言う通り、俺は無実なんだ。俺が会社に行った時、守弘はもう死んでいた。何でも話すから、何でも聞いてくれ」と真剣な表情で言い出した。

 やった! ついに、遠藤から証言を引き出すことができると、宮川は思っただろう。だが、次の瞬間、「宮川~よくやった。後は任せろ。青梅署に祓川さんの応援に行く時間だぞ。早く行け!」と先輩刑事たちが、どかどかと取調室に押し寄せてきた。

 マジックミラー越しに、取り調べの様子を伺っていたのだ。

 宮川は先輩刑事たちに背中を押されるようにして、取調室から追い出された。「悪いな」と鈴木が小さく手を上げた。

 代わりに宮川が隣の部屋に移り、遠藤の取り調べの様子を伺った。やはりベテラン刑事たちの取り調べは的を射ていて要領が良い。残念だが、宮川が取り調べていたら、こんなにスムーズに話を聞き出すことは出来なかっただろう。

 ひと通り、遠藤の取り調べの様子を伺うと、報告の為に、青梅署に向かった。

 遠藤はシロだった。祓川の言った通りだった。やはり、石川健文が怪しいのかもしれない。早く祓川さんのもとに戻らなければと宮川は青梅署に急いだ。

 本ボシは祓川が追う石川健文かもしれない。捜査の本線は宮川たちが握っているのだ。


 いらいらとした様子で、祓川は待っていた。

 青梅署の刑事部で顔を合わすなり、「遅いぞ!」と怒鳴られてしまった。

「すいません。遠藤の取り調べの様子を見ていたものですから――」祓川の席の前で直立不動になって宮川が答える。

 祓川は椅子に腰かけたまま、「やつは自白したか? 証言の内容を教えてくれ」と尋ねた。

「はい」と宮川は祓川から送ってもらったボイス・メッセージによって、遠藤が事件当夜の状況について供述を初めていることを説明した。

「自分は南洲社長を殺していない――遠藤はそう供述しています」

 遠藤が無実を主張していると聞いた時、祓川は「それ見たことか!」と自分の推理が当たったことに喜ぶ訳でもなく、「そうか」と短く呟いただけだった。

 遠藤の無実が証明されたことを喜んでいるように見えた。どうやら本当に冤罪が嫌いなようだ。

 宮川が順を追って、遠藤の証言内容を説明する。「浅田との諍いが起こった後、遠藤は知り合いの家に匿ってもらっていたと証言しています。ヤクザ仲間を頼ることができなかったので、遠い親戚を頼ったということです。個人名は伏せていますが、石川のことではないかと思いました」

「お前の感想など、必要ない」と祓川は言下に切り捨てた。

「すいません。その親戚の家に潜伏している時、南洲守弘から連絡があったそうです。南洲則天の事故について、話したいことがあるので、会社に来てほしいと言われ、会いに行ったそうです」

「やつはどうやって会社に入ったんだ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ