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28-2 いや、神なんて興味ねえんやが ※ステータスあり

 完全に陽が沈み、代わりに月に似た衛星が空に浮かんだ。こういうところも地球とそっくりだ。


 言語だってそうだ。ここでは日本語が通じる。と言うよりか、むしろ日本語しか通じない。


 エルフの長老に聞いたところ、こちらの世界では200年ほど前にヨビ語という日本語と酷似した言語が公用語として広まったらしい。


 この話の裏付けとして日本語で書かれた数々の書物をエルフの村で見つけた。ずっと昔の書物らしいが最近の外来語まで載っていて気持ち悪かった。


 物語を通して地球の歴史を教える書物もあった。地球の未来かと疑ったが、天体を見るとそうじゃないのはすぐわかる。星座が違う。北極星も南極星ない。なのに書物には北斗七星があって気持ち悪かった。


 これらを広めたのはもちろん先輩使者だ。目的は知らないが、おかげでこちらの世界の住人と意思疎通が楽にできる。



 発光器を点灯し、俺の居場所をアリルレに知らせつつ、俺自身は高感度な視力でアリルレの背中を追いかけた。

 全身を光らせてセンサーを広げる方が移動しやすいが、目立ちすぎるからやらない。


 月明かりも届かないほど、高い木々に覆われた森にアリルレが入っていく。しばらく追いかけるとようやくアリルレが足を止めた。


「ハァ…ハァ…ケー様……見つけました。ブドウです」

「お、どれどれ」


 夜間のため発光器から多めに光を放ってブドウの色合いを確かめる。


 一歩先からは地面を覆い隠すほど黒紫色の絨毯が敷かれていた。これら全てがブドウらしい。


 この辺り一帯の樹木全てに寄生したブドウのツルが巻きついており、木の枝から実のない芯が沢山垂れ下がっていた。1株で大量の実をつけるようだ。生産性はかなり高い。


 未だに熟していないブドウの実を付けた枝もあるが、地面に落ちている実の数に比べたら僅かな量でしかない。


 アリルレは何も言わず、せっせとブドウを拾って袋に入れ始めた。こんなに無口だとなんだか無視されているような気持ちにもなる。


 だが、めげない。俺の目的はブドウなんだ。イチャイチャしに来たわけじゃない。


「どれどれ」


 ブドウの粒の大きさは巨峰と同じくらい。枝になっている実をちぎって食べてみる。


 天然物にしては糖度が高く、果肉がずっしりしていて果汁が多かった。日本で市販される巨峰と比べると渋みが若干あるものの、皮が薄くて皮ごと食べられる。種は一粒につき一つで吐き出しやすい。


「うんめぇー……種持って帰って栽培できるか調べてもらお」

「こちらもどうぞ」


 乾燥した干しブドウを一粒渡してきた。うーん、ちょっと汚れてるな。

 光で照らしてみると皮のシワの間に細かい土が入ってるのがよくわかる。

 フーフーと息で汚れを吹き飛ばそうとしたが、勢い余ってブドウが遥か彼方へ飛んでいってしまった。


「あら、意外と潔癖ですのね」

「はじめの一粒は一番美味いのを食べたいんや」


 そうですか、と言いながらアリルレは干しブドウを躊躇もせずに口に含んだ。


 土がついてても平気なんやな。こいつすごいわ。


 アリルレは頬をモゴモゴさせるが飲み込む様子はなく、干しぶどうを口から出して地面に唾を吐いた。

 そしてアリルレは唾液で光る干しぶどうを指で挟み、俺の口に近づけてきた。


「きたなっ」


 思わずのけぞってしまった。正直、他人が手をつけた物を食うのは抵抗がある。病気にならないとわかっていてもだ。

 だからせっかくだけど干しぶどうを諦めようと思ったが、ショックを受けたアリルレの顔を見て気が変わった。


 パクりと一口で干しぶどうを味わう。口の中に入れてしまえば、唾液同士が混ざってアリルレの唾液などわからなくなる。


 感じるのは弾力のある果肉と甘さを増したブドウの味。渋みはなく、ほどよい酸味があり、噛むたびにブドウの香りが広がって唾液が出てくる。


「これ、疲れが吹き飛ぶくらい美味いぜ。もう一個くれ」


 二つ目も唾液で濡れていたけど、もう気にならない。三つ四つと手が止まらない。


 自然乾燥というのに商品化できるレベルで美味しい。栽培して人工乾燥でやればもっと美味しくなるだろう。ぜひみんなにも味わってもらいたい。


「あー……すまんすまん。夢中で食べとったわ。顎痛くなっとらんか?」

「はぁ…はぁ……はい…///」


「疲れとるやんけ。ほら、治してやるけん」


 その両頬に触れて治してやったが、なんだかアリルレの体温が熱っぽい。口からバイ菌が入ったのかもしれない。


「ほら、解熱剤と水や。しっかりうがいしてから飲め。帰りはおぶってやるから、薬飲んで寝ろ」

「え、あ、ありがとうございます」


 一応、回復させておいたが免疫系の働きまでは戻せない。体温は熱いままだったんで解熱剤と胃薬を与えてから寝かせた。


 拾い集めた干しぶどうの袋を亜空間にしまい。空を飛んで砦に帰る。


 その時に見えてしまった。


 トロール砦に接近する光の集まりが。



「夜襲か。まずいな」



 ざっと明かりを数えただけでも、こちら陣営の数倍ある。全ての敵兵が城エリア級とは思いたくないが、最悪を想定して砦を防衛した方がよさそうだ。


 飛行速度を上げて砦を通り越し、火山エリア方面も見ておく。

 火山エリア方面に敵影なし。安心した。どうやら森エリア方面からの攻撃さえ乗り切れば良さそうだ。


「敵襲や! 総員戦闘準備!

 エルフは城壁へ!

 トロールは城壁から離れて待機しろ!

 小人は引き続き自活兵器の製作!

 博霊隊は集合!」


「ふわぁ〜あ……ケー様? どうかされましたか?」


「敵襲や。エルフの指揮を取ってくれ。味方の援軍が来るまでは無茶をさせるな」


「はい! お任せください!」


 背中から降ろすと急いで城壁へ向かうアリルレ。その後ろ姿が見えなくなるまで立ち止まっていると、入れ替わるように博霊隊の三人が到着した。


「もう敵が攻めてきたんですか?!」


「おう。砦が落されたことまで知られていたらしい。ここに入りきらないほどの兵力がこっちへ向かってきとる。これはもう砦の奪還ではなく破壊しにきたとしか思えん」


「じゃあすぐに出発しないと! 三人とも準備はできています!」


 籠城戦を決めた時点で援軍が必要なのはわかっていたため、事前に連合軍宛ての書状をアリルレに用意してもらっていた。これを届けるのが三人の任務だ。

 育成を完全に放棄することも伝えた。生存優先で三人を逃がす。


 書状には、博麗隊の存在は明記させたが、俺の参戦は伏せている。アリルレの功績が俺ありきのものとは思われたくないからだ。だからある程度、力を抑えて砦を防衛する。負けはせずとも被害は出るだろう。


 当然、援軍が到着する前に俺は姿を隠す。


「おめぇらだけやと信用されんだろうし、オリビアを連れて行け。それと念のために持たせたいものがあるからちょっと待っててな」


 グッと全身に力をいれて踏ん張る。この力を使うと心の奥底がドス黒い感情に侵されて気持ち悪くなる。


 でも生徒のためなら仕方ない。



「〖超・神パワー〗!! うぅ…ふぅん!!!」



 すぽんっ……! ころころ……


    すぽんっ……! ころころ……


       すぽんっ……! ころころ……



 尻尾から卵が三つ産まれた。人間の赤ん坊より一回り大きな卵を三人の前にひとつずつ並べて置く。



「さ、選んでくれ」

「「「えぇ…………」」」


「あんまり迷ってる暇は無いぜ」


 三人はじゃんけんで順番を決め、負けた奴から卵を選んでいった。三人はどこか不満そうだが、卵が割れないように両手でやさしく抱えている。


「これじゃあ邪魔だよ」

「愛情を注いでやるとすぐに孵(かえ)るはずだぜ」


 そう言ったとたんバリバリ、とさっそく殻が割れる音がした。最初はハナマルくんの卵だ。


「あ、出てきますよ。わあ……」


 中から出てきたのは8本の触手と四肢を持つ四足獣型の怪物。まるで猫のような俺の分身だ。


『オギャース! オギャース! オギャッス!』


 続いてユーキちゃん、サキさんの卵も孵化して俺の分身が誕生した。


 分身とはいえ見た目がそれぞれ違う。

 ユーキちゃんのは、大触手が翼に変形したコウモリ型。

 サキさんのは、尻尾が脚と繋がったヘビ型。


 どいつもこいつも気色悪い見た目をしてやがる。


「かわいいですね! あ、みんなツノが違いますよ!」

「暗くて良く見えないけど模様も少し違うんじゃないかい?」

「うーん……」


「こいつらは俺と同程度の能力を持っとる。力を悪用しないように、しっかり面倒を見て優しい子に育てるんやぞ」


「え、もらえるんですか?」

「おう。名前をつけてやってくれよな」


「へー。名前ね。どうしようかね。ツノが三本だから…」

『ケーゾウ!』

「うわっ! コイツしゃべるんかい!」


「サキさんのはケーゾウやな。かわいがってやってくれ」


 その後、二人も髪型の角の数で名前を決めていく。

 ハナマルくんのが『ケーイチ』

 ユーキちゃんのが『ケージ』

 サキさんのは同じ『ケーゾウ』


 『ケーイチ』『ケージ』『ケーゾウ』の三匹は三人に貰われていった。バイバイ、俺の分身たち。元気でね。



────────────────>


【LV.-】『ケーイチ』『ケージ』『ケーゾウ』

【種族】ケーのクローン

【重さ】     5

【戦闘力】MAX:5×10^51

【タフネス】   不滅

【魔力】『極複製神の魔法金属』により無限


【スペック】

『極複製神の魔法金属』『極娯楽神の魔法金属』

『極複製神の魔石』『極娯楽神の魔石』

『極娯楽神の植毛』


〈スキル〉

〖神パワー〗

〖猫の爪〗〖三毒〗

〖黒紫のオーラ〗〖スーパー黄色人〗

〖強い糸〗〖電撃〗

〖墓守〗〖明鏡止水〗


────────────────>



 一応、俺の分身はモンスター扱いなんでステータスに名前をつけておかなければならない。


 その時に見つけちゃったんだが、新しいスキルを獲得してる。なんだこの〖明鏡止水〗って。


 神パワーを使って鑑定してみると詳細がなかった。どうやら初めて湧いたスキルらしい。


 まぁ、なんとなく予想はつく。


 なぜか繋がるWi-Fiとか、そばに居るだけで傷を癒すとか、セーフゾーンになったりとか。


 三人が俺をオブジェクト扱いしてたときに生えたスキルなのだろう。便利そうだ。三人の役に立ってくれるといいが。

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