28-3 いや、神なんて興味ねえんやが ※ステータスあり
隣にアリルレを侍り、城壁の張り出しヤグラから博麗隊とオリビアを見送る。
念のためオリビアにも透明化の指輪を渡したが、三人は透明化しているのにオリビアだけ姿を隠していない。
そのことについて隣のアリルレに聞いてみると、どうやらオリビアには透明化を見破る視力がないため、博霊隊との連携を妨げないよう緊急時にのみ指輪の力を使うことにしたらしい。
「無事、本陣にたどり着くといいですね」
「ほんまやな。失敗したら砦も終わりだぜ」
アリルレの手が震えていた。その震えの理由が武者震いではないのは心を読まなくてもわかる。
将来の不安、身内の心配、自身のストレス。唯一の理解者が離れていくのは寂しいもんな。
「そういやオリビアについて聞いとらんかったな。どういう仲や?」
「そうですね。オリビアとは私に物心がつく前からずっと一緒でした。
彼女は私の護衛であり、侍女であり、教師であり、本物の兄弟よりも大事な姉でした。このままオリビアがいなくなってしまったらと思うと怖くて……」
頭を覗いたからアリルレの歴史を知っている。でも、こういうことは本人の口から言わせたほうがいい。その人の気持ちまでは歴史から読み取れない。
「ほんじゃあ、オリビアは清々しとるかもしれんな。世話のかかる妹から解放されて」
「もう。いじわるですわね」
ギュっと腕を絡めて密着してきた。胸を押しつけてくるし、肩に頬を乗せられた。
なんやこいつ、もう恋人面しとるやん。
実は俺って恋愛強者?
急速にアリルレと打ち解けてきた気がするんですけど。口調も柔らかくなってるし。この見た目で好かれるってやばないか。
今後、超大国作りの要となるアリルレと親密な関係になれたらいいとは思うけど、恋愛関係は困る。
夜這いされた時から好意は感じているけど、完全に信用できるかはわからない。俺を利用しようとしてるのかもしれん。
俺はもう同じ失敗は繰り返したくない。回りくどくても着実にアリルレの地位向上に貢献して、恋心などは当てにせず、確実に好感度を上げていきたい。
その第一歩としてアリルレを此度の合戦の立役者にする。エルフ達の支持を得るために伝説級の戦果を作らなきゃならない。
つまり俺がやることはこれまでと変わんないってことだ。
俺を殺す方法を探しながら、この辺を仕切ってる先輩使者を探して根絶やしにする。
まがいなりにも奴らは神として信仰されている。現地人に信仰される神を殺せば箔がつくってもんよ。
そしてアリルレは俺を手伝った英雄として讃えられるってわけ。
奴らの信仰を横取りしていくぜ。
俺の存在は極力伏せるつもりだが、アリルレが先輩使者を殺したことにはできない。
すぐにボロが出るだろうし、もし信じられても神殺しとして崇めさせるのはあまりにも酷だ。
神々との直接対決は俺が勝手にやったことと正直に伝えてもらう。そして、神の配下たちをアリルレ率いる寄せ集めの捕虜たちが倒したという話にすれば、上手くまとまるはず。
張り出しヤグラでそんなことを妄想しながら、戦いの前の静かな余暇を二人で過ごす。
そんな二人きりの熱い雰囲気を壊すように数匹の小人が走ってきた。
「投石機が完成しました!」
「でかした。さすがは器用で有名な小人やな。
ほんじゃあ、できた投石機はトロールに運ばせる。アリルレは俺について来い。急いで来てもらったところ悪いけども、お前ら小人にはもうひとっ走りしてもらって、他の小人を城壁に集めてほしい」
「「はい!」」
気持ちのいい返事を聞いて城壁を降りる。目的地は小人たちの作業場。トロール住宅跡地へ向かう。
作業場に到着。そこには廃材で作ったとは思えないほど巨大な投石機が存在感を放っていた。
ちなみに無事な家屋はほとんど投石機の材料にされた。勝っても負けても今日のトロールの寝床はない。
改めて近くで投石機を見る。砦で追加の小人を補充できたとはいえ、即席で作ったとは思えないほど完璧な出来栄え。
投石機には、荷車から取り外した車輪が付いていて移動しやすい構造だ。道具が限られた状況下で細かい気配りまでされている。あまりに出来が良すぎていて、小人という種族に脅威を感じたくらいだ。
投石機本体と投射する石や修理用の廃材をトロールに運ばせる。城壁の前で一度投石機を分解して部品を上へ運んだのち、再度小人に組み立ててもらった。
全部で10台ある投石機を短い間隔で配置。門の正面を強くした。砦を包囲されても出入り口は守っておきたい。
援軍を迎えやすい形にしつつ、退路の確保もする。正面に投石機を集中させておけば、敵が兵を展開させる前にまとめて戦力を削れるかもしれない。まさかトロール砦が投石機を使ってくるとは相手側も想定していないだろうしな。
投石機は1台につき3匹で動かしてもらうつもりだ。3種族から1匹ずつ選んで配置する。
装填のトロール、射撃のエルフ、修理の小人のチームで回していく。
弾数が限られるため練習はできない。動作確認は済ませたが射程距離などの不安は残る。
その辺は〖射手王〗のスキルを持つアリルレに全て任せて俺は弾の振り分けを行う。そろそろ敵が目視できる距離に着くだろうから、急いで準備したい。
「よーし、お前らはここに並べー。次の奴ら、ついてこーい」
「ヴォー……」
砦の外を警備していた亡者どもを連れてきて投石機の弾にする。
死者への冒涜? すまんな。これは元々決めていたことなんや。
ただの投石じゃ、効果は単発。亡者なら効果が持続する。
スキル〖墓守〗のデメリットとして、亡者たちがスキル範囲外に出ると、支配下から外れて自由意志を持つ。そして亡者は欲望のまま動く。
これこそ俺が欲しかったデメリットだ。しかし今は本当に迷惑なデメリットだから、敵のド真ん中に放り込んで暴れてもらう。
ついに目視できる距離まで敵がやって来た。砦を覆い尽くして余るほど圧倒的な軍勢の光が見える。
「いやー。これ連合軍に勝ち目ねぇだろ。なんでチマチマ攻めたんだよ」
敵の総戦力は軽く見積もって連合軍本陣にいた兵の約5倍。灯りを持つモンスターが全て人型であれば連合軍に勝ち目は無い。森エリアに展開した全ての勢力を集めたと考えられる。
当然、トロール砦の大きさではあれほどの人数を収容できない。
「砦を落として、そのまま火山エリアに逃げ帰るつもりか」
そういうつもりでもなければ、空っぽの砦に大軍率いて攻め込むなんて無謀な真似はできないよな。
敵軍は砦から離れた位置で止まった。とてもじゃないが、投石機の射程には絶対に入らない位置だ。
敵軍から別れてひときわ光を放つ塊が先行してきた。
先駆けにしては少数だ。降伏を勧告しに来たのか?
光の塊が止まった。
「聞け! 我が名は豊穣神・ロノイナンナ!
我の夫を殺しおって! 絶対にゆるさん!
天誅である!
セレクトマジック!
『土魔王』×『火魔王』×『光魔王』=
落ちて滅びよ 【メテオフォール】」
ド ド ド !
ド ド ド ド !
空に光り輝く巨大隕石がいきなり現れた。
落下に伴う凄まじい熱量が夜空を燃やしている。
あれが落ちれば砦どころか大陸ごと焼き尽くされるだろう。跡形もなく。
破壊的だが、完成されていて、どこか美しい。
重力に抗うようにゆっくり落ちて、大気を引き裂き、大地を泣かす。
終末に相応しい見た目をした破壊の顕現を呆然として眺めていると、隕石の落下音を掻き消すように森の方角から歓声が上がった。
「やることが過剰なんよな。あいつら全員見物客か。殉教者どもめ」
あの程度の魔法では俺どころか使者さえも殺せないというのに無茶苦茶やりやがって。
どいつもこいつも。弱者のことなんか見向きもしねぇな。
『ぱんぱかぱーん! ハッピーバースデー!
33年間童貞おめでとう!』
「一言多いけどサンキュー神様」
『気にならんのか。去年も一昨年もその前もお前の誕生日を祝わなかったのだぞ。理由を聞け』
「……なんで今年は祝ってくれたんや」
『スペックを見てみろ。称号が増えているだろう。『聖33』だ。これは33年間童貞を貫いた者に送られる称号でな。
吾が君が作った特別なものなのだ。
だから祝いに来た。特にケーはラッキーだぞ。私から直々に祝福されるのだからな』
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【LV.2】ケー・スマイル・ダーク@KSmileDM33
【種族】極複製神製ダークマター魔法存在・極娯楽神の使者
【重さ】 50
【戦闘力】MAX:5×10^51
【タフネス】 不滅
【魔力】『極複製神の魔法金属』により無限
【スペック】
『極複製神の魔法金属』『極娯楽神の魔法金属』
『極複製神の魔石』『極娯楽神の魔石』
『極複製神の神鏡』『極娯楽神の植毛』
『極娯楽神のお気に入り』『愚者の中の愚者』
『聖33』new!
〈スキル〉
〖神パワー〗〖超・神パワー〗
〖猫の爪〗〖三毒〗
〖黒紫のオーラ〗〖スーパー黄色人〗
〖強い糸〗〖電撃〗
〖墓守〗〖明鏡止水〗
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『聖33』
[33歳まで童貞を貫いた者に送られる称号。
内なる悪への絶対的抵抗を得る。
神の試練に挑む資格を得る。]
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どうやらこの『聖33』は内なる悪への絶対的抵抗を得るようだ。
それと試練に挑む資格が得られるらしい。意味はわからない。
『神になるための試練をやるかどうか、今すぐ決めるのだ。決断を引き延ばせば称号は消える。それはお前のためにならない』
「いや、神なんて興味ねえんやが。なんか大変そうやし」
『確かに大変だ。おぞましい量の宿題を出される。だが内なる悪への絶対的抵抗は今後必要だ。『聖33』の称号を得たことで、魂に混ざった『しわよせ』が安定している。私の好奇心を満たすためにも称号を消さないでくれ』
「『しわよせ』が安定してるってことはあのスペックも役に立つようになるんか? 『愚者の中の愚者』ってやつ」
『ああ、〖超・神パワー〗をたくさん使えば使うほど私の好奇心が満たされる』
「じゃあやるぜ。神の試練を[受ける]」
『よし、登録完了だ。先方が立て込んでいるから詳細は追って伝える。ちなみに童貞を失うと同時に称号も失うから気をつけろ』
「神様の冗談はいつも面白いぜ」
『信じるか信じないかはお前次第だ』
「マジかよ」
巨大隕石はもうすぐそこまで迫っている。悠長に会話する暇なんてなかったのに話し込んでしまった。これも全部俺が童貞なせいだ。
「やっぱり黒紫光線でチマチマ削るプランは無理そうやな。せっかくやし試すか」
『愚者の中の愚者』────発動。




