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15-3 じゃあなみんな、また会う日まで ※ステータスあり

 可愛い嫁ができた。出会って1日で即結婚!

 サンキュー陸将。サンキューアジ・ダハーカ。


 正式な結婚じゃなくても嫁は嫁だよね。世の中にはアニメキャラと結婚する人だっているんだ。つまり気持ちが一番大事なんだよね。


「ステータスカード見てみ。俺からのプレゼントや」

「え?」


────────>


【LV.52】

【種族】ヒト

【重さ】     55

【戦闘力】MAX:5055+(0)

【タフネス】   4055+(0)

【魔力】     11+(1000000)

【スペック】

 『ケーの婚約指輪(呪い)』

〈スキル〉

〖猫の爪〗〖スーパー黄色人〗〖電撃〗


────────>


「くひひひっ……あはははっ!

 ありがとう。大事にするであります」


「へへっ、使い方教えるぜ」


 ぶっちゃけ〖猫の爪〗と〖電撃〗に関してはどう教えたらいいかよくわからん。他のスキルが指輪生成時に弾かれて入らなかったから〖スーパー黄色人〗のおまけで入れたものだ。


 頭の中で言葉をこねくり回していると、説明する前からロミ少尉は3つのスキルを使いこなしていた。天才か。


 〖猫の爪〗は触手でやっていた伸び縮みと硬度調整を人間の爪でもできるようにした魔法だった。


 〖電撃〗は指から電気を放出するやつだ。ロミ少尉は全身に流して高速移動する練習をやってる。漫画みたいにはいかないと思うぜ。


 俺は戦闘時にしか使わない〖スーパー黄色人〗なんだけど。とにかく体を大事にしてほしいという願いを込めてこれを入れた。

 ロミ少尉はちょくちょくステータスカードを皮膚から半分だけ剥がして数字を確認しながら〖スーパー黄色人〗を調整していた。今は肌を少し煌めかせたくらいで常時維持している。



 そして別れの時がきた。大使館職員にとってはまだ就寝時間だ。だが戦う自衛隊員にとって早朝は既に移動時間。ロミ少尉はもう移動準備を済ませていた。


 はい。俺はまだ童貞です。でも嫁が隣にいるから勝ちです。過去の自分に勝ちました。


「いってきますのチューであります」


 両手を広げる迷彩服姿の可愛いお嫁さん。彼女はこれから迎えにきた仲間と共に船へと戻る。


 俺も一緒に戻りたいけど、大使館のみんながお寝坊さんだからさあ!


 別れを惜しむようなチューを交わす。

 ちょうどその時、光センサーが部屋の前を通るヤヨイさんを捉えた。


 嫌な予感がビンビンするぜ。


 行ってきますのチューを終え、ロミ少尉がサッと部屋から出て行った。


 ロミ少尉が部屋から出たあと、ドアの影からそっと顔を出して様子を見る。このあと絶対に何か一悶着ある。俺にはわかる。


 陽気にスキップするロミ少尉がヤヨイさんの背後から肩を叩いた。


 後ろに振り向くヤヨイさんの首の動きに合わせ、死角を移動しながらロミ少尉が回り込む。完全に挑発している。


「ヤ・ヨ・イ・どの〜! おはようでありまーす!」


 めっちゃ元気や。俺に見せたことのないイタズラな笑顔をヤヨイさんに向けてる。ちょっと嫉妬するわ。


「おはよー……ゆうべはお楽しみでしたかー?」

「お楽しみぃ? くふふっ。それ以上であります! 背中を押してくれてありがとうございまーす! くひひっ……これを見よ!」


 俺があげた婚約指輪を見せつけている。ちょっと嬉しい。指輪を自慢する嫁に萌える。


 その直後、ヤヨイさんが口を押さえながらこっちにきた。


「あははははははっ! ざまぁみろであります! あははははっ!」


 笑いながらスキップをして曲がり角に消えていくロミ少尉。

 入れ替わるようにヤヨイさんが俺の部屋にきた。

 コンコン。開いたままのドアがノックされる。


「すぅ……ケーちゃん。トイレ借りるわよ」

「うす。どうぞ」


 昨日からトイレばっかやな。飲み過ぎやっちゅーねん。


 トイレの中で嘔吐する音が収まらない。ドアの隙間から触手をこっそり潜り込ませ、二日酔いを〖神パワー〗で治してやった。それでも吐き続けるから、もしかしたら食中毒かもしれない。


 もう一度〖神パワー〗を使って心と体を癒してやると、ようやくトイレの水を流した。


「おはよー、ケーちゃん。ゆうべはお楽しみでしたねー」


 そのくだり、俺ともやるんかい。


「うす。得たものが多い1日だったぜ。一番大きいものは嫁やな」

「ケーちゃん、トイレ借りるわよ」


 こりゃ、食道がイタイイタイになるぞ。〖神パワー〗は万能ってわけじゃないな。

 えずく声がしたあと、トイレの水が流れてヤヨイさんが帰ってきた。今回は早かったな。


「ヤヨイさんはステータスカードって知っとるか?」

「ステータスカード?」


 この様子だとステータスカードについては自衛隊秘匿の情報らしいな。警察もダンジョンに潜っているのにステータスカードの情報が回っていないのは何故だろう。世界にいる冒険者の誰かしらが日本にステータスカードの情報を届けていてもおかしくないのに。なにか異様なズレを感じる。


 空洞対策課のヤヨイさんまで知らないとは不味い事態だ。ダンジョンの情報を国内で隠しすぎると今に痛い目を見るぞ。たとえ他国への情報漏洩を極度に嫌っているとしても、命に関わる情報は共有すべきだ。


「どこかヤヨイさんの体にポリポリできそうなところないっすか?」

「ポリポリ? うーん……しこりのような部分はないわね」

「これ見てみ、ロミ少尉のステータスカードだぜ。ダンジョンで30レベルになると皮膚が剥がれてこうなるらしい」



──────>


【LV.52】

【種族】 ヒト

【重さ】     55

【戦闘力】MAX:5055

【タフネス】   4055

【魔力】     11


──────>



「嫁じゃなかったのかしらー。こんな簡単に見せていいの? 体重まで載ってるみたいよ」


「ステータスって割と重要な情報やないか。正確な体力測定って考えたらさ。秘密にするのは逆に危ないやろ」

「へー、一皮むけたねー。どれどれ」


 ここで剥いたのはちんちんの皮だけやがな。

 ちなみに渡したのはロミ少尉が指輪を付ける前のステータスカード。警察と自衛隊の関係がわからない以上、最低限の情報しか提供するつもりはない。俺は嫁がいる方を助けると決めたんや。


「魔力って……私たちにもあるんだー。ねえケーちゃん。ケーちゃんの力で私のステータスカードを出すことはできない?」


「やり方がわからん。でもヤヨイさんのステータスは見えるぜ。欲しいなら書き起こそうか」

「お願いするわ」


──────>


【LV.263】

【種族】ヒト

【重さ】     60

【戦闘力】MAX:10260

【タフネス】   9240

【魔力】     203


〈スキル〉

〖格闘LV.7〗〖並列思考LV.5〗


──────>


 やっぱり30レベル超えとるやんけ。なんでヤヨイさんにはステータスカードを出せないんだよ。

 つーか、レベル263て。高すぎやろ。


 ヤヨイさんはロミ少尉のステータスカードと自身のステータスのメモを見比べている。


「なんか気づいたっすか?」

「これ、法則性がありそうよ。もう一段レベルが離れた人がいたらわかりそうなのだけれど。頼める?」


「いいぜ」


 腕をポリポリ掻いて俺のステータスカードを出す。ヤヨイさんに対してちんちんの皮は渡せない。


 ヤヨイさんは食らいつくようにカードを読み、頭を抱えた。


──────────>


【LV.4】

【種族】極複製神製ダークマター魔法存在・極娯楽神の使者

【重さ】     10

【戦闘力】MAX:5×10^50

【タフネス】   不滅

【魔力】『極複製神の魔法金属』により無限


【スペック】

『極複製神の魔法金属』『極複製神の魔石』

『極娯楽神の魔石』『極複製神の神鏡』

『極娯楽神の植毛』『極娯楽神のお気に入り』

〈スキル〉

〖神パワー〗〖猫の爪〗

〖三毒〗〖黒紫のオーラ〗

〖スーパー黄色人〗〖強い糸〗

〖電撃〗


──────────>



「余計にわからなくなったわ。これ貰ってもいい?」

「嫌です」


「なんでー?」

「嫌だからっす。ロミ少尉のカードも返して貰うぜ。持って帰っていいのはメモだけや」


「はあ……部屋に帰るわ。日本に帰る準備しておいて」

「ほんじゃあまた後で」


 妄想だけど自衛隊と警察の間で主導権を巡るパワーゲームが起きているのかもしれない。世界中が緊急事態という時に国内で権力闘争をするのは一見愚かに思えるけども、むしろ世界中が混乱している今のうちに権力を集中させたほうがいいとも考えられる。


 日本の権力を統一するならば今後、大政奉還を求める必要が出てくるかもしれない。政権を天皇にお返しして国家元首になってもらわなければいけないかもしれない。


 そう思う根拠はアジ・ダハーカ討伐戦における日本の弱い立ち位置、加えて故郷に投下された核ミサイルの対応遅れだ。

 イランのアジ・ダハーカ襲来のように、あらゆる対応が迫られる緊急事態が訪れると首相程度では務まらない。少なくとも棄権者が多すぎる現在の選挙で選ばれた議員たちから選出される首相には任せられない。


 急な事態を乗り切るには強いリーダーが必要になる。権力さえ持てば絶大な権威を持つ天皇陛下の号令で国全体の結束力は強まる。


 考え直してみたら今回の核ミサイルの件、予想外の黒幕がいそうな気がする。やり方があまりにも雑で突拍子もない。間違えてミサイル落とす場所間違えましたなんて理屈が通るかよ。ドジってテヘペロってレベルじゃねえよ。



 古代から続く人間同士の権力闘争。認知革命に始まり、農業革命、科学革命、情報革命と流れてきた。

 昨今、新たな革命が始まろうとしている。いや、もう始まっている。それがダンジョン革命だ。


 ダンジョンは権力者たちの新しいおもちゃだ。プレイヤーは世界全域に渡り、地上に資源を持たない国にまで天下統一の力を得る可能性が秘められている。

 核ミサイルはこのゲームの1アイテムに過ぎなかったのかもしれない。


 圧倒的な力を持つアジ・ダハーカの映像が一般公開されたら世界中の人間が嫌でもダンジョンへの魅力を感じるだろう。さらにそれを倒す俺みたいな人間がいたら尚更、ダンジョンで鍛えて世界征服の夢を持っても不思議じゃない。


 現在、有利な勢力は独裁国。計画的にダンジョンの攻略を主導し、得られた利益をまとめて管理できる全体主義国家が有利だ。政権を盲信し現状維持を好む国民が多く、有権者の半数以上が棄権者で民主主義が機能してない我が国も候補にあがる。それが功をなしてダンジョン国有化が進んだわけだから皮肉なもんだ。国民投票で天皇の項目を変える憲法改正も案外スルッと通りそうな気がする。


 ダンジョンの一般開放もひとつの手段ではある。俺のように隠れた才能を持つ者を発掘するには適した方法だ。ただし、強大な力を得た市民が国家の為に尽くしてくれるかは別の問題だ。

 すでに他国では普段の生活をしながら利己的な理由でダンジョンへ行く者が増えている。それと同時にダンジョンで得た超常の力を犯罪行為に使う者も現れているらしい。


 ダンジョンの出入りを行政が管理したところで、それは治安の維持に繋がらないってわけだ。

 我が国のようにダンジョンそのものを国有化したほうが平和なのが現状だ。それに加え、民間の利用を禁止すれば公務員が効率的に攻略を進められる。治安維持に人員を割かないで済む。

 地政学的に理由は様々だろうけどダンジョンの一般開放をしていない国は多い。フランス、中国、ロシア、シンガポールに代表される中央集権国家はほとんどダンジョンを一般開放していない。そのおかげで攻略は進みやすく治安は良いが、一般開放している国に比べてダンジョン産業の恩恵が少ない。


 アジ・ダハーカを生み出したイランのようにどんな国だろうと油断はできない。人の流れならばダンジョンの国有化で制御できる。

 しかしアジ・ダハーカという圧倒的な脅威が現代兵器の脆弱さを思い知らせた。同時に白兵戦ができる戦士の重要性も覚えただろう。

 そして戦士の頭数が全く足りないことを今回の参加国は知ったはずだ。おそらくこれからは公務員による独占攻略と治安維持を後回しにし、徴兵できる戦士を増やす目的でダンジョンを一般開放する国が増えていく。


 いつの時代も革命には犠牲が出る。ダンジョン革命にも犠牲者が出た。やっぱりそのほとんどは人の欲望によるものだ。

 もちろんモンスターやアジ・ダハーカのような被害もある。しかし数字にして比べれば人が人を殺す数のほうが遥かに多い。俺の故郷を焼いたのは他でもない人間だ。


 ただ革命を憎んでいるわけじゃない。革命が世の中を元気にすることはあるだろう。腐敗した国家には革命による自浄作用が必要だろう。革命の参加者にもきっと国を豊かにしたい気持ちがあるだろう。


 だけど革命の犠牲になった人間たちはどこへ怒りをぶつけたらいいんだ。


「大使館の皆さん! 今日までの間、クソお世話になりました!

 じゃあなみんな、また会う日まで!」


「「「キャビア! キャビア!」」」

「キャビア! キャビア!」


 俺は売られた喧嘩を買うぜ。

 絶対に黒幕を見つけて国ごと滅ぼしてやる。もしそれがイランでもな。


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