15-2 じゃあなみんな、また会う日まで ※ステータスあり
客室は元通りだけど割れたツボやガラスの破片が危ない。ムードが白けるのはどうにかしたいと思ったその時、チュートリアルがきた。
チュートリアルその1。まずは発光で部屋に散らばった危険物を判別。
チュートリアルその2。集合地点の座標と範囲を設定。
チュートリアルその3。危険物に設定した物質をワープ。
集合地点に一瞬でゴミが集まった。
「〖黒紫のオーラ〗。よし、お掃除終了。じゃ、シャワー浴びようや」
「そうでありますね。お先にシャワーどうぞ」
「いやいやいや。いやいやいや。テロロ少尉も一緒に入ろうぜ」
「アカウント名で呼ぶのやめて欲しいであります」
確か、手代ロミだっけ。ヤヨイさんとは自己紹介してたけど俺とはまだよな。
よし、ここは一発仕掛けにいくか。あわよくば話を上手く運べるかもしれん。俺の名前って割と珍しいし。
「名前聞いてないやん」
「目の前で自己紹介したじゃ、あー。壊れてましたな。自分は三等陸尉手代ロミであります」
うん、知ってる。
「ケー・スマイル・ダークっす。ロミ少尉、これめっちゃ良い名前やない?」
「中高生には人気になると思うであります。あとアニオタ」
そうそう。俺もそう思う。いい流れが作れてるんじゃない。名前を気に入ってくれてありがとう。
「せやろ。羨ましいやろ。ロミ・スマイル・ダークに改名しないすか?」
「さらっとプロポーズしましたな。考えるのでとりあえずシャワー浴びてきて、どうぞ」
なかなかガードが硬い人やな。こんな人なら家族も安心だよ……うん。
だが、攻める。そうすれば上手くいくんだろ陸将さん。
「一緒に入って洗いっこしようや」
「ケーちゃん殿のこと何も知らないのに簡単に肌を見せたくないであります」
「俺はみんなに肌を見せ続けてるぜ。これ以上に何が知りたいんや」
「座りましょう。話はそれからであります」
ソファってめっちゃ座りにくいよね。尻尾があるからほんと座りにくい。
だから俺は空気椅子。尻尾のおかげでソファより快適。
それから一晩かけてお互いのことを語り合った。驚いたのはロミ少尉が俺の母校の卒業生だったこと。しかも同じ地区に住んでた。世間は広いようで狭いね、まさか同じ町出身の田舎者が海外で出会うなんて。
それからはもう話が弾む弾む。おそらく焼失したであろう公園のことを話したり、もう二度と開催されない花火大会について涙を流したり、地域あるあるを補完しあったりした。
思い出話に花を咲かせて、話題は現在へと進む。
ロミ少尉は防衛大学校卒業後、幹部候補生学校に入校し、入隊後すぐにダンジョンで鍛えられたそうだ。
最初の頃は楽に探索できていたらしいが、3ヶ月ほど前にレベルアップの情報が伝わってきてからの訓練は地獄だったらしい。
その地獄の証明であるロミ少尉のステータスカードを見せてくれるという。
「ステータスカード!!??」
「ケーちゃん殿は持ってないでありますか? ダンジョンで30レベルになると皮膚の一部に痒みのあるしこりができて、剥がすとカードになるであります。皮膚を剥がすまで痒みが続くので気付くと思われますが」
なん……だと……
ロミ少尉よりは絶対強い自信あるんだが。絶対レベル高いはずなのにそんなん無かったんだが。
つーか、ロミ少尉より婆ちゃんの方が強えだろ。見た目でわかる。
なんかおかしくねぇか。体に異変があったら気付くよな。
「そんなん婆ちゃんも持ってなかったぜ」
「婆ちゃん? 一般人でありますか?」
「そうだぜ」
「ケーちゃん殿は警察官でありますよね?」
「違うぜ」
「これはいったいどういう……一般人はダンジョン立ち入り禁止でありますが」
そういえば倉庫ダンジョンのことは関係者以外に話したらダメなんだっけ。
「あ……これ内緒にして欲しいっす。頼むぜ」
「うーん。自分とケーちゃん殿の仲ですし内緒にはしますが……
モヤっとするでありますな。敷地内にダンジョンが?」
「そうだぜ。俺はそこで1年も迷子になって今の姿になったんよ」
「はあ? 1年? あれ?」
「ついさっき神様の姿を見たやろ。あれが本当の俺の姿や。細マッチョでイケメンやったやろ」
きっとあれが本当の俺なはずや。だってイケメン家族の中で俺だけ猿顔ってありえんやろ。赤ちゃんの時に歪んでんのよ絶対。
つーか、神様のこと普通に喋れてるな。もう秘密にしなくていいのか。
「え!? それはお気の毒でしたな。
人間の頃は引く手数多でしょうに。その頃から積極的に女の子を誘ってたでありますか?」
「うんにゃ、人に対して積極的になったのはダンジョン出てからで、俺は今も童貞だぜ。人間関係は大学でリセットしたんよ。そっからずっとニートやし出会いなんてないわな」
「無茶苦茶すぎ。一気にケーちゃん殿のことが分からなくなったであります」
「そんなことよりステータスカードよ。どんな感じかね」
「ちょっと待って。今出すであります」
胸をカリカリ掻きだして皮膚を剥がしたロミ少尉。皮膚の下から剥き出しの筋肉が見えたけど、すぐに治った。
剥がれた皮膚は外気に触れてからしばらく経つと硬いカードに変わった。摩訶不思議な現象だ。ワクワクすっぞ!
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【LV.52】
【種族】 ヒト
【重さ】 55
【戦闘力】MAX:5055
【タフネス】 4055
【魔力】 11
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「なるほどー。数値だけ出されてもわからんな。体重はわかるけど」
多分だけど体重55キロかな。単位がわからん。
「研究者の見解によれば戦闘力は短時間あたりの仕事量に相当するとも言われています。魔力に至っては一切謎でありますが」
「俺のも見たいなあ」
そう思った時、チュートリアルが始まった。
どうやら〖神パワー〗でステータスを出せるようだ。他者のステータスも見ることができる。
その証拠に、ステータスカードに記載されたものと同じロミ少尉のステータスが浮かんで見えた。
「出せるっぽいわ。一緒にみたい?」
「みたいであります!」
お、興味深々やん。これはビジネスの香りがするね。
「じゃあ、チューしよ」
「……自分のステータスはタダで見せたのに」
「俺のは有料なんよな。なんでかわかるか?」
俺のステータスは間違いなく貴重な情報のはずや。だって俺の姿をみてみろよ。バケモンやんけ。
「……キスだけで、よろしいのでありますね」
ほう、取引に応じる人か。だったら釣り上げさせてもらうぜ。
「ビジネスにエッチは求めない。ビジネスはベロチューまでを信条にしている」
「ディ、ディープキスでありますか……結構ハードル上がりましたな」
「ステータスカードを持ってっていいと言ったらどうよ?」
「やるであります!」
気合いの掛け声と共に、向こうからグイッと近づいてきて柔らかい唇がふれた。
大人になって初めてのベロチュー(人間との)。チェリーとは違う感じのベロチューだ。
ロミ少尉のほうから積極的にむしゃぶりついてくる。口に掃除機を当てられたみたいに舌が身動き取れず、俺からは何も出来ずにされるがままだった。
本当は経験豊富なんじゃないかと妄想を膨らませるほど興奮した。
「はぁ、はぁ、ケーちゃん殿の舌、美味しいであります。こんな美味しい物、生まれて初めてであります」
「毎日美味しい物食べてるからやで」
急に俺の体を抱きしめてきて、発達した大胸筋に顔を沈めてきた。いきなり攻めてこられてビビる。
とにかくやられっぱなしは童貞丸出しなんで、軽く抱いて背中をポンポンしてあげた。
「ケーちゃん殿。このまま続きをしたら何を貰えるんでしょうか」
デレッデレに堕ちてるじゃねえか。さっきまでここにいた鋼鉄の女はどこへ行っちゃったんだよ。
「続きしてくれるなら俺の戸籍をやるぜ」
「ステータスカードを見せて欲しいであります」
鋼鉄の女が帰ってきた。切り替えが早すぎる。
ああ、離れていっちゃった。もうステータスカードを見る体勢になっとる。
賢い日本男子は貞操を守る。ムラムラが収まらないけど悔いはない。
だとしても正解はなんだったのかな。戸籍じゃなくて全てをやるって言ったら良かったのかな。ジョークを言うべきじゃなかったか。
ちくしょう! やっぱり悔いが残る!
股間をポリポリ掻いてステータスカードを出した。悔しいからちんちんの皮を持って帰ってくれ。
「げ! 別のところから出したステータスカードが欲しいであります」
「ロミ少尉は胸以外からステータスカードを出せるんか?」
「出せませんな……」
俺? もちろんどっからでも出せる。みんなはそうじゃないみたいやな。だけどこれを利用しない手はないでしょ。
「自分にできないことを他人に求めるのはどうかと思うぜ」
「……非常識でした。申し訳ないであります」
「別に責めるつもりはないんや。どうせ俺のステータスカードを手紙と一緒に陸将へ渡すんやろ。そん時に言ってやれよ。
それは『ちんちんから出たステータスカードです』ってさ」
「くふっ……ふふっ」
ああ、この意地悪な笑顔がもっとみたい。やっぱり悔いが残る。
「へへっ、それじゃ見ますか。俺のステータス」
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【LV.4】
【種族】極複製神製ダークマター魔法存在・極娯楽神の使者
【重さ】 10
【戦闘力】MAX:5×10^50
【タフネス】 不滅
【魔力】『極複製神の魔法金属』により無限
【スペック】
『極複製神の魔法金属』『極複製神の魔石』
『極娯楽神の魔石』『極複製神の神鏡』
『極娯楽神の植毛』『極娯楽神のお気に入り』
〈スキル〉
〖神パワー〗〖猫の爪〗
〖三毒〗〖黒紫のオーラ〗
〖スーパー黄色人〗〖強い糸〗
〖電撃〗
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「数字が少ねえな」
「こんなに文字が多いステータスは初めて見るであります」
ふむふむ。上から見ていくか。レベルは……
「レベルひっく! レベル4て!」
「種族が変わったからでは?」
種族は、極複製神製ダークマター魔法存在・極娯楽神の使者。
使者ってことは神様は『極娯楽神』?
もう一つの『極複製神』ってのは?
なんとなく予想がつく。多分、『極複製神』は園田蓮華だな。ダークマターって言葉も以前聞いたし、倉庫のダンジョンの時に変化した俺の種族か。
ロミ少尉のようにヒトであることを期待した俺が馬鹿だったぜ。
極娯楽神の使者がおそらく新しく増えた種族なんだろうな。どちらかというと職業っぽいけど。
やはりお互いゲーム脳だと話が早いな。ロミ少尉が言うように、職業を変えたり種族が進化したりするとレベルがリセットされるゲームを俺もやったことがある。
「あー、なるほど、そう考えるとこの低さも納得。アジ・ダハーカ倒したんやし、もっとレベルあるはずやもんな。
ほんじゃあ、このレベルは先輩使者を倒したことで上がったってことか。経験値少なくて草」
「レベルアップに必要な経験値が多いとも考えられるであります」
「あー。そうか、すまんな先輩。早とちりで笑ってもうた」
スペックもなんとなく予想がつく。魔石も、魔法金属も、神境も、植毛も記憶にある出来事と合致する。
つーか、『神境』が消えてなくない?
え、あの恋文、俺の体内に残ってんの?
考えても仕方ないか、残ってたとしてもバラバラやろ。
スキルも俺が使ってきた技ばかりやな。やっぱり〖電撃〗だけはよくわからんけど。
話題が切れた。ロミ少尉はお土産ができて満足したのか静かになった。もうそろそろ朝日が昇りそうだし眠いのかもしれない。
「正直、ケーちゃん殿を誤解しておりました。普段の発言があまりにも下品だから不純な人と勘違いしておりました。いい意味で自分が見てきた悪党とは格が違うであります。
例えるなら、ケーちゃん殿は知識を得て歳を取ったピーターパンなのでありますな」
「せやでティンカー・ベル」
「そこはヒロインのウェンディの方が女の子は喜ぶと思うであります」
「だってパンとウェンディは結ばれないやん。一緒に遊んでくれるティンカー・ベルの方が男の子は大好きなんや」
「……自分もティンカー・ベルのほうが好きであります」
あれ? いい雰囲気になっとる?
触手をロミ少尉の体に巻きつけていく。ロミ少尉は逃げるどころか体に乗ってきた。
互いに引き寄せ合うようにして顔を近づける。唇に磁石でもあるんじゃないかと思うほど自然なキスだった。
「改名は嫌であります。それでも良ければ戸籍を変えるのもやぶさかではないです」
「俺がそっちに加わるってのはどうよ。改名もしようか」
「くふふっ……神様から貰ったばかりなのにそれは不敬ですよ。でも、その気持ちがすごく嬉しいであります」
俺の内側から何かが湧いてくる。これはチュートリアルだ。サンキュー神様。
『笑わせてくれたお礼だ』
〖魔法の指輪〗の作り方。魔法やスキルを付与できる。ただし魔力は装備者に依存する。
〖魔力の指輪〗の作り方。作成時、指輪に込めた分の魔力を装備者が使用できる。指輪の魔力は自然回復する。
どちらも装備者を選ばない危険なアイテムのレシピだ。装備すれば誰でも指輪の力を使える。
〖呪いの指輪〗の作り方。装備者が死ぬ、あるいは浄化しない限り外れない。指を斬り落としても外れず、指輪は装備者から離れない。
国宝級鍛冶屋が魔法の指輪を作った場合は最大で10の魔法かスキルを込められるそうだ。おそらく神様の世界の話なのだろう。ファンタジーになってきたね!
俺はこれら3つの指輪のレシピをミックスする。そのかわり、付与できるスキルが3つになった。
国宝級鍛冶屋が作る魔法の指輪に比べれば、俺が作った指輪の汎用性は低い。だがそれでいい。
「どうか指輪を受け取ってください。これは呪いの指輪です。一度指に嵌めたら死ぬまで二度と外せない。たとえ指を斬り落としても。それでもいいならこの婚約指輪を受け取ってください」
離婚を許さない独占欲満載なプロポーズ。
一瞬、ロミ少尉は怯える表情を見せた。
『長年連れ添ったカップルでも結婚の話になればギクシャクするものだ。それなのに昨日の今日出会ったばかりの相手で、しかも怪物のプロポーズを受けるのは大変な覚悟が必要になる。だが、ここで時間をかけるようでは貴様の相手はつとまらない。伴侶になるかは時間では無くフィーリングなのだ。考える必要はない』
神様が俺の心を揺さぶってきたぜ。
「ふふふっ…くふふっ……あははははっ
一つ確認させて欲しいであります。ケーちゃん殿は自分を束縛しますか?」
「独占欲は強かれど、行動を縛り付けるつもりはないぜ。尉官としての立場を俺のために捨ててほしくないから。惚れた男の弱み、どうか夢の続きをサポートさせてください」
土下座。最終手段土下座。指輪より頭を下げて土下座。低く低く。
「くふふふっ…ふひひっ……
受けるであります。婚約指輪を受け取ります」
ここで気を緩めてはいけない。指輪を嵌め終わるまで土下座。
嵌めろ、嵌めろ、指輪の魔力に誘惑されるがいい。
指輪を薬指に近づける。あともうすこしロミ少尉が手を動かすだけで指輪は嵌る。
今、指輪が爪の先を通過した。よし!
光センサーが指輪を嵌める瞬間を確認した。これで一生、指輪が外せないぜ!
「ふふふっ……これからよろしくであります」
「よろしくっす!」
やった。恋人すっとばして結婚。日本人らしい結婚ができた。
日の出と共に結婚成立。結婚制は大嫌いだけど事実婚は大好きだ。紙切れに意味はない。二人の間で愛が続くことが大事だ。
憲法にもそういう解釈がある。
これが日本の夜明けぜよ。ここイランだけど。




