Sacred-2
「……やっぱり、戻った方がいいような気が」
アリサは走りながら、レチユに声を掛ける。
「何故……や、なんでそう思うのですか?」
それを聞いて、レチユはゆっくりと減速し、足を止める。それを見て、その娘のテルフィも立ち止まる。
「私、目に関する"異能力者"らしいんです。実際、色んなものが今も見えてます」
「……それで?」
「彼は多分、能力自体は強くありません」
アリサは思った事をそのまま伝えた。信じてもらえなくても、とにかく伝えておきたかった。
「……なぜ、そこまで分かるんですか?」
「私が『異能力者』と接触したのは、これで多分……二度目です。あ、いや、先生が異能力者だとしたらもっと多いんですけど、彼は隠していたようですし」
「それはいいんですよ」
異能力がある前提の、他人が聞いたら正気を疑うような会話に、以外にもテルフィが口を開いて、それを遮る。
「早く理由を言ってください」
「あ、ごめんなさい。ぼんやりと曖昧にですけど、私、見てるんですよ、ルド先生達の敵を」
「つまり、それで力量が分かったのですか?」
「えぇ、ルド先生は、彼女に……延いては彼らよりも少ない輝きでした」
「それは……」
「もし、もしですよ?もしも彼が複数人の彼らに襲われていて、死んでしまったりしたら……」
「俺達も危険な目にあう可能性があるのか?」
レチユは眉を顰める。
「それは無いと思いますよ。」
しかし、テルフィは落ち着いていた。彼が死ぬ事は無いと思っているのか、自分達が危険に晒されることはないと考えているのか、どちらかは分からないが、少なくとも何か考えがあるかのような口振りである。
「何がだ?」
「私達が危険な目にあう可能性です。もし、殺すならもうとっくに私たちを殺しているでしょう?そういう趣向があるなら分かりませんが」
確かに、最初からルドが狙いなのだとしたら、レチユやテルフィは彼が森に入った瞬間に殺した方が、効率が良かったはずだ。
ただ、相手がその考えに至っていなかっただけの可能性もあるので、安心はできないが。
「ですが、先生が危険なのだとしたら、看過できませんよ!お父さん、行きましょう!」
「お、おう?」
テルフィは急に逆方向へと走り始めた。
「テルフィ!おい!」
走り出したテルフィはレチユの静止も聞かず、一直線に走って行く。意外な事に足が早く、もう既に追いつける距離ではない。
「すみません、私が余計なことを……」
「今はそんなことどうでもいいですよ、俺も予想外でした!くそっ!仕方ない、戻りましょう!」
「はい!」
走る彼らは自分の息が切れているのも忘れて再度、もとの道を戻っていくのである。




