僧侶とパーティ2 *
ライオネルさんはボスゴブリンを倒しに行くと言う石川の言葉に耳を疑った。
「本気なの?」
「本気の本気よ! ボス倒さないとお金稼げないもん! あんた達もお金欲しいんでしょ? そんなボロ装備じゃダメよダメ! ボス倒してお金稼いで装備買いなさい! わたしはお金が欲しいわよ! 美味しいもの食べたいもん!」
「飯食いたいからボス倒すのかよ! そんな奴初めて聞いたぞ!」
「私も初めて聞いたな。ところでここのロレリアのボスゴブリンの討伐のランク知ってる?」
「昨日来たばっかりなのに、知る訳ないわよ!」
「なっ!」
頭を抱えるライオネルさんとフェムトさん。
フェムトさんはため息を大きく吐いてから石川に説明を始めた。
「ここのボスゴブリンは討伐ランクがCなの。Cランクの8人パーティーでやっと倒せるぐらいなの。でもね未だにこの街が奪還されてない事で察して欲しいの。物凄い繁殖力で地下道にゴブリンが溢れ返っていてボスまで近づけないのよ。危険度はAランク、いやSランクね!」
「そうそう、おまけにね、ボスゴブリンは侵入者を見つけると次々に成体のゴブリンを産み落としてさらにゴブリンを増やしてくるの。この前、Aランクの冒険者パーティーがボスを倒そうとしたんだけど、地下水道の入り口に近づいただけで津波のようにゴブリンの大群が押し寄せてきて半壊しながら逃げ帰ったそうよ」
「ふーん、入り口に来た冒険者を襲ってくるのね」
「そうそう、洞窟の中のゴブリンが一斉に襲って来るの」
「なら簡単ね! この私に任せなさい!」
石川は得意気な顔をする。
「ほ、本当にいけるの?」
「大丈夫! ボスを倒すのは私達がやるから任せて!」
*
翌日、下水道の入り口に集まるパーティーメンバー達。
下水道は幅四メトルほどのアーチ状で、ほとんどのメンバー達が想像する薄暗くて臭い地下下水道よりもかなり大きかった。
遠目で見ると中央に水が流れている以外はトンネルにしか見えない。
そのトンネルは無数のゴブリンでごった返していた。
密度的には市場の中央通りに溢れる人の波。
そんな感じである。
これだけの敵を相手にしたらタダでは済みそうもない。
これから起こる惨劇を予感して身震いしている少年も居た。
そんな怯えるメンバーを他所に石川が説明を始める。
「いい? やる事は昨日と一緒よ! とにかく避けて避けて避けまくって攻撃するの! 最初はゴブリンの大群が襲って来ると思うけど、それさえ乗り越えればあとは大丈夫! とにかく最初を頑張りなさい!」
『作戦になってねーじゃねーか』と思うパーティーメンバー達であったが誰一人として自信満々に言い放つ石川には逆らえなかった。
釣り役の剣士が恐る恐る下水道の入り口で歩いているゴブリンに遠くから矢を打ち込む。
矢は遠距離の為外れたが、侵入者に気が付いたゴブリンが雄たけびを上げながら襲って来る!
その雄たけびを聞いた洞窟の中に居たゴブリンも続く!
それはまるで津波の様だ!
どう見ても二百や三百を超える数のゴブリンだ!
「どひゃー! ゴブリンの大群が襲って来たんだけどどうすりゃいいんだよ!」
半泣きしながらキャンプに戻って来る剣士。
他のメンバー達も身構えるがキャンプに迄辿り着く数が少ない。
あれだけの数のゴブリンの津波だったのに辿り着いたのは十数匹。
明らかに数が少ない。
「ど、どうなってるんだ?」
見ると石川、香川、長野の三名がゴブリンの津波がキャンプに襲って来るまでに、すさまじい速度で移動しながら津波に纏わり着いて片付けていた。
「うお! 姉さん達すげー!」「あのゴブリンの大群を一瞬で片付けてるのかよ!」「あれでリーダーと同じCランク冒険者なのか? 信じられねぇ!」「姉さんは口だけ野郎じゃなかったな!」「姉さん達が居れば勝てる!」
テンションが上がって急に動きが良くなるメンバー達。
三十分程で下水道入り口のゴブリンは一掃されてキャンプをトンネルの入り口にまで進めることが出来た。
石川はライオネルに笑顔を見せる。
「峠は越えた様ね。あとは私達居なくても倒せるでしょ?」
「休憩でもするのか?」
「ボス倒してくる」
「ボスーーーっ!」
ライオネルさんの絶叫がトンネルの中に響いた。




