俺の嫁3
綺麗サッパリ忘れてたぜ!
元魔王城の有った瓦礫の山の上で俺の嫁になる権利を賭けて戦い続けてた人外元嫁(蝙蝠)と人外自称嫁(爬虫類)。
二股状態の嫁が二人して浮気現場に乗り込んで来やがったぜ!
俺もう終わり。
完全に詰んでるんじゃね?
人生的にって言うか、この異世界的に。
魔王様二人がタッグを組んで乗り込んで来たんだぜ?
ここで大暴れされたらどう考えてもヤバい!
魔王城が一瞬で吹き飛んだのを見たろ?
この国ヤバいね。
この国消えるね。
てか大陸が地図から消えるね!
俺のせいで国が一つ滅びるよ!
どうすんの俺?
ここは華麗なる話術で何とか穏便にお引取り願うしかない。
戦っても殆どのスキルレベルがLV1に巻き戻っている今の俺には魔王ツインズには腕力や魔力ではどうやっても勝ち目はない。
俺は彼女達の神経を逆撫でしない様に言葉を選びつつ話し始める事にした。
「いやー、ミドリアさんとエリザベスさん。わざわざこんな遠くまでご足労をお掛けして申し訳ございません。今日は何の御用でしょうか?」
俺は二人をソファーに座るように勧める。
「嫁になりに来たぞ」
「わたくしもお嫁さんになりに来ました」
「ほうほう、お嫁さんにと……えっ! お二人共ですか? 勝負はどうしました?」
「こいつとは相性が悪すぎていつまで経っても勝負が付きそうもないのでな。二人ともお前の嫁になる事にした。がるるる」
「拳を交えるうちに友情が芽生えたのです。我が君」
「ほうほう。それで二人ともお嫁さんに来てくれたと。そういう事なんですね」
「そうです」
「そうだぞ! と言う事で嫁になってやるから早速子作りを始めよう!」
いきなり服を脱ぎだすエリザベス。
すると意義を唱える者が居た。
石川だ!
「あ、あんたら、いきなり何言いだしてるのよ! 高山は私の彼氏なんですからね! 一緒に寝た事も有るんだから! 何いきなりやって来て、子作りするとか訳わからない事言いだしてるの! 頭悪いんじゃないの?」
「ちょい、石川! やめろ!」
「何言ってるのよ! 高山も言ってやりなさいよ!」
「こいつらじゃない、この方達は魔王様なんだぞ。どう考えてもお前の勝てる相手じゃない! お前なんて小指の先で突かれるだけでぶっ殺されるぞ!」
「魔王?」
魔王と聞いてキョトンとする石川。
俺が何言ってるのか理解出来ないらしい。
もし俺が石川だったら間違いなく理解出来ないだろう。
ドラゴンのエリザベスが目を細めて怪訝そうに石川を見る。
「なんだこの小動物は? 小動物の分際で彼氏がどうのこうのほざいた気がするんだが?」
ふんっ!と鼻息を鳴らす。
やべー!
石川殺されちゃうよ。
ここは俺の華麗で誠心誠意な謝罪で何とか取り繕わないと!
「何でもないですから! 気のせいですから! 小動物の戯言ですから! 気にしないでください」
「そうか、そうならいいんだが。子作りの前に汚らわしい血で床を赤く染めたくも無いしな。さ、子作り始めるぞ」
そう言うと全裸になったエリザベスはベッドの上に横になった。
それを見て慌てだすミドリア。
ミドリアも服を脱ぎ始める。
「な、なにしてるんですか? エリザベスさん! 最初に我が君に抱かれるのはわたくしって決めたじゃないですか!」
「知らんな。そんな約束した覚えはないが?」
「とぼける気ですね! さっきと話が違うじゃないですか! ならば、ここで決着を!」
「望むところだ!」
怪しげな赤い光を放つ目を大きく見開くミドリア。
黄色い目を細めて息を大きく吸う、エリザベス!
エリザベスはブレスを吐く気だ!
こんなとこでブレスを吐かれたら堪ったもんじゃない!
手間暇かけてせっかく修理した家が炭と化す!
俺は慌ててヤツの口を閉じた。
「や、やめろ! こんなとこで暴れたら絶縁だ! 離縁だ!」
「ぐるるる! 離縁だと! わ、わかった。や、やめるから!」
「火を吐くのは禁止だし、石川達人間を殺すのも無しだぞ」
「うぐぐぐぐ」
「ミドリアも暴れるなよ!」
「はい、我が君」
騒ぎを聞きつけたのか、奥の部屋からリリィさんと長野さんと香川ちゃんがやって来た。
「イシカワー! タカヤマとの初体験うまくいったか? って、なんだ? この裸の人たちは誰?」
「リリィさん……」
リリィの姿を見つけると突然目に大粒の涙を浮かべて泣き出す石川。
よしよしとリリィさんは泣きじゃくる石川の頭を胸に抱きながらなでている。
「タカヤマ! いったい何が起こってるんだ?」
「俺が魔王してた異世界からわざわざやって来た俺のお嫁さんと、新たに嫁になったこっちの世界の魔王さんです」
「なんか言ってる事が全く解らないんだけど詳しく説明してもらえる?」
「お、おう」
俺は絶対に他言無用と念を押し時間を掛けて今迄の経緯を説明する。
前回の召喚でミドリアの世界に俺が召喚されたとこから、俺が何度も再召喚をされて実は強い事と、赤召喚転移陣でエリザベスの住む魔王城に転移させられて起こった事迄を事細かに話した。
俺が勇者であると言う事がバレてしまうが、教会や王族と繋がりの有る仲間のこいつ等ならばらしても問題ないだろう。
それでどうやら石川もリリィさんもエリザベスも含めて納得してくれたようだ。
それを聞いたリリィさんは納得したと言った表情でうんうんと頷く。
「あー、やっぱタカヤマは強かったんだな。勇者どころか魔王もしてたんだな。そりゃ試合で私が勝てないぐらい強い訳だな。あははは! おまけに魔王様が嫁か。こりゃいいね。あははは!」
リリィさん、そこは笑うとこじゃないんですが。
それを聞いた石川がとんでもない事を言い出す。
「ねねー、高山! 魔王倒しちゃおうよ! 今すぐ倒しちゃいなさいよ! この子達は人間を苦しめてる悪い魔王なんでしょ? そうしたら私たち召喚勇者に課せられた願いを達成して日本に帰れるのよ!」
「ぬわっ! 小動物の分際でわらわを倒すだと! タ、タカヤマ! こいつ殺していいか?」
「ダメだ! 殺しちゃダメだ!」
「ぐるるる!」
「倒しちゃなさいよ! 高山なら魔王ぐらい余裕で倒せるんでしょ? 早く倒しちゃいなさいよ!」
「おい石川! 煽るなよ! お前黙っとけよ!」
俺は石川の口を必死で手で閉じる。
石川はもごもごと手の中で叫び続けた。
そして俺の手を振り払うとまた叫び始める。
「私達って悪い魔王を倒す為にこの世界に呼ばれたんでしょ? 倒せば日本に帰れるのよ! 目の前に部下も引き連れずに来てるんだから今が魔王を倒す絶好の機会よ! 絶好のチャンスよ! 今倒さなくていつ倒すのよ!」
「ぐるるる! こいつ殺していいか? 無性に腹が立って我慢できないんだけど! 殺していいよな!?」
「我が君、温厚が売りのわたくしもムカついて来ました」
「やめろよ! 二人とも! 落ち着け石川! そして喧嘩売るな!」
「だって、だって……こいつ人間を殺しまくってる悪物なんだよ!」
「わらわはわざわざ人間なぞを襲ったりしないぞ」
「えっ? 殺してないの?」
マジか?
魔王なのになんで?
俺が魔王やってた時は遠慮なしに殺しまくってたけど?
にわかには信じがたい。
俺はエリザベスに問いただす。
「お前は本当に人間を襲ってないのか? 一人も殺して無いのか?」
「殺したか殺さないかで正確に言えば殺してるが、魔界に攻めて来て魔族の村を襲う様な悪さをする人間を見せしめで殺しただけだ。それだけだぞ! 人間なんて殺しても食べるとこなんてないし、魔石も持ってないし。わざわざ殺す価値もない小動物だ」
「我が君が魔王だった頃はそれはそれは気持ちいいぐらいに人間を殺しまくってましたわよね。あの容赦ない冷徹な姿を見てわたくしは我が君に惚れたのです」
「あんた、いったい何してたのよ?」
石川に冷めた目で見られる俺。
「いや、俺の可愛い魔族の下僕達を襲って殺して魔石を奪う輩が居たから、国に乗りこんで悪の総元締めの王族を皆殺しにしただけで、お、俺悪い事なんて何にもしてないし!」
リリィさんも何か思い出したかのように語り始める。
「そう言えばこの世界でも結構昔に勇者に王族皆殺しされた事件が有ったけど、それってタカヤマが犯人なんじゃないの?」
「ちょっ! リリィさん、俺のどうでもいい過去をさらっと暴露するのやめてくれないです?」
「やっぱり、タカヤマが犯人か!」
「我が君! 惚れますわ!」
「高山、サイテーね!」
「お、俺悪くねーし! 平民から搾取しまくれるだけ搾取して、犯して終いに殺す様なクズな王族に鉄槌を下しただけだし!」
「我が君! 最高です! その傍若無人ぶりが堪りません! わたしもボロボロになるまで犯し尽くしてください!」
「ううう……」
「そう言えば高山って、学校でね、」
「ちょっ! 石川! それはやめろ~~~!!!」
俺の黒歴史の暴露大会は夜通し続いた。




